「日本語表記・音声の実験言語学的研究」



研究目的
日本語は,世界の諸言語のなかで特異なものとみなされてきた傾向がある。たとえば,漢字・平仮名・片仮名・ローマ字の4つの表記体系を有する言語は他に存在しない。また,音声については,ピッチパターンによる伝達機能に際立った特徴があるといわれている。

このような日本語を,実証的・実験的に究明することは,単に日本語の特異性に関する局所的研究にとどまらず,世界の諸言語の普遍性をとらえようとする研究活動全体の一層の発展に寄与するものである。言語の普遍性に関するこれまでの研究は,ややもすればアルファベット文化圏に限定された知見にのみ基づいて進められてきた感がある。しかし今や,漢字文化圏の言語の代表例として日本語を取り上げて,その特異な言語現象をも説明可能な普遍的モデルを構築することこそ,真の意味で言語全体の研究を深めることにつながるとの認識が,世界の研究者に急速に広まりつつある。

また,日本語を対象とする研究は,脳科学や計算機科学といった言語研究とは従来あまり関連のなかった分野においても,失語症や自動翻訳の研究を通じて重要な位置を占めつつある。このような背景をふまえて,本研究は,日本語の表記・音声・文表現といった3つの側面に焦点を絞って,言語学・国語学・心理学・情報科学の研究者が高度な学際的研究を推進するとともに,諸外国の有力な研究者とも活発な共同研究を行う。


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