日本国内外における「国際化」の進展の結果,日本社会および日本人も多文化・多言語状況に直面している。日本国内における在日外国人と日本人間のみならず,海外に進出する日本企業内部,多国籍企業などでの現地スタッフと日本人スタッフ間など,かつて経験したことのない規模での人間関係が生まれつつあり,言語文化的な伝達上の摩擦・葛藤も避けられない状況となっている。これまで世界にまれなほど均質的社会と言われてきた日本および日本人にとって,新たな多文化・多言語状況の中で経験する,文化的な摩擦・葛藤にどう対処するか,そのメカニズムを研究することは学術的にも有意義である。そのようなメカニズムを解明することは複数の異なる言語・文化が交錯する国際協力の場において,言語文化の障壁を越えて,国際的な共同作業を進める方法の発見に繋がるであろう。
多文化・多言語状況下において理論的に発生すると予想される,言語文化的摩擦・葛藤の量および質と,現実に発生する摩擦・葛藤の量および質との間には差が存在するはずである。その差は言語文化的背景の違いに関わらず,人間が相互に理解し合える普遍的な能力に起因するものであろう。
本研究はその様相を調査分析し,普遍的な能力,個別的な能力を解明しつつ,広く人間の相互接触の実態を究明することを目的とする。
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