2015年3月15日(日)、国立国語研究所・2F多目的室において第6回研究発表会を
開催しました。
13:00-14:00 志波彩子(国立国語研究所)
「日本語の間接疑問文の発達をめぐって―近代から現代へ」
高宮(2003,2004,2005)で明らかにされてきた日本語の間接疑問文の歴史について、現代日本語から時代をさかのぼることでその発達の様相を明らかにすることを試みた。本発表では、現代日本語のコーパスと近代語のコーパスから抽出された間接疑問文のタイプとその分布を示し、間接疑問文とこれに関連する他の構文(注釈的二文連置構文,選言構文,潜伏疑問構文等)について考察することで、その相互交渉の在り方(ネットワーク)について検討した。
14:10-15:10 矢島正浩(愛知教育大学)
「否定疑問文の用法から見た近世語」
日本語の直接疑問文の用法を歴史的に見た場合、近世は「対人性」をどう意識し、どう表現するかということに特徴が現れる。本発表ではその点について、(1)中古・中世と近世、(2)近世中期までと後期以降、(3)近世後期上方語と江戸語それぞれの疑問文の用い方を比較・観察することによって検討した。
15:10-15:30 休憩
15:30-16:30 金水敏(国立国語研究所/大阪大学)
「歴史から見た現代共通語の疑問標識分布」
現代日本共通語の「か」の分布をみると、「間接疑問文」対「直接疑問文」でもっとも強い対立があり、前者は「か」が必須だが後者はそうではないという状況が見える。さらに直接疑問文の中でも、疑問詞疑問文か肯否疑問文か、普通体か丁寧体か、動詞文・形容詞文かコピュラ文(名詞述語文・ノダ文)かによっても対立があるが、本発表ではこの分布が歴史的にどのように形成されたかという点についての考察がなされた。
16:40-17:40 西垣内泰介(神戸松蔭女子学院大学)
「「非飽和名詞」を含む構文の構造と派生」
本発表では、日本語の「指定文」および「カキ料理構文」と呼ばれている構文 について、「非飽和名詞句」を中核として、その構造と派生を示した。
本発表の分析では「非飽和名詞句」は2つの項をとり、外項(「カキ料理」)が 主要部名詞「本場」の意味範囲を限定(delimit)し、内項 (「広島」)がその意味内容を「過不足なく構成する」(exhaustively constitute) という関係を持つ。
[カキ料理(の)[広島(という)[本場]]]
「非飽和名詞句」の内項が焦点化されることで「指定文」が、その指定部を占める外項が主題化されることで「カキ料理構文」が派生される。焦点化された要素が変項を含む構成素の意味を「過不足なく指定する」という関係が「指定文」の根幹をなすものだが、これは疑問文とその答えの間に求められる関係に由来するものである。「非飽和名詞句」の内部での項の c統御関係が、対応する「指定文」に「連結性」によって反映され、「自分」の逆行束縛と見える現象などが説明された。
年度末という都合上、1日のみのスケジュールではありましたが、
今回も各発表ともに大変活発な議論を交わすことができました。
遠方よりご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。
(技術補佐員:小野舞子)