第3回研究発表会@国語研

2014年3月20日(木)に,国立国語研究所・セミナー室で
第3回研究発表会を開催しました。
 
長崎郁,「コリマ・ユカギール語における疑問文:疑問語疑問文を中心に」
コリマ・ユカギール語(北東シベリア)における疑問語疑問文は、(A) 主節、(B) 直接疑問文、(C) 間接疑問文、(D)指示詞との相関用法のような用法をもつ。本発表では、これらの用法を概観しながら、肯否疑問文との違い、節を名詞化できるか否か、(B)(C)(D)をとる主節述語の意味的特徴といった点について検討した。
 
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井上優,「中国語の付加疑問文について」
中国語の付加疑問文は,形式的には平叙文に情報の真偽を問う疑問表現(「是吗?(そうか)」「是不是?(そうか/そうでないか)」など)を付加するが,意味的には「~よね?」「~でしょう?」に近い確認表現となる。このことは次のように説明できる:通常の疑問文は,話し手の側で情報の妥当性がわからないとして聞き手に情報提供を求める文である。付加疑問文は,話し手が真であると考えている情報を提示して,聞き手の側で情報を確認するよう依頼あるいは指示する文である。
 

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岩田美穂,「疑問から例示形式へ」
日本語史において、疑問の助詞は直接疑問以外にもさまざまな用法を発達させている。その一つに例示用法がある。本発表では、ヤラとトカを取り上げ、疑問から例示用法が発達する過程について述べた。
 
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外池滋生,「疑問詞とカとモ」
「か」と「も」は(1)いわゆる疑問詞(未定詞)と現れて、存在数量詞(誰か)、全称数量子(誰も)として機能する場合、(2)選言記号(AかBか)と連言記号(AもBも)として機能する場合、そして(3)疑問詞を含む節の節末に現れて疑問(何処へいきますか、京都へいきますか)、譲歩(何処へ行っても、京都へ行っても)表す場合、(4)比較節に現れる場合(思ったよりか/も面白い)がある。(1)(2)については数量詞の機能から導かれることを、(3)(4)については加えて疑問/譲歩の素性が関与するWH移動であることを提案した。
 

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窪薗晴夫(ゲスト),
「鹿児島方言の疑問文タイプとイントネーション」
鹿児島方言の4つのタイプの疑問文(Wh疑問文、Yes/No疑問文、間接疑問文、レトリック疑問文)が示す音声パターンを音声学、音韻論の両 面から分析し、それらの異同を考察した。とりわけ、フォーカスの位置によって生じるプロソディー構造の変化および標準語イントネーションとの異同を報告した。
 
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今回も,前回同様,時間を常にオーバーするほど活発に議論が交わされました。
 
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ご参加いただいた皆様,ありがとうございました。

(研究員:志波彩子)