韓国における『第二の外国語』としての日本語の地位と展望

韓国外国語大学校 朴 容九


朴 容九

 ただいま,紹介させて頂いた韓国外大の朴と申します。まあ,一日の中でいま最も難しい時間だと思いますけど,彭先生の発表がとても面白くてみなさんの目を覚めさせて,私は気楽に発表に入ります。
 韓国では色んな外国語が使用されてますが,どこの国のように,もっとも多く使われているのはやはり英語です。その次が日本語で韓国人口の4,500万人の内,九95万人ぐらい,すなわち48人の中で,一人が日本語を使う。まさに,日本語大国と言えると思います。この中で韓国人がこれぐらい集まったら,1.5人ぐらいは日本語がしゃべられることになります。もちろん,学習者のレベルは様々です。でも,これは,どのようにものまねした方がいいか分からないんですけれども,全くへたくそなんですけど,「お元気ですか。」「はい,元気です。」まあ,『ラブレター』に出てくる言葉なんですけれども,これぐらいは韓国人だったら,特に若者だったらみんな知ってるはずです。まあ,『ラブレター』のおかげですね。『ラブレター』が上映された以降,若者の間ではこれが携帯電話の文字メッセージになったとか,みなが全部授業の時,先生たちに「お元気ですか。」と入れたら,「僕は元気です。」ということが出るんですけれども,それぐらい韓国では日本語が流行っています。しかし最近,このような情報に変化の兆しが見られる。という指摘があっちこっちで出てきます。おそらく韓国と中国の国交が正常化した1992年それ以来の話ではないかと思います。90年代に入ってから中国語の重要度は韓国において急上昇しています。今,韓国の親は一つの心配があるんですけれど,それは第2外国語として日本語と中国語の中でどっちを習わせるべきかについてです。自分の子供に対してということですけれども,そういう問題で悩んでいるところです。ですから,今日の講演ではこのような現状の中で,韓国に於ける日本語地位の実情,それがどうなっているかということについて報告させて頂くことになります。
 まず,今日のハンドアウトに入りまして,2番の統計からみた日本語の地位をご覧下さい。ここでは,統計資料を通じて日本語と中国語の学習者数の推移を見ることにします。まあ,さっき発表なさった先生方,色んな統計資料を提示したんですけど,韓国の場合も同じく日本の国際交流基金から98年度に詳しいデータが出ています。韓国では日本語の研究は盛んになっていて,ほとんどこういう資料がまとめられていて,私があまり申し上げられることがないんじゃないかと思いました。その中で,今まで,公表されてない資料を通じて,韓国での日本語の地位について説明させていただきます。
 後ろの方にいって,5ページ目になると思いますけれども,5ページと6ページ,5ページから8ページまででしょうか。表が八つありますけれども,一応,表1は韓国の高校で日本語を習っている学生数の推移です。ここで,ドイツ語とフランス語は参考に拾っておいたんですけれど,説明は日本語と中国語を中心として説明させて頂きます。説明する前に,一つ申しわけないのは,これはエクセルで作った表なんですけれども,この資料を作るために初めてエクセルを使ってみました。ここに来て昨日,先生に指摘を受けましたけれど,表の中で,95年度の数字と2000年,2001年,2002年の数字が同じになっています。申し訳ございません。これは,論文でまとめるとき,なおして提出します。それで,この表には提示されてないんですけれども,一応私が持っている資料を利用して95年度と2002年度の数字をちょっと紹介いたします。一応,日本語の場合は,95年度は総計81万ぐらいの高校生が日本語を習っていました。これが,2002年になると,50万8千ぐらいになっていて,数字は減っているんですけれど,これは日本語学習者自体が減ったんじゃないです。高校生の全体の数が減っていてむしろ,比率は高くなるんですけれども,95年度の場合は日本語の学習者数は45.4%から2002年になると,56.6%になります。半分以上になってます。中国語の場合も95年度は7万9千人,これが2002年になると,7万9千人になってます。これは全体の比率の中で11.1%になりますが,中国語の場合は,やはり,元々の数が少なかったかもしれませんけど,ちょっとだけ増加したんですね。でも,数だけ比べてみると,日本語の場合が5倍になっています。それで,フランス語とドイツ語はだんだん減ってます。次のページをみると,表2が出るんですけれども,これは高校の中で,英語について第2外国語として,どれぐらいの先生が教えてるかの表です。これをちょっと説明しますと,一応日本語の場合は95年度と2002年を比べてみると,39.9%から46.0%まで6.1%ぐらい増加しています。中国語の場合も同じ比率で6.3%増えています。でも,こっちも先生の数としては日本語の方が4倍ぐらいになります。ここで,一つの特徴は2001年から2002年からの資料なんですけれども,中国語と日本語と先生の数が急に増加するんですけれど,これは,後で説明します。それで,次のページをみますと,修士,博士課程の志願者数なんですけど,表3から表8が前の表1と2と区別されて,特徴を持つのは,高校の場合は,大体学習者の場合,自分の意志じゃ,自分が選択した外国語ではないです,実は。これは,学校で決めて,その学校に入ると,この外国語を習う,そういう形なんですけれども,表3からはこれは自発的に選択して習っている外国語です。表3をみると,日本語の場合なんですけれども,95年から2002年に移ると1.8倍ぐらい増加しています。それに対して中国語の場合,1.4倍ぐらいです。2002年の数字を比べてみると,日本語の方が1.3倍ぐらい中国語より多いということです。まあ,表4は3と同じ意味でして省略いたします。次のページを見ますと,これはうちの大学の例なんですけど,韓国外国語大学校で第2外国語としてどれぐらいの学生が受講しているかという意味の表です。これは,まだ電算施設がちゃんと整ってなくて,2000年から得た資料なんですけれど,2000年の場合,1356人から2002年の場合,300人ぐらい日本語の場合,増えていますけれど,比率はあまり変わらないです。中国語の場合も,ちょっと増えたんですけど,割合をみると,ほとんど,同じですね。一応,とにかく,日本語の方がこの表でも中国語より3倍ぐらいになってるんです。次は,表6なんですけれども,これは,韓国外大で第2外国語として外国語を副専攻している数なんですけれども,この表が8つの表の中で,もっとも,最も特徴を持つ表だと思いますけど,表をみると,日本語の場合,まあ2000年度766人から2002年度になると,596人に減っています。減っている場合は,これしかないんですけれど,中国語の場合はこれに反して,345(人)から586(人)に増えたんですよね。これは,なぜこういう結果が出るのかなと思ってみたんですけれども,やはり表5までは,外国語を自分の仕事と関係なく勉強する,そういう意味だったんですけれども,副専攻の場合は,専攻で生きて行くのが難しくなったら,いつもこれは自分の生計の手段になれる,そういう意味がありまして,学生の場合も,やっぱり自分の仕事の手段として勉強する傾向があります。というのが,何の意味を持つのかを言いますと,やはり最近,若者の大学生の中では,中国語を勉強した方が,これからは儲けやすいそう思っていると思います。ですから,この表はそのような意味でみると,大事な意味を持っているんじゃないかと思います。
 表7もこれもちょっと面白いし,まあこれからの日本語の地位を予想するのに,大事な資料だと思いますけど,これは,ソウル大学と韓国教員大学,教員大学は教師を養成する所なんです。第2外国語養成過程の教員数なんですけど,ここに,ドイツ語とフランス語は入ってないです。なぜかというと,これは,韓国で日本語とか中国語を勉強したいという高校生が増えていて,それに反してフランス語とドイツ語は減っているんです。選択する学生が増えるほど先生もそれぐらい必要,でも,現在在職している先生を首をきるのが全くだめで,そうすると,「政府からお金を出すから,自分の専攻を変えてください。ドイツ語かフランス語をやめて,中国語とか日本語を勉強してください。」(といったような)こういう政府の政策の結果なんです。その結果,日本語の場合は315人,中国語の場合,83人の先生が自分の元々の専攻を捨てて,専攻を変えました。こういう場合,これも日本語の先生が中国語の先生より4倍ぐらいなるんですけれども,これは,最近のデータで,先生たちにこれはちょっと聞いてみたんですけれども,「どうして中国語を選択しなくて 日本語を選択しましたか。」「もしかして,日本語が学びやすいんじゃないんですか。」と聞いてみたんですけも,それはそうじゃなかったんです。やはり,学校で日本語を選択する学生数が多い,ですから日本語を勉強した方がいいというわけで,こんな結果になりました。それから,表8に入りますけど,韓国では2002年度から中学校でも第2外国語を勉強できるようになりました。中学の場合,2年間の統計資料なんですけど,やはりこれは全く学生の自由選択のかたちです。表をみると,日本語の場合,2002年の場合は5万人以上,中国語の場合は,6千人以上,それが一年後は日本語の場合は12万(人以上),中国語の場合は(約)2万9千(人)になっています。それは,数としては合わせると,日本語の方が中国語より6倍ぐらいになっています。でも,伸び率は中国語の方が,4倍ぐらいになるわけです。
 これが大体最近の韓国での日本語の地位に関する統計資料です。次はまた,1ページに戻りまして,日本語とか中国語を勉強する学生の学習動機が何であろうか,それをちょっと調べてみました。学習動機に関する表は2ページに載っているんですけれども,表9の場合,日本語と中国語を習いたい理由です。14項目がありますけど,これは私が作ったものではないんで,1,2,3はどうしてこんなに分けていたかなと思ってみたんですけど,1,2,3,の場合,特徴として全部,経済的な面を強調した理由になっています。これを合わせてみると日本語の場合が52.1% ,中国語の場合30%ぐらい。どうしてこれを強調するのかについて説明しますと,一般的に最近韓国では,さっき言いました中国語の勉強の場合,経済的な面に動機があるんじゃないかと思いましたけど,全体的には予想外に日本語の方が(経済的な動機が)高かったんです。これは,やはり,大学生の場合,自分の専門としては中国語を選択する人が日本語の方より多いんですけど,それ以外の世代ではそうじゃない,そう(そんな)意味じゃないかと思います。2番目の特徴なんですけど,日本語の学習動機をみてみると,20%以上占める項目が出てるんですけど,第1位が10番の「旅行を楽しむため」,2番目が4番の「最新の情報を身につけるため」,次が「学習していたから」,次が「仕事で必要」,次が「学びやすい」,次が「文化を理解する」,このような順になっております。これに対して中国語の学習動機もありますけど,日本語と同じく1番目は「旅行を楽しむため」,2番目が「面白そう」,でも,勉強してみたらあまり面白くないんですね。辛いですね。私も最近,ちょっと中国語を勉強し始めたんですけど,私もこう面白そうだと考えて,勉強しはじめましたけど,やはり,中国語はそんなに学びやすい言語じゃないと思います。まあ,「日本語が笑って始めて,中国語が泣いて始めて」,結果はまだ,分からないんですね。一応,面白そうに考えております。(中国語の学習動機の理由の続きですが)次が「文化を理解するため」,次が「仕事で必要」,次が「重要なことばだから」,次が「最新の情報を身につけるため」。ですけど,私が見る限り,面白いのは,日本語の場合,「学習していたから」「学びやすい」,こういうところに韓国人の特徴がみえる。それで,中国語の場合,「面白そう」とか「重要なことばだから」という結果が出ているわけです。
 「学習していたから日本語を勉強続けたい。」,これは大事な理由だと思いますけれども,(なぜかというと,)韓国での日本語の学習者の80%ぐらいが高校,中学校で,もう勉強し始めた学生ですから,こういう傾向が続いたら,これは,変えにくい,そのまま日本語を勉強していくんじゃないかというそういう意味でこれは大事な意味を持つと思います。
 総合的にこの表を分析してみると,両方ともに最新の情報とか,旅行とか文化,私はこれを合わせて文化だと思いますけど,文化的側面の割合が仕事で必要,いい職につける,収入が増えるなど,経済側面を遙かに上回っていることが分かります。これに対して,ちょっと考えてみたんですけど,やはり,韓国の場合も生計手段として外国語学習から質の高い暮らしのための外国語の学習の段階に入っているんじゃないかと思います。
 最後に,結論を書くのが大変な作業で,結論に変えてですね展望と課題になってます。一応,日本語の地位とかこれから韓国における日本語のあり方を念頭に入れてこれからいくつかの展望と課題を述べますと,第1の展望は韓国における日本語学習者数は韓国政府の文教部政策にもっとも影響を受けるということです。これは,中学校と高校の例なんですけれども,今の段階で韓国政府の積極的な世界化政策,グローバリゼーションの政策を念頭にいれると,当分の間政府政策による日本語の学習者数の減少はあまり考えられないと思います。2番目の展望ですけれども,中国語の場合は,中学・高校の学習者数や教員数ではドイツ語やフランス語に及ばない,でもそれ以外の数値は両言語より遙かに高いです。しかも,中国語の学習者数も徐々に増加する一方です。ですから,将来,中国語は韓国において,日本語と第2の外国語として地位を争う唯一の言葉として位置づけることができます。しかし,まだ,現段階では韓国における日本語と中国語の地位は比較にならないほどの差があると思います。また,構造化されている高校の教員数,学生数,(構造化ということは,これは変えにくい,そういう意味で使いましたけど)それに類似の傾向性を見せていくと予想される中学校での日本語学習者数,そして,学習していた外国語の変更の難しさなどなど参考するとき,近い内に第2外国語としての日本語の地位がひっくり返される様子は見られないと予想されます。
 最後は学習動機を通じて,これからの韓国における日本語のあり方をちょっと触れてみましたけれど,やはり,将来の日本語学習は単に学習者数の増加ではなく,学習の質を高めるべきだと私はそう思います。韓国は既に儲ける手段としての日本語の学習段階,語彙や文法のレベルの学習段階を超え,日本語を相対的に理解していくための日本語学習時代に入っていると思います。これは,最近の傾向の一つで,90年代以降に大学に日本語と日本に関連した学科を設けるとき,学科の名前が違います。日本語科や日本語日本文学科じゃなく,日本学科とか日本地域研究科とか,90年代以降は8割以上が,学科の名前をそんな名前を使っています。これが,一つの明らかな例だと思いますけど,やはり,語学だけでは,韓国では,これはこれからのニーズに応じられないというような現象があります。これをちょっと細かく言いますと,韓国人の日本語学習動機は日本文化の理解に焦点が合わせられると思います。ですから,このような傾向は今後いっそう,強化されつつありそうです。こういう意味で結論として,(この文章がどういう意味か私も分からないんですけれども,一応文章としては,)日本語と日本文化の接点,それを探ることが韓国における日本語の未来を決めると思います。ご静聴どうもありがとうございます。