高等日本語学習者を考える

インドネシア国立大学 レア・サンティアル


レア・サンティアル氏

 皆さまこんにちは。急に発表と言われたことはとても困りました。本当に急に,1月に入ってから2週間目にバスティア先生からこの話が上がってきて,大学の方も論文の試験とか,来週から新しい学期に入りますのでその準備も忙しくて皆さんの期待に応じる発表は出来ないと思いますが,できるだけ皆さんの質問を受けて午後の方にお答えします。言語の方もきれいに見直しや発表の練習も足りないまま申し訳ありませんが,許してください。
資料に入りますが,1990年代からインドネシアと日本の経済的面の関係が深くなるにつれて,日本語教育も盛んになってきています。そのため日本語学習者の数の上昇傾向がみられます。日本語を教える大学,日本語学校や専門学校も増加しています。それに中等教育の授業項目の一つにもなりました。日本語を学習して実際日本語をどう生かしているのでしょう。言葉の勉強はゴールによって学習項目や教え方も違ってきますが,どこまで注目されているかが問題ではないかと思います。なぜこのことを問題にしたかといいますと,学習者卒業生は流暢に日本語を使えないという事実があるからです。まず,インドネシアにおける高等日本語教育の状況を取り上げ,いくつか言います。まず学習時間の話です。日本語学習者の中で長時間日本語を学習する者はやはり大学生ではないかと思われます。だいたい週10時間で3年間,合計840時間の学習時間となります。学習の数といいますと,以下の基金からの表ですけれども,6,000人も学習者がいます。学習者の動機をみてみますと,やはり他の国と同じだと思いますが,日常生活で使われている日本製品やテレビで放送されるアニメやテレビドラマや,子供たちが遊んでいるテレビゲームや翻訳された漫画などが日本の文化をはじめ,日本人の名前,地名,日本語そのものの紹介となっています。他の国と同じだと思いますが,デジモンとかそういうところで若い子供たちが本当に日本はめずらしいとか思わずに,ドラえもんはもう10年くらいテレビでやっていますので,とにかく身近な,心の中で身近な国だと子供が考えています。でも特に今大学2年の学生たちはアニメの音楽が歌えるというのは珍しいですね。意味が分からないかもしれないけれど,とにかくアニメが好きで漫画が好きで,そういう紹介で日本語学科を選ぶ,すごく軽い気持ちで日本語を専攻するようになりました。もちろんその中で日本とインドネシアとの経済的面から深い関係をみて日本企業で就職したいと思い,日本語を学習する人も多いですが,まだ日本研究というところに仕事したいと思う人はやはり少ないです。続きまして大学の方をみますと,大学によって目標も違いますが,大きく2つに分けて考えられると思います。まずプラグマティック的なプラグマティックな日本語中心となりますと,ビジネス日本語,それから観光日本語,翻訳,日本語教育,そして日本語能力試験2級を目指して文部省の選抜試験に合格すること目指していることによって日本語教育を行っている。もう一つはさっき言った日本研究地域中心というのもありますが,日本語の言語学とか文学,文化,歴史,社会の専門家を育てる教育もあります。いずれにしても高い日本語能力が認められるのではないかと思われます。日本の研究をしたいと思っても,目標があっても,日本の資料,日本語で書かれてる資料が読めないというのはおかしいのではないかと思いますが,それは一つの事実であります。この高い日本語のレベルはどのように応えるかが問題でしょう。今までは学生が不真面目とか学生のモチベーションが低いとか先生が弱いとか日本語能力が足りないとかいろいろ言われましたが,やっぱり私の考えには日本語のカリキュラム自体が何かおかしいのではないかと思うようになりました。実際に日本語を生かして使おうとする学生は,3級だけではできないと思いますが,2級までに近づかないと無理ではないかと思います。学習時間数は840時間はありますので,オーストラリアの場合は学生は流暢に日本語が使えるようになりましたので,何かここで改善しなければならないかと思います。一つ大きな問題がみられるのは,今までの言語を習得する際に4技能,つまり,聞く・話す・読む・書くを同時に身につけさせるとは考えていません。それに実際に日本語を使いたい場合は中級日本語までいかないと無理ではないかと思いますので,中級日本語は文型はもちろんですけれども,語彙にも非常に大きな問題があると思います。なぜかと言いますと,抽象的なものが多い,そして同音の語彙も多い,そして特にインドネシア人は非漢字系民族であるために,漢字を覚える問題があります。漢字が覚えられなければ,語彙の問題にもすぐに関連してくるのではないかと思います。もう一つ,今までのカリキュラムでは,たとえばさっき言った10時間をいくつかの技能に分けて,独立授業として教えていますので,学生の能力も一つにまとまらないという事実があります。というのは,たとえばLLの教室の時には先生はただ日本語のテープとかビデオを見せたりすることがありますが,それを聞いている学生とか見ている学生は手を出すことはしていません。先生の間の連絡もあまり取れていないのは,やはり生活の面ではちょっと困っているので掛け持ちしている先生が多いですから,会議とかなんかの形はないといってもいいぐらいチームティーチングは全然やっていません。読解の授業も読むだけで結局,翻訳の授業になってしまうんですね。初級段階ではまだ先生も「どんな内容ですか?」と簡単に聞いて学生の答えはまだ文型は難しくありませんのでチェックはできますが,中級になりますとやはり現地の先生だけの力で,内容を日本語でいろいろ話しをするのは負担があります。こういった問題を見てみるとやはりカリキュラムを立て直さないと学習者のニーズには応えていないのではないかと思います。もちろんインドネシアの全国のいろんな大学の情報もここで話したいのだけれどもとりあえずインドネシア大学を例にして話します。インドネシア大学も他の大学も,学生たちに2級を受けさせて受かれば仕事が見つけやすいという考え方を持っています。しかし日本語能力試験だけを目指していいのかと私たちは考えています。能力を測るためにはいいかもしれませんが,実際に企業に勤めるときに試験問題ではない,日本人が話しているので,実際に日本語が使えない場合が多いです。先ほど言いましたが,現地の先生が「アウトプットのチェックは大変です。」と言いましたが,それは特にインドネシア大学の場合はもう今3年目になったと思いますが,専門家がもう来ていない状態ですからボランティアの形でしか日本人がみえていません。そのボランティアの方にはいろいろとあまりお願いすることができないので,やはり自分たちの力だけで何とか立ち上がらないと困ります。私はこんなことしか頭に浮かばなかったが,この状態を利用して授業の流れを考え直すことにしました。今までの単独での仕事の分担をやめて,4技能を身につけさせるために総合的な考え方に変えるようにしました。今までは教師はすごくうるさく,自分の都合に合わせて教えていました。たとえば,文法だけ教えます,私は漢字は好きじゃない,分からない,教えません,とすごく楽に言っています。ところで私は今学科長になりましたのは2年前だと思いますが,他の同僚となる人は元先生であった人たちが多いです。私はインドネシア大学の卒業生で,私の先生はそこにいます。17人の中で4,5人が同級生だった人,それ以外の人達は自分の元先生だったので,こっちがいろいろ言ってもちょっと困るところがあります。もちろん他の先生は,私が別にみなさんを困らせるつもりではなく,ちょっと改善したいと言っているということをわかっていますが,やはり今までの教え方で慣れてきましたので,新しい考え方をいいと思っていてもちょっとやりにくいのではないかと思います。たとえば先生「LL教室をお願いします」と言うときに,「テープの準備は誰がしますか?」と返ってきます。それはもちろん先生がするべきですが,その先生は今まで30年も教えてきたのですが,テープにもいっさい触ったことがないとか,(テープはまだいいのだけれど,)LL教室に入ったらいろんなボタンを押さないと機械が動かないので,その準備だけで10分以上かかってしまいます。そういう状態になりますと,今50歳を越えた先生なので,パニック状態になり,学生を呼んで「ちょっとこれ!」というのは冗談みたいですが,毎日の事実であります。もちろんインドネシア大学の真似だけではないと思いますが,インドネシア大学は日本研究者を育てるところということを,目標にしています。実際にそういう人間がいるのかなと私もよく考えていますが,そういう人たち,例えば,文学専門の人たちとか,社会とか文化の専門という人たちは「日本語を教えてください」というとコミュニケーションアプローチとか絵を使って日本語教えるのはちょっとさけているみたいで,漢字を教えるときも部首とか細かいところまで学生の都合に合わせて教えているのではなくて,悪く言えば,「この時間この本をどうやって終わらせるか」というのが多いです。そういった問題があります。この3枚目にごちゃごちゃと(準備が足りなかったので)書いてありますが,解決という考え方を考えますと,まずカリキュラムを考え直すというのは1つで,能力試験とか文部省奨学金をもらうための合格だけを目指さないのは大事です。でもそれよりもこのチームティーチングをもっとより良く何とかしなければならないのは,去年か2年前から目標にしています。1年生の場合は,2年目になりましたが,もう4人の先生がチームをエスタフェの形で「私はここまで来ました,あなたは次をお願いします。」で,会話の時間だったら誰でも会話の時間を持つ。だからできるだけ4技能を生かした授業を今やっていますが,来週になりますが4学期に入りますがそれは中級の授業に入ります。ここで大きな問題が起きたのは,やはりさっき言いましたが,学生のアウトプットのチェックは問題です。今計画をたてていますが,基金の専門家との勉強会は1つありますが,うまくいけるかどうかはまだ問題があると思いますが,その結果はまたそのうち出ると思います。ここで3つ重点を絞りたいのですが,1つは大学を卒業して流暢に日本語が使えるかという調査,やはり自分の学生と話してそれは結果とはいえないですね。だからはっきりとした調査をしなければなりません。それは卒業生にアンケートするつもりです。企業に入ってもどれくらい日本語を使っているか,何年経ってから日本語が消えてしまうかという恐ろしいものもあります。もう一つは学習者のニーズに応じたカリキュラム。現場調査ですね。学生学習者は大学に入って就職したいというので,やはり現場の日本語はどんな日本語が必要となるか,それに従ったカリキュラムを立てないといけない。もう一つは,教師の日本語能力はこれから大きな問題にもちろんなると思いますが,勉強会だけで済むのかと思います。日本まで留学するのは一番いいと思いますが,歳の制限とか,もちろん教師のそれぞれの事情もありますが一番大きいのはやはり奨学金が出るかどうかの問題です。インドネシアの政府と日本の政府の一つの問題でもありますが,それぞれの大学,例えば私立大学でももし協定を何かの形で日本の大学と結ぶことができればお互い助け合うという形も考えられるのではないかと思います。私の発表はつまらないと思いますが,以上で。ありがとうございました。