Computational Psycholinguistics Tokyo
- プロジェクト名,担当者名
- 対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法 (文法研究班 「名詞修飾表現」)窪田 悠介 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 准教授)
- 大規模コーパスを利用した言語処理の計算心理言語学的研究大関 洋平 (早稲田大学 理工学術院 講師)
- コーパスアノテーションの拡張・統合・自動化に関する基礎研究 (係り受け班)浅原 正幸 (国立国語研究所 コーパス開発センター 教授)
- 開催期日
- 2019年11月22日 (金) 14:00~16:00
- 開催場所
- 早稲田大学 西早稲田キャンパス 51号館 5階 12号室 (東京都新宿区大久保3丁目4-1)
交通アクセス - 関連サイト
- Computational Psycholinguistics Tokyo
プログラム
「理論言語学としての語用論を越えて : 表出的意味に関する動的語用論とその幾何的解釈について」 山田 彬尭 (ジョージタウン大学 / 駿河台大学)
語用論は,(i) 統語論/意味論との接点を持つ理論言語学の一領域としての顔を持つ。しかし,それだけではなく,(ii) 人間の推論に対するモデルを提案する点で文処理/言語処理に関する研究や (機械) 学習などのモデルと強い親和性があり,また,(iii) その推論に多く社会学的な要因が関わることから社会言語学の理論とも密接な繋がりがある。しかし,このように潜在的には極めて学際的なこの研究分野は,これらの三つの側面がそれぞれの独自の枠組みで自律的に発達する過程で細分化され,これらを統一的に議論する土台は,ほとんど用意されてこなかった。本発表では,Yamada (to appear) で論じられた日本語の「丁寧語」に関する表出的意味をケーススタディに,この三つの領域を有機的につなげる視座を提案する。第一に,先行研究で盛んに使われてきた実数値を用いた表出的意味の解釈を整理し,それらが多様体の上での学習として幾何的に解釈されることを示す。第二に,これらの先行研究の経験的な問題点を乗り越えるために Yamada (2019, to appear) で提案されたベイズ統計学的な動的語用論を説明する。そして,この後者のモデルも,あるパラメータ空間の中での多様体学習として位置づけられることを示す。(i) 理論言語学として提案された動的語用論のモデルが,(ii) オンラインの人間の動的推論メカニズムとして素直な解釈を帯びること,および,(iii) 社会言語学 (変異理論) において古くから提案されてきた数理モデルのベイズ統計学の中での再解釈として位置づけられることを踏まえ,本研究会の参加者とともに,今後期待される語用論/認知科学の発展について模索する。