「通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開」研究発表会 (2019年6月29日)
- プロジェクト名・リーダー名
- 通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開
小木曽 智信 (国立国語研究所 言語変化研究領域 教授) - 開催期日
- 2019年6月29日 (土) 13:00~17:30
- 開催場所
- 明治大学 中野キャンパス 208教室 (東京都中野区中野4-21-1)
アクセス
通時コーパス活用班合同研究発表会 (近世・近代グループ, 文体・資料性グループ)
プログラム
13:00~13:50 「『古今集遠鏡』コーパス構築の試み」 市村 太郎 (常葉大学)
本居宣長著『古今集遠鏡』を対象としてコーパスの構築を試みた。本発表では,その構造化過程で現れた課題やコーパスの特徴,今後の展望を示す。また,構築したデータ活用の一例として,程度副詞を対象とした調査を行い,国立国語研究所『日本語歴史コーパス 江戸時代編Ⅰ 洒落本』での使用状況と照らし合わせ,『古今集遠鏡』訳文で使用された語彙の一側面を確認したい。
13:50~14:40 「洋学辞書・単語集の概略とその電子テキスト化について」 櫻井 豪人 (茨城大学)
江戸時代後期に刊行された蘭日辞書 (『波留麻和解』『訳鍵』『和蘭字彙』等) から,刊本として日本初の英和辞書である『英和対訳袖珍辞書』に至る一連の洋学辞書の流れと,『類聚紅毛語訳』『改正増補蛮語箋』『英語箋』や『英吉利単語篇』『法朗西単語篇』『英仏単語篇注解』といった洋学単語集の流れについて概説し,それぞれの訳語の性質の違いや国語史研究における利用方法について論じる。また,発表者が進めている電子テキスト化についても紹介し,当該資料群の検索ツールの現状とその意義について説明する。
14:40~15:30 「『読売新聞』コーパスの概要と表記特徴」 間淵 洋子 (国立国語研究所 / 人間文化研究機構)
現在,雑誌中心の『日本語歴史コーパス 明治・大正編』と比較・対照するための資料として,『読売新聞』を対象としたコーパスを構築している。印刷・出版の歴史や新聞メディアの発達と,言語変化との相関を解明することを目的に,新聞の形態や文字・表記といった視覚的・外形的側面を特に詳細に記述したコーパスとして整備中である。本発表では,コーパスの概要と,明治期『読売新聞』の用字とルビの特徴について報告する。
休憩
15:50~16:40 「CHJ江戸時代編 (京都・大坂) を利用した動詞待遇表現化のコロケーション」 村上 謙 (関西学院大学)
現在,動詞文の待遇表現化の方式を検討する際,ある種の「型」を用いて検討することが通常である。例えば,尊敬語化ならオ~ニナル,~レル,~ラレル,謙譲語化ならオ~スル,オ~モウシアゲルといった「型」である。そして,これらの各種の「型」の選択決定については「型」の側の問題として捉えられがちである。しかし,動詞の個別的なコロケーションも存在する。例えば「お走りになる」という言い方はあまり自然ではないし,そもそも待遇表現化しない動詞もある。今回はそれらについて,CHJ江戸時代編を用いて検討する。
16:40~17:30 「明治・大正期の書き言葉における文体と語彙 ―接続詞を例に―」 近藤 明日子 (国立国語研究所)
明治・大正期,書き言葉は口語体の進展・確立という大きな変化を遂げるが,その過程において,既に書き言葉の標準として存在していた文語体の影響があったことが考えられる。本発表では接続詞を例に,国立国語研究所 (2019) 『日本語歴史コーパス明治・大正編Ⅰ雑誌』と同『日本語歴史コーパス明治・大正編Ⅲ明治初期口語資料』を用い,文体とそこで使用される語形との対応関係とその通時的変化を計量的に分析し,語彙における文語体から口語体への影響について考察を試みる。