シンポジウム 「日本語学習者はどのように文章を理解しているのか ―目の動きから見えてくるもの―」

プロジェクト名・リーダー名
日本語学習者のコミュニケーションの多角的解明
石黒 圭 (国立国語研究所 日本語教育研究領域 教授)
協賛
文部科学省科学研究費 基盤研究 (B) 16H03438
「文脈情報を用いた日本語学習者の文章理解過程の実証的研究」 (研究代表者 : 石黒 圭)
国立国語研究所 コーパス開発センター 共同研究プロジェクト
「コーパスアノテーションの拡張・統合・自動化に関する基礎研究」 (研究代表者 : 浅原 正幸)
ROIS-NIHU 機構間連携・文理融合プロジェクト調査研究
「わかりやすい情報伝達の実現に向けた言語認知機構の解明とその工学的応用」 (研究代表者 : 相澤 彰子)
開催期日
平成30年3月3日 (土) 10:00~15:00
開催場所
国立国語研究所 講堂 (東京都立川市緑町10-2)
交通案内
定員
200名 (参加費 無料)
参加申し込み
rpp[at]ninjal.ac.jp (シンポジウム受付担当) までご連絡ください。

メールアドレスの「[at]」を「@」に置き換えてください。

メールの件名を「3月3日参加申込」として,次の情報を本文に記入してください。

  • 氏名 :
  • E-mail :
  • 所属 : (学生の場合,博士,修士,学部生の別についてもご記入ください)
  • 今後のイベント案内のメール送信 : (可,否のいずれかをご記入ください)

概要

本シンポジウムの目的は,文章理解のプロセスに見られる日本語学習者の困難点を明らかにし,その成果を読解教育の実践の場に生かすことにある。

読解教育では,語彙力・文法力が一般に重視されるが,その二つは文章理解の必要条件にすぎない。語彙力・文法力を生かして読み取った文の意味をベースに,

①背景知識を活性化させる力
②表現意図を読み解く力
③文章展開を推論する力

を用いて初めて,文章の十全な理解が可能になる。本研究は,語彙力・文法力といった静的な知識ではなく,オンラインの処理過程で発揮される①~③の動的な能力を考察の対象とし,その源泉となる文脈情報を学習者がどのように用いて理解 (あるいは誤解) しているかを,目の動き (視線走行実験) の結果も併せて,日本語母語話者や学習者相互の比較のなかで明らかにすることを目指すものである。


  • 講演者
    石黒 圭 (国立国語研究所 日本語教育研究領域 教授)
    浅原 正幸 (国立国語研究所 コーパス開発センター 准教授)
  • コメンテーター
    鈴木 美加 (東京外国語大学大学院 国際日本学研究院 教授)
  • 発表者
    井伊 菜穂子 (一橋大学大学院 言語社会研究科 大学院生)
    烏 日哲 (国立国語研究所 日本語教育研究領域 プロジェクト非常勤研究員)
    田中 啓行 (国立国語研究所 日本語教育研究領域 プロジェクト非常勤研究員)
    張 秀娟 (中国華南農業大学 外国語学院日本語学科 講師)

プログラム

10:00~10:30 講演「日本語学習者の読解過程の解明」 石黒 圭

文章は文字列が延々と続く1本の線であり,文章理解はその線に沿って視線を走らせて文字列を次々に意味に変換していく作業である。ところが,日本語学習者の場合,そうした文章理解の作業がうまくいかず,同じ箇所を何度も読んだり,読み誤ったりする。本発表では,そうした日本語学習者の文章理解の困難点を整理して紹介する。

10:30~11:00 研究発表①「複雑な文の構造をどう理解するのか」 張 秀娟

日本語学習者と日本語母語話者は長く複雑な連体修飾構造をどのように理解しているのか。中国語を母語とする日本語学習者とベトナム語を母語とする日本語学習者のデータを用い,文全体の統語的関係,連体修飾成分間の意味的つながり,背景知識の活用といった観点から連体修飾構造の理解の仕方を分析する。

11:00~11:30 研究発表②「日本語学習者は文脈指示をどう理解するのか」 田中 啓行

日本語学習者は,指示詞の指示対象をどのように理解しているのだろうか。本発表では,文脈指示の指示詞について,前方照応・後方照応,指定指示・代行指示,指示の範囲などの観点から,日本語学習者が指示対象を把握する際の手がかりと困難点について検討する。

11:30~12:00前半部のディスカッション

12:00~13:00休憩

13:00~13:30 講演「読み時間と節境界について」 浅原 正幸

『現代日本語書き言葉均衡コーパス』に対する日本語母語話者に読み時間データ BCCWJ-EyeTrack に節境界情報アノテーション BCCWJ-ToriClause を重ね合わせたデータの統計的分析を通して,そこからわかる人間の文処理機構について紹介する。

13:30~14:00 研究発表③「日本語学習者はどのように接続詞を使って文章を理解するのか」 井伊 菜穂子

日本語学習者の文章理解の困難点の一つとして,接続詞の理解が不十分であるために,後続文脈の展開がうまく絞り込めないことがある。日本語学習者はどのように接続詞を理解し,それをどのように後続文脈の理解に活かしているのか。日本語学習者の展開の絞り込みの過程から,その実態を解明する。

14:00~14:30 研究発表④「中国語を母語とする日本語学習者のトピックレベルでの文章理解」 烏 日哲

日本語学習者は,個々の文の意味が理解できていたとしても,文を越えたトピックのつながりや,文章に込められた筆者の表現意図を理解することは難しい。日本語学習者は,一つの完結した文章を,どのようなプロセスの中で理解を進めていくのだろうか。本発表では,中国語を母語とする日本語学習者を例に,文章全体の理解の特徴や困難点を,主に,学習者の背景知識との関連から分析する。

14:30~15:00後半部のディスカッション

15:00閉会