「対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法」研究発表会

プロジェクト名・リーダー名
対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法
窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
班名・リーダー名
文法研究班 「動詞の意味構造」
松本 曜 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
開催期日
平成30年2月20日 (火) 13:30~17:00
開催場所
キャンパスプラザ京都 6階 第8講習室 (京都大学サテライト講習室) (京都市下京区西洞院通塩小路下る東塩小路町939)
アクセス

どなたでも参加可能ですが,参加人数を確認するため,事前に ido.misato[at]ninjal.ac.jp 宛にお申し込みください。([at]を@に変えてください。)

文法研究班 「動詞の意味構造」 平成29年度 共同研究発表会

13:30~14:45 「フレーム意味論から見た英語名詞転換動詞」 中嶌 浩貴 (神戸大学大学院 人文学研究科)

本研究では,英語名詞転換動詞を取り扱い,特に次の2点に焦点を当てて当該現象を考察する。1点目として,Clark and Clark (1979) 以降,百科事典的知識の観点から名詞転換動詞の意味をとらえる研究が積み重ねられてきた。しかし,研究者によってどのような百科事典的知識を想定するかに違いがある。本研究では,名詞転換動詞の元の名詞の指示対象がその中で何らかの役割を果たすようなイベントについての知識によって名詞転換動詞の意味をより適切に説明できると主張する。
2点目は,名詞転換動詞の意味的パターンを理論的にどのようにとらえるかである。名詞転換動詞の意味パターンは多くの場合,概念メトニミー理論を用いて分析されている (Dirven 1999, Radden and Kövecses 1998, Mrtsa 2013 etc.)。ただ,提案されているメトニミーは様々であり,どれが妥当な分析かは実際のデータを踏まえて検討される必要がある。また,上記1点目のフレーム的情報の取り扱いは先行研究では議論されていない。本研究では,Martsa のアプローチを発展させ,階層的 (あるいはネットワーク的) なメトニミーの構造を想定することで,名詞転換動詞の意味パターンをより適切にとらえられると主張する。

15:00~16:15 「結果構文とEAT フレーム」 岩田 彩志 (関西大学)

Goldberg (1995) の構文アプローチでは,フレーム意味論的情報の必要性を唱えながら,実際には動詞の意味を単なる参与者役割の集合で済ませてしまっている。しかし,そのように動詞の意味を簡単に済ませてしまっては説明のつかない現象が多く存在する。本発表では,英語の eat/drink を基とした結果構文を取り上げて,その多様な結果句を説明するためには,どのようなフレーム意味論的情報が必要となるかを考察する。
本発表で土台とするのは,Croft (2009) の提案である。Croft (2009) は,EAT のフレームに3つの領域 (physical,biological,social activity) があると主張している。physical domain は,さらに intake・processing・ingestion という3つの段階から成る。これはつまり,「食べる・飲む」には「口の中に入れ,咀嚼し,吸収する」という物理的側面だけでなく,「滋養のあるものを飲食する」という側面や,食事としての社会的側面もある,ということである。
eat/drink の結果構文が非常に多様な結果句を取れるのは,正にEAT フレームがこのように多面的であるからに他ならない。

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