シンポジウム「新たな作文研究のアプローチ ―わかりやすく書ける作文シラバス構築を目指して―」

プロジェクト名,リーダー名
日本語学習者のコミュニケーションの多角的解明
石黒 圭 (国立国語研究所 日本語教育研究領域 教授)
開催期日
平成30年1月14日 (日) 13:00~17:00
開催場所
国立国語研究所 講堂 (東京都立川市緑町10-2)
交通案内
定員
200名
申し込み先
jsl-event[at]ninjal.ac.jp (シンポジウム受付担当) までご連絡ください。 [at]を@に置き換えてください。

メールの件名を「1月14日シンポジウム申込み」として,次の情報を本文に記入してください。

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概要

日本語母語話者,中国語母語話者,韓国語母語話者が書いた日本語作文を収録した「JCK作文コーパス」による作文研究の内容を紹介します。「JCK作文コーパス」は2000字以上の長い作文が書かれたコーパスであり,結束性や文章構造など,作文のテキスト的側面を見るのに適しています。

今回の発表では,これまでの研究であまり注目されてこなかった,
① 日本語学習者の読点の打ち方
② 日本語学習者の段落の分け方
③ 日本語学習者の執筆過程に見られる修正方法と修正動機
④ 文末の文法形式のテキスト的機能
を紹介し,作文研究の新たなアプローチを提示するとともに,作文授業のシラバス構築への提案を行うことを目指します。

プログラム

13:00~13:10 趣旨説明
石黒 圭 (国立国語研究所 教授)

13:10~13:40 「正確で自然な読点の打ち方」 岩崎 拓也 (国立国語研究所 プロジェクト非常勤研究員)

日本語教育における作文の授業では,句読点が学習項目として取り上げられることはあまりない。しかし,実際に日本語学習者が書いた作文を読むと,句読点が適切でないことによって読みづらさを感じることが多い。そこで,本発表では,学習者の作文に出現する句読点の表現を考える。とくに読点に焦点を当て,「南モデル」を参考に,従属節の独立度の関連で読点の打つべき位置を検討する。

13:40~14:10 「説得力のある段落の組み立て方」 宮澤 太聡 (中京大学 准教授)

日本語学習者の作文には,構成を練る際や,その構成をもとに実際の文章を作成する際に問題が生じているものがある。これらの問題は,日本語母語話者の作文にも見られるものであり,また,個人に帰する部分が大きいものの,日本語学習者の作文には,ある種の傾向がみられる。そこで,本発表では,これまで検討が十分なされているとはいえない学習者の作文に現れる段落を考える。具体的には,佐久間まゆみ (2010) の「段」の統括機能による全7類16種の中心文を用いて分析を行い,段落の形式と機能を中心に,段落の組み立て方による話題のまとまりから生まれる説得力について検討する。

14:10~14:25休憩

14:25~14:55 「日本語学習者の作文執筆のプロセス ―どう修正するのか?―」 田中 啓行 (国立国語研究所 プロジェクト非常勤研究員)

これまでの作文研究は,完成した作文の分析から日本語学習者の作文の特徴を明らかにしたものが多い。しかし,学習者は,作文の完成に至るまでの執筆過程で,一度書いた表現を削除したり,新たな表現を挿入したりするなど,さまざまな種類の修正を行っており,その位置も多様である。そこで,本発表では,作文執筆時のパソコンの入力過程を記録したデータをもとに,学習者の作文執筆過程における修正の種類と位置について考える。修正の種類を5種,修正の位置を4種に分類,集計した結果から,学習者の作文執筆の特徴について検討する。

14:55~15:25 「日本語学習者の作文執筆のプロセス ―なぜ修正するのか?―」 布施 悠子 (国立国語研究所 プロジェクト非常勤研究員)

日本語学習者は,作文の執筆過程において,単純なタイプミスの修正,表現の見直しから全体構成の変更まで,さまざまな意図で修正を行っている。「なぜ学習者がこのように作文を書いたのか」ということを考えるにあたり,執筆過程で行われている一つ一つの修正の意図について検討することは有意義なことである。そこで,本発表では,作文執筆時のパソコンの入力過程を記録したデータをもとに,学習者の作文執筆過程における修正の動機について考える。修正理由を20種に分類,集計した結果から,学習者の作文執筆の特徴について検討する

15:25~15:40休憩

15:40~16:20 「適切な文法形式の選び方」 庵 功雄 (一橋大学 教授)

学習者の作文にあらわれる文法形式に関するこれまでの研究は,1文から数文の範囲を対象として分析したものが中心であった。本発表では,文章のより広い範囲を対象に分析し,ボイスやテンス,アスペクトを中心に,一部の複文形式を加え,学習者の作文に出現する文法カテゴリーに属する要素について,母語話者と非母語話者との相違を表す項目やテキスト的機能を重視して検討する。具体的には,使役,受身,自他の対応,「ている / ていた」の区別,従属節のタイプと文の長さ (複雑さ) の関係などについて検討する。

16:20~16:50全体ディスカッション

16:50~17:00 閉会の辞
石黒 圭 (国立国語研究所 教授)