「シラバス作成を科学にする ―日本語教育に役立つ多面的な文法シラバスの作成―」

  • 主催:
    国立国語研究所領域指定型共同研究プロジェクト
    「学習者コーパスから見た日本語習得の難易度に基づく語彙・文法シラバスの構築」 (代表:山内 博之)
  • 日時:平成26年2月22日(土) 13:00~16:30
  • 会場:一橋大学 国立・東キャンパス 2号館 2301教室 (交通案内 | キャンパスマップ)
  • 入場無料・申し込み不要,定員300名
  • ポスターPDF:詳細はこちらをご覧ください(236KB)

プログラム

基調講演 I

庵 功雄 (一橋大学 教授)「文法シラバスの作成を科学する」

本講演では,「日本語で産出するために最低限必要な文法項目」のみを扱うものを「初級」と考え,日本語学的な観点にもとづく新しい初級シラバスを提案します。それと同時に,なぜ今「文法シラバス」の見直しが必要なのかという点を,「学校型日本語教育」に絞って述べたいと思います。

パネル発表

岩田 一成 (広島市立大学 准教授)「口頭表現出現率から見た文法シラバス」

教室で授業を行っている方は,「これは話し言葉 (or書き言葉) ですよ~」ってセリフ,たまに言いませんか?学習者にとっては当該の項目が話し言葉なのか書き言葉なのかは重要な情報です。ところが,何が話し言葉で何が書き言葉なのかっていうのはグレーゾーンもあり,微妙な問題です。本発表ではコーパスにおける出現数を基に,「〇〇は話し言葉である」と指導する際の根拠を示したいと思います。

中俣 尚己 (京都教育大学 講師)「生産性から見た文法シラバス」

授業で教えている文法項目の中には「ている」のように色々な場面で使われるようなものもあれば,「てある」のようにごく限られた動詞としか接続しないものもあります。この「どのぐらい色々な種類の動詞と接続するか」「どのぐらい色々な場面で使われるか」という尺度を「生産性」と呼び,それをコーパスのデータから客観的に計算する手法を提案します。そして,この「生産性」こそが学習者にとっての習得難易度と密接に関わっていることを示します。

森 篤嗣 (帝塚山大学 准教授)「日本語能力試験から見た文法シラバス」

日本語能力試験の旧試験には『分析評価に関する報告書』として,27年間分という膨大な蓄積があります。本発表ではこのうち,2005 年度~2009年度の5年度分を項目分析の対象として,「文法」だけでなく,「聴解」「読解」についても,「正答するためにキーとなる文法項目」を抽出した上で,正答率と識別力を中心として分析します。これに基づいて,当該級の受験者の解答傾向を踏まえ,難易度を考慮した段階的な文法シラバスを提案します。

田中 祐輔 (東洋大学 講師)「既存テキストから見た文法シラバス」

本研究は,既存テキストの視座から文法シラバスの過去と現在を明らかにし,今後の在り方についての議論に必要不可欠なこれまでの歩みに関する基礎的資料を提示するものです。そのために,戦後日本語教育において,主要初級日本語教科書が,いかなる「文法」を扱ってきたのかについて分析します。

基調講演 II

山内 博之 (実践女子大学 教授)「文法シラバスの現場への導入を科学する」

文法シラバスは日本語教育の背骨にあたるものであり,これがなければ日本語教育は成立しません。しかし,文法シラバスそのものを現場で示すことは望ましいことではないし,得策でもありません。本講演では,話題の難易度づけを行ない,文法シラバスを話題でコーティングして現場へ送り出す方法を紹介します。また,語彙 (実質語) の中にも文法 (機能語) と似た性質を持つ語群があることを指摘して,そのシラバスについて述べ,文法シラバスをよりスムーズに現場に導入できる道筋を示します。