「複文構文の意味の研究」研究発表会

プロジェクト名
複文構文の意味の研究 (略称 : 複文構文)
リーダー名
益岡 隆志 (神戸市外国語大学 教授,国立国語研究所 理論構造研究系 客員教授)
開催期日
平成24年5月13日 (日) 13:00~17:00
開催場所
学習院大学 目白キャンパス 北2号館10階 大会議室 (東京都豊島区目白1-5-1)
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発表概要

「中世末期日本語のテンス・アスペクト・モダリティ体系 ―名詞節内にモダリティ形式が生起することをどう解釈するか―」福嶋 健伸 (実践女子大学)

中世末期日本語では,現代日本語とは異なり,名詞節内にモダテリィ形式である~ウ・~ウズルが問題無く生起する。
(1) この学者を[殺さう]ことは本意無い (天草伊曽保)
(2) 今不慮の恥に[あわうずる]事わ家のため, (天草平家)
本発表では,~テイル,動詞基本形,~ウ・~ウズルによって構成される,当時のテンス・アスペクト・モダリティ体系を示した上で,上記のような現象を解釈する。

「時を表す名詞を主名詞とする名詞修飾表現について」高橋 美奈子 (四天王寺大学)

「修飾節+時を表す名詞」という名詞修飾表現としては,「内の関係」のもの (例「友人に会う日」 : 修飾節述語に対するニ格補語―事態の時を表す―に当たる名詞が修飾を受けている) と,時の相対名詞を主名詞とし,修飾節が相対的補充を行うもの (例「就職した翌年」) が知られている。しかし,そのほかの表現もあるのではないか。時を表す名詞に対して,どのような修飾 (節による修飾) が行われるのか,そのありようについて一考察を示す。

「事態の既定性と「せっかく」構文」蓮沼 昭子 (創価大学)

「せっかく」は,「ナラ」「テモ」など,「仮定的」な従属節には使用されにくいという先行研究の指摘がある (渡辺実2001) 。大規模コーパスを調査した結果,「せっかく」は,「ノダカラ」「ノニ」など,「既定的」な従属節と強い共起関係をもつことが確認された。一方,コーパスには,「(ノ)ナラ」節,「テモ」節で「せっかく」が使用された例も少なからず存在した。本発表では,「タラ・バ・ト」節では共起不可能な「せっかく」が,「 (ノ) ナラ」節では使用可能な理由や,「せっかく」が使用された「テモ」節の意味・用法の特徴について,実例の観察に基づき分析・考察を行う。