国際シンポジウム続報

報告平野 健一郎

文部省科学研究費補助金(創成的基礎研究費)「国際社会における日本語についての総合的研究」(略称 新プロ「日本語」)の今年の国際シンポジウム(「国際社会の日本語」)は,既に1996年9月20~21日,第4回国立国語研究所国際シンポジウムとの併催で,国連大学において開催されましたが,研究班2(「言語事象を中心とする我が国をとりまく文化摩擦の研究」)の一部は,都合によりそれに参加できませんでした。そこで,遅ればせながら,去る11月16日に東京大学(本郷)山上会館会議室において,「新プロ日本語」・第4回国立国語研究所国際シンポジウムの第2部として,国際シンポジウム「多言語状況における日本語の国際性」を開催しました。
このシンポジウムには,新プロ「日本語」の研究代表,水谷修国立国語研究所長もご出席下さり,冒頭にご挨拶下さった後,最後まで熱心に報告・ディスカッションを聴いて下さいました。出席者は約25人と小ぶりでしたが,海外からの報告者二人を得て,内容の濃い国際シンポジウムになりました。当日のプログラムは次のとおりです。
1) 「日本語の国際性と国際化-国際言語関係史的概論-」
平野 健一郎(東京大学教養学部)
2) 「韓国作家の日本語小説考察」
崔 在詰 (韓国外国語大学校日本研究所長)
司会兼コメンテータ一 神野志 隆光 (東京大学教養学部)
3) 「国際化のための日本語-オーストラリアからの一考察」
Ross Mouer(豪・モナシュ大学日本研究科長)
司会兼コメンテーター エリス 俊子 (東京大学教養学部)
4) 「多言語状況における日本語の言語行動」
杉戸 清樹(国立国語研究所)
司会兼コメンテータ一 西原 鈴子 (国立国語研究所)

第l報告は,国際関係における言語のありかたの歴史を大きく3期に分け,第3期,マルティリンガルな能力が評価される時期に入りつつある世界のなかで,日本語の国際性と国際化を考えるべきことを主張しました。
第2報告は,日本植民地時代に韓国作家によって書かれた日本語小説に関する綿密な資料調査と分析にもとづいたものでした。日本語小説の製作背景,小説としての特徴,その意義と特徴,問題点と評価にわたる,総合的で,バランスのとれた内容の報告からは,個人の内面における多言語状況と日本語の特性の関連について注目すべき多くの知見が提供されました。
第3報告は,日本研究,日本語教育が盛んなオーストラリアにおける豊富な教育経験と観察にもとづいた報告で,外国の日本語学習者が求める日本語が多様であるという現実から,日本語自体を多様なものとみなすべきではないか,また,日本語を母語としない人々が習得した日本語(「おかしな日本語」)の所有権は誰に帰属するかなど,刺激的な論点が提示されました。
第4報告は,研究班2の国語研グループが国内・国外各地でいよいよ本格的に実施中の調査についての中間報告で,日本語によるコミュニケーションの場面で経験される対人的な葛藤,摩擦の多様性と,言語的・社会文化的背景を把握するための調査の一つとして考案された,ビデオ剌激による面接調査の中間結果を,実際にビデオを使いながら,紹介しました。


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