「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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57.PET(ペット)  Positron Emission Tomography

(類型C)重要で新しい概念の普及を図る

 登場して間もない機械ですが,今後普及する可能性が見込まれます。重要な事物の,普及前の段階における言葉遣いにも工夫が必要です。


まずこれだけは

薬剤を体内に注射してから,特別な機械を使ってからだの中の詳しい画像をとる検査

少し詳しく

 「薬剤を体内に注射し,薬剤ががん細胞に集まるところを写す検査です。特別な機械を使って撮影します。がんの有無や位置を詳しく調べることができます」

時間をかけてじっくりと

 「ブドウ糖に似せた薬剤を体内に注射し,薬剤ががん細胞に集まるところを写す検査です。がん細胞は,通常の細胞よりも多くのブドウ糖を摂取します。その特性を利用して,薬剤が多く集まる位置を詳しく見ることで,がんの検査を詳しく行うことができます。PETとは,Positron(ポジトロン:陽電子) Emission(エミッション:放出) Tomography(トモグラフィー:断層撮影法)の略で,訳語は『陽電子放出撮影法』です」

概念の普及のための言葉遣い
  1. PETの検査装置を導入している医療機関はまだ少ないが,導入し効果を宣伝する医療機関は増えてきており,今後もその流れは続くことが見込まれ,近い将来普及に向かう可能性がある。現状では,この言葉の認知率は61.0%,理解率は33.1%であり,特に理解率は低い段階にとどまっている。丁寧な説明をすることで,言葉と知識との両方を普及できるとよい。
  2. 一般の人は,「PET」という語形や「ペット」という発音だけを見聞きすると,ペットボトルや愛玩(あいがん)動物をまず想起する。違う分野の言葉であるので,文脈によって区別できる場合が多く,混同される危険は高くない。しかし,言葉の認知度が低い現段階では,「がんPET検査」などと,言葉を補って用いると,知らない人にとっても,大体の意味が推測でき分かりやすい。
こんな誤解がある

 PET検査をすればがんのことなら何でも分かるという誤解や,PETの方がCTやMRIよりも詳しく,すべてにおいて優れているという誤解がある。料金が高く新しいPET検査に,過大な期待を抱いてしまう人に対しては,優れている点と弱点をあげて万能ではないことを説明し,誤解を解いておく必要がある。

ここに注意
  1. 検査の危険性については,次のことを伝えておく必要がある。PET検査でからだに受ける放射線の量は,胃のエックス線検査の半分程度であり,検査時に注射する薬剤は一日以内に放射能はなくなり,薬剤そのものもほとんど体外に出てしまうので,副作用の心配はない。
  2. 日本核医学会・日本アイソトープ協会から出ている『PET検査Q&A』を示して説明するのも効果的である。
©2008 The National Institute for Japanese Language