「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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56.MRI(エムアールアイ)  Magnetic Resonance Imaging

(類型C)重要で新しい概念の普及を図る

[関連] CT(シーティー)(類型B)

 現在急速に普及しつつある機械で,今後さらに普及することが見込まれます。しかし,この機械についての知識の普及は,遅れています。


まずこれだけは

特別な機械を使って,からだの中の詳しい画像をとる検査

少し詳しく

 「からだの中の断面を写す検査です。磁気を利用して,からだの中から必要な情報を拾い出し,コンピューターを使って画像にします」

時間をかけてじっくりと

 「からだの中を輪切りにしたような画像が得られる検査です。磁気を発生させた場に横たわってもらい,からだの中から信号を拾い出します。その必要な情報をコンピューターで処理すると,からだの中を輪切りにした画像をはじめ,いろいろな断面での鮮明な画像が得られます。MRIは,Magnetic(マグネティック:磁気) Resonance(レゾナンス:共鳴) Imaging(イメージング:画像)の略で,訳語は『磁気共鳴画像』です」

概念の普及のための言葉遣い
  1. MRIの検査装置は,多くの医療機関に配備されるようになり,それに伴ってこの言葉の認知率も高くなった(92.7%)。しかし,先に普及したCTによる検査との違いなど,この機械で行う検査の内容を正しく理解するところまでには至っていないと考えられる。機械の普及と合わせて,この機械による検査についての正しい知識も,普及させていくことが望まれる([ここに注意] 3. を参照)。
  2. 「MRI」のようなアルファベット略語は,一般の人にとって覚えにくい。一方,[時間をかけてじっくりと]に記した原語や訳語も,語形が長く,かえって分かりにくい。既に広まり始めたこの言葉に関しては,「MRI」の語形で普及させることが現実的である。「エムアールアイ」と明瞭(めいりょう)に発音し,[まずこれだけは][少し詳しく]に示したような表現を用いて,常に説明を言い添えるようにしたい。
  3. MRIに比べてCTの方が,なじみのある人が多い。CTを知っている人には,CTと比較したときのMRIの特徴を説明すると分かりやすい。その際,例えば,次の表のようなことを説明することが考えられる。
      MRI CT
    検査方法 横になって,機械の中に入り撮影 横になっていると機械がからだの上を通って撮影
    撮影時間 長い (所要時間を具体的に説明) 短い (所要時間を具体的に説明)
    音や痛み 大きな音がする,痛みはない 音は小さい,痛みはない
    撮影方法 磁気による情報をコンピューターで再現 エックス線による情報をコンピューターで再現
    検査費用 一般的にはCTより高額
    (費用を具体的に説明)
    一般的にはMRIより低額
    (費用を具体的に説明)
    撮影画像 解像度の高い,いろいろな方向の画像 解像度の高くない,定まった方向の画像だが,立体画像に合成できる
    向いている検査 脳梗塞(こうそく),脳腫瘍(しゅよう),血管の異常など 骨の異常,出血性の病気など
    向いていない検査 くも膜下出血
    検査をするのに配慮が必要な人 閉所恐怖症,心臓ペースメーカーを付けている人 妊娠中の人
    もとの言葉 Magnetic Resonance Imaging Computerized Tomography
    訳語 磁気共鳴画像 コンピューター断層撮影

こんな誤解がある
  1. CTよりも,MRIの方が,すべてにおいて優れていると誤解している人がいる。この誤解に基づいて,CT検査を勧めた患者が,MRIを希望する場合もある。それぞれの検査方法の長所・短所と,検査の目的について的確に説明し,目的に合った検査をすることが大切であることを伝えたい。
  2. MRIがすべての病気に有用で,すべての病気を判断できるとの誤解がある。内視鏡やCTやほかの検査が有用である場合も多く,必ずしもMRIが必要とは限らないことを説明して誤解を解く必要がある。
ここに注意
  1. MRIによる検査を初めて受ける人には,その効果や検査のときにどんな感じになるのかについて,前もって説明を行う必要がある。説明には,[時間をかけてじっくりと]に記したような表現などを利用することが考えられる。検査の最中に不快で我慢できなくなったときは,検査担当者に知らせることなどを,伝えておく必要がある。
  2. 検査の前の説明で,検査によって得られる画像の例や,検査に使う機械の実物や写真を見せて説明すると効果的である。
  3. 下の表のように,日本の医療におけるCTやMRIの普及率は諸外国に比べて非常に高い。その機械を使って行う検査の意義など知識の普及が不十分にならないようにしたい。
    医療機器の普及率(2005年,人口100万人あたり)
      MRI CT 放射線治療装置
    オーストラリア 4.2 51.1 6.0
    フランス 4.7 9.8 6.0
    ドイツ 7.1 16.2 4.7
    イタリア 15.0 27.7 5.0
    日本 40.1 92.6 6.8
    韓国 12.1 32.3 4.5
    スペイン 8.1 13.5 4.2
    米国 26.6 32.2 *

    (OECD Health Data2008より,2005年のデータ。日本のCT保有率は2002年のデータ。米国は放射線治療装置のデータなし)

©2008 The National Institute for Japanese Language