「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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51.ガイドライン 〔診療指針,標準治療〕  guideline

(類型C)重要で新しい概念の普及を図る

 いつでもどこでも最善の医療を受けることができるのは,研究成果をふまえて学会などで作られた標準的な診療指針のおかげであることを,理解してもらいましょう。またその指針に従うことの意義を理解してもらうことも重要です。


まずこれだけは

診療指針
標準治療
標準的な診療の目安

少し詳しく

 「病気になった人に対する治療の実績や,学会での研究をふまえて作られた診療の目安です」

時間をかけてじっくりと

 「治療に関して適切な判断を下せるように,病気になった人に対する治療の実績や,学会での研究をふまえて作られた診療の指針です。最新の治療法を含め多くの情報から有効性,安全性などを整理して,診療の目安を示してあります」

概念の普及のための言葉遣い
  1. 一般語の「ガイドライン」を知っている人は多いが(認知率89.6%),医療における「ガイドライン」の意味を理解している人は少ない(理解率57.0%)。また,その重要性もあまり理解されていないと考えられる。一般語の「ガイドライン」と紛れない言葉で,意味を明確に言い表すことが望まれる。
  2. [まずこれだけは]に示した,「診療指針」「標準治療」は,医療の「ガイドライン」の意味を分かりやすく言い換えた言葉である。こうした端的な言い換え語を医療者が用いることが,概念の普及に役立つと考えられる。
  3. これから処方する薬や,行おうとする治療法が,研究に基づいて学会などで定めた指針に基づいたものであることをはっきりと告げることは,患者の信頼につながり,診療指針の意義を理解してもらうことにも効果がある。その際,[時間をかけてじっくりと][患者・家族と医師の問答例]に示した説明例などを参考にするとよい。
こんな誤解がある

 ガイドラインの意義を説くことは大切だが,それを強調し過ぎることで,ガイドラインに従うことが,例外なくどんな患者にも最善であるという誤解を生むことがある(誤解率15.7%)。ガイドラインは標準を示すものであり,すべての患者に画一的な治療を行うことを推奨しているものではないことを,必要に応じて説明したい。患者の年齢,体力,好みなどによって,治療法を変える方が望ましい場合もある。

患者はここが知りたい

 患者向けのガイドラインがあることを知らない人は多い。患者向けのガイドラインがある場合は,その入手方法や見方などについて,具体的に説明を行うと親切である。

ここに注意

 医療以外の分野では,様々な場面で「ガイドライン」という言葉が使われている。国防ガイドライン,内部統制ガイドライン,個人情報保護ガイドラインなど。「指針」と大まかに訳されているが,目安から罰則を伴うものまで様々である。医療者が使う「ガイドライン」と,患者が思う「ガイドライン」は,言葉は同じでも別のことを指し示していることがあるので,注意したい。

患者・家族と医師の問答例
Q:
さっき先生が言っていたガイドラインというのはどんな意味なのですか?
A:
ガイドラインは,専門医の集まりである学会が検討を重ねて作成したものです。一番新しい信頼のおける研究結果に基づいて,患者さんに最も効果的な診療上の目安が書かれています。この目安を守ることで,医師の学習や経験によるばらつきを解消し,いつでもどこでも標準的な治療を受けられるようになります。
Q:
ガイドラインが標準的な治療の目安ということは分かりましたが,すべての患者に最高の医療なのでしょうか?
A:
ある病気の大多数に適応されるのが標準治療です。
Q:
すると,その人によって例外があるわけですね。
A:
その通りです。患者さんの体力とか年齢,そして患者さんの希望や好み(価値観)に合わせて変えることも大いにあります。
Q:
絶対に正しいというものでもないのですね。
A:
大まかに言えば正しいとは言えますが,一人一人の患者さんにすべて当てはまるものではなく,医師と患者の間をとりもつ「参考書」のようなものと考えてはどうでしょうか。
Q:
患者向けのガイドラインもあると聞きましたが。
A:
「一般向け診療ガイドライン」と呼ばれており,病気や治療法について知りたいときの手助けとなりますので,治療や検査を受ける前に予備知識として頭の中に入れておいてください。
©2008 The National Institute for Japanese Language