「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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30.うっ血(けつ)

(類型B-(2))もう一歩踏み込んで明確に説明する

[複合] うっ血性心不全(けつせいしんふぜん)(類型B)
[関連] 充血(じゅうけつ)(類型B)

まずこれだけは

血液の流れが悪くなり,とどこおってしまうこと

少し詳しく

 「からだのある部分に,静脈の血が異常に多くたまった状態のことです。血液の流れが妨げられたり,心臓の働きが弱ったりしたときに起こります。指に輪ゴムを強く巻くと,血の流れが悪くなって,紫色になる様子を思い浮かべてください。あれもうっ血している状態です」

時間をかけてじっくりと

 「からだのある部分に,静脈の血が異常に多くたまった状態のことです。静脈は血液を心臓に戻す道です。静脈が圧迫されたり詰まったりして,血液の流れが妨げられたり,心臓のポンプとしての働きが弱ったりすることが原因で起こります。漢字で書くと『鬱血』で,『鬱(うつ)』は『ふさぐ』『ふさがる』という意味です。『憂鬱(ゆううつ)』『鬱憤(うっぷん)』などに使われるときは気持ちがふさぐ意味ですが,『鬱血(うっけつ)』の場合は血管がふさがるということです」

こんな誤解がある
  1. 顔のほてりや足のむくみといった程度の現象だと軽く考えている人がいる(誤解率18.3%)。重大な病気につながる危険を理解してもらう必要がある。
  2. 「充血」と混同している人がいる(誤解率9.8%)。「充血」はある部分の動脈を流れる血が異常に増えることであるのに対して,「うっ血」は静脈の血が流れなくなってたまることである。動脈と静脈の働きを対比しながら説明すると,伝わりやすい。
言葉遣いのポイント
  1. 患者にとって,ある程度なじみのある語だが(認知率86.4%),誤解も少なくなく,正しく理解している人ばかりではない。心不全など重大な病気につながるものであることを,患者の症状に応じて明確に伝えたい。そのためには,うっ血がなぜ起こり,うっ血が起こるとどうなるのかについて,仕組みをよく説明したい。
  2. 「うっ血性心不全」(→[複合語])のような病名など,診断の結果を伝える際には特に,「うっ血」という言葉を,患者にも正しく理解してもらう必要が大きい。その場合は,[少し詳しく][時間をかけてじっくりと]に示したような表現を利用し,丁寧に説明したい。
  3. 「うっ血」の語の意味の理解には,漢字の意味を知ってもらうことが役に立つ場合がある。相手に応じて,[時間をかけてじっくりと]に示したような漢字の説明を試みたい。言葉の意味と内容が患者の頭の中でうまく結びつけば,理解は格段に深まるはずである。ただし,「鬱」の字は画数も多く難しいので,漢字の意味の説明の場面以外では,ひらがなで書く方がよい。
ここに注意

 「うっ血」の内容を理解するには,言葉だけの説明よりも,症状に応じてその部位の模式図や絵を示されると,一層分かりやすい。

複合語

うっ血性心不全(類型B)

[説 明]
 「心臓の病気の症状として現れる病気です。心臓のポンプ機能が弱くなり,からだが必要とする血液の量を心臓が送り出せなくなります。肺にうっ血が起きて,呼吸困難になったり胸水(きょうすい)がたまったりするタイプのものと,肺以外の静脈にうっ血が起きてむくみなどが現れるタイプのものとがあります」
©2008 The National Institute for Japanese Language