「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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25.対症療法(たいしょうりょうほう)

(類型B-(1))正しい意味を明確に説明する

[関連] 原因療法(げんいんりょうほう)(類型B) 根治療法(こんじりょうほう)(類型A)
 姑息的療法(こそくてきりょうほう)(類型A) QOL(キューオーエル)(類型C)

まずこれだけは

病気の原因を取り除くのではなく,病気によって起きている症状を和らげたり,なくしたりする治療法

少し詳しく

 「病気によって起きている,痛み,発熱,せきなどの症状を和らげたりなくしたりする治療法です。一時的に病気を和らげるものですので,病気そのものや,その原因を治す『原因療法』とは違います」

時間をかけてじっくりと

 「病気によって起きている,痛み,発熱,せきなどの症状を和らげたりなくしたりする治療法です。病気そのものや,その原因を治す『原因療法』とは違います。例えばがん治療の場合,苦痛となる症状を和らげることで,日々の生活を快適にすることができ,充実した時間を過ごすことに役立ちます。『対症療法』と『原因療法』とが同時に行われることも多いです」

こんな誤解がある

 耳で聞くと「タイショリョウホウ」とも聞こえ,「対処療法」と誤解している人が多い(26.8%)。症状を和らげるための治療法であることが分かるように,必要に応じて漢字で書いて示す配慮も望まれる。

言葉遣いのポイント

 「対症療法」の認知率は63.5%だが,理解率は48.2%であまり高くない。また,実際にどのような治療をし,それにどのような効き目があるのかについては,理解していない人も多いと考えられる。適切な理解につながる説明が必要である。

ここに注意
  1. 対症療法が,本来の病気の診断の妨げになったり,かえって病気を悪化させたりする場合もあることを,患者に十分に説明しておく必要がある。特に,発熱や下痢などは,ウイルスや細菌の侵入に対抗して,それらの病原体を排除しようとする防御反応でもあり,それを和らげる対症療法として,解熱剤や下痢止めを服用することは,回復を遅らせる場合もあることを患者に理解してもらう必要がある。
  2. 患者は「病気を元から治す」というと喜ぶものである。それに対して「症状を楽にする」だけの対症療法は,一時しのぎ,単なる痛み止めと喜ばないことも多い。QOL(その人がこれでいいと思えるような生活の質)(→53)をよくするために,対症療法も大変効果があることを伝えたい。また,痛み止めや解熱剤を強く希望する患者には,病気の回復の妨げになることもあることを理解してもらうと同時に,そのおそれの少ない薬物を使うことも考えたい。
関連語

根治(こんじ)療法(類型A)

[説 明]
 「病気を,その原因を取り除くことによって,根本から治すことを目指した治療法です。『原因療法』とほぼ同じ意味です」
[注意点]
 「根治」という言葉は日常語であまり使われず,「コンジ」という音から漢字を思い浮かべにくい人も多いので,「原因療法」という言葉を使う方が分かりやすい。

姑息(こそく)的療法(類型A)

[説 明]
 「病気の原因を取り除くのではなく,痛みなどの症状を和らげる治療法です。『姑息的治療』『姑息治療』などとも言います。『対症療法』と同じ意味です」
[注意点]
 日常語の「姑息」は,「姑息な手段で責任を逃れた」などと使い,マイナスイメージが強い。医療者が使う「姑息的」は,患者には悪い意味に解釈される危険があるので,患者には使わない方がよい言葉である。
©2008 The National Institute for Japanese Language