「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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22.腫瘍(しゅよう)マーカー

(類型B-(1))正しい意味を明確に説明する

まずこれだけは

がんがあるかどうかの目安になる検査の値

少し詳しく

 「がんがあるかどうかの目安になる検査の値です。がんがあると,健康なときには見られない物質が血の中に現れます。その物質があるかないか,増えているかいないかで,がんがあるかどうかの目安になるわけです。数値が高いときには,別の検査に進む目安となります」

時間をかけてじっくりと

 「がん細胞の表面には,正常の細胞では見当たらない物質があり,はがれて血液の中に流れ込みます。血液を調べてそれが見つかれば,がんにかかっていることが分かるわけです。がんの種類によってその物質は異なっており,それぞれの目安となる値が決められています。このような,がんであるかどうかを見る目印となる物質やその値のことを「腫瘍(しゅよう)マーカー」と言います。しかし,その値は個人の状態にも左右されますので,高い低いだけでははっきりしたことは言えません。したがって,数値の解釈は患者さんが自分だけで行うのではなく,医師の説明を受けて判断することが大事です」

こんな誤解がある
  1. 腫瘍(しゅよう)マーカーの値が正常値だからがんではない,がんが治ったなどのように誤解する人が多い(22.1%)。また,腫瘍マーカーが高い方が悪いがんであるなどと誤解する人もいる(12.9%)。
  2. 腫瘍マーカーの数値ががんの進行度を表していると誤解している人もいる(17.5%)。
  3. がん細胞が出す物質の方ではなく,検査に使う試薬のことを「腫瘍マーカー」というと誤解している人もいる(8.4%)。
言葉遣いのポイント

 「腫瘍(しゅよう)マーカー」という言葉の認知率は比較的高いが(64.3%),理解率はまだ低く(43.5%),意味の説明を十分に行うことが求められる言葉である。

不安を和らげる

 腫瘍(しゅよう)マーカーを万能に思って,過度に安心したり,過度に不安に思ったりする人が多いので,数値の解釈の仕方を丁寧に説明し,慎重な判断が大事であることを強調する必要がある。また,腫瘍マーカーだけに頼らず,定期的な検査をきちんと受けるように説明する必要がある。

ここに注意

 「マーカー」という言葉を目安,検査の値などの意味で用いるのは,一般の人には分かりにくいので,「がんかどうかを判定する目安」などと,説明を付けるようにしたい。

©2008 The National Institute for Japanese Language