38.尊厳死(そんげんし)
[関連] 延命処置(えんめいしょち)(類型B) 安楽死(あんらくし)(類型B)
まずこれだけは
患者が自らの意思で,延命処置を行うだけの医療をあえて受けずに死を迎えること
少し詳しく
「医師が,患者さんの人間としての尊厳を最大限に受け止め,場合によっては,ただ延命を図るだけの処置を差し控え,安らかに人生を終える選択を与えることです。何よりも,患者さんの希望を尊重します」
時間をかけてじっくりと
「患者さんが,過剰な延命処置(→[関連語])を拒否し安らかな死を望むことを,あらかじめ意思表示しておき,人間としての尊厳を保ちつつ死を迎えることです。この言葉は,医療技術の進歩が,一面で苦痛を伴う延命治療を受ける患者を生み出していることへの反省から,生まれた考え方です」
こんな誤解がある
尊厳死は,安楽死と同じことであるという誤解が多い(28.7%)。次の点で異なることを明確に伝えておく必要がある。安楽死は,末期患者の苦痛を除去し,死期を早めることを目的としている。それに対して,尊厳死は,死期の引き延ばしをやめることを目的としている。人間としての尊厳が保たれているうちに自然な死ができるようにとの考えから生まれた概念である。
言葉遣いのポイント
「尊厳死」という言葉の認知率(90.9%),理解率(87.3%)は,ともに高いが,その内容を正しく理解している人は必ずしも多くないと考えられる。患者がその理念を自分のこととして理解できるように努めたい。
ここに注意
死の迎え方は患者自身が決めるべきであるが,医師は,患者の命を救いたい思いと患者の意思決定を尊重したい思いとの板挟みで悩むことが多い。患者と医療者が十分な信頼関係を築いていることが大前提である。また,今後,社会的な議論がより必要であろう。
関連語
延命処置(類型B)
- [説 明]
- 「生物的な死の到来を延ばすための医療行為のことです」
- [注意点]
- 尊厳死を選ぶ患者とのコミュニケーションの場面では,過剰な延命処置を拒否するという文脈で使われることが普通である。そうでない患者に対してこの言葉を使う場合,延命処置には治療効果があると誤解される場合がある。このような誤解がないように,治療効果がないことや,必ずしも救命できるわけではないことを説明するようにしたい。