「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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47.ショック  shock

(類型B-(3))混同を避けて明確に説明する

[複合] 出血性(しゅっけつせい)ショック(類型B) アナフィラキシーショック(類型A)

まずこれだけは

血圧が下がり,生命の危険がある状態

少し詳しく

 「血液の循環がうまくいかず,細胞に酸素が行きにくくなった状態です。生命の危険があるので,緊急に治療が必要です」

時間をかけてじっくりと

 「血液の循環がうまくいかなくなって,脳や臓器などが酸素不足におちいり,生命にかかわる大変に危険な状態です。緊急に治療する必要があります。血圧が下がる,顔面が真っ白になる,脈が弱くなる,意識がうすれるなどの症状が現れます」

こんな誤解がある
  1. 日常語「ショック」は,単にびっくりした状態,急に衝撃を受けた状態という意味であり,患者やその家族は,「ショック」「ショック状態」と聞いても,この日常語の意味で受け取ってしまいがちである。
    • 急な刺激を受けることだという誤解(46.5%)
    • びっくりすることという誤解(28.8%)
    • ひどく悲しんだり落ち込んだりすることという誤解(23.9%)
    したがって,「ショック」「ショック状態」という言葉を使うだけで済ませてはならず,重大さや危険性の伝わる言葉を言い添えることが必要である。
  2. 「出血性ショック」(→[複合語])「アナフィラキシーショック」(→[複合語])などの複合語として聞いた場合も,患者は「ショック」の部分を日常語の意味で受け取ってしまうおそれがある。これらの場合も生命の危険があることを伝える必要がある。
混同を避ける言葉遣いのポイント

 「ショック」と言う言葉は認知率94.4%と非常に高いが,血圧が下がり生命の危険があるという意味での理解率は43.4%と極めて低い。「ショック」「ショック状態」と言っても,大事な意味が伝わらない危険性は高い。この言葉を使用する場面は,緊急事態で時間的ゆとりがないことも多い。家族に説明する際には,「ショック」という言葉は使わずに,何よりもまず生命の危険があるということを伝えなければならない。

複合語

出血性ショック(類型B)

[説 明]
 「大量に出血することで,からだの中の血液の量が足りなくなり,生命に危険が及ぶ状態になることです」
[注意点]
 この言葉の場合も「ショック」という言葉が誤解されるおそれがあるので,「大量の出血のために生命に危険があります」などのように言う方が,間違いなく伝わる。

アナフィラキシーショック(類型A)

[説 明]
 「特定の物質がからだの中に入ることによって全身に過剰なアレルギー反応が起こり,短時間で急激に血液の循環がうまくいかなくなり,生命に危険が及ぶ状態になることです。スズメバチに刺された場合や,特定の薬剤を注射された場合などに起こります」
[注意点]
 「アナフィラキシー」という言葉は,一般の人には非常に分かりにくいので,使わないようにしたい。例えば「特に症状が強い」などの表現で緊急性を示し,生命に危険が及ぶ状態であることをまず伝えた上で,その仕組みを説明したい。
©2008 The National Institute for Japanese Language