17.介護老人保健施設(かいごろうじんほけんしせつ)
[関連] 介護老人福祉施設(かいごろうじんふくししせつ)(類型B)
介護療養型医療施設(かいごりょうようがたいりょうしせつ)(類型B)
介護療養型老人保健施設(かいごりょうようがたろうじんほけんしせつ)(類型B)
まずこれだけは
病状が安定した高齢者が介護や医療を受ける施設
老健(ろうけん)施設
老健
少し詳しく
「病院での入院治療は終わったけれど,自宅での生活に戻るにはまだ支障のある人が,リハビリをしながら,介護や医療を受けられる施設です」
時間をかけてじっくりと
「病状が安定しており,入院して治療を受ける必要はない高齢者が,リハビリを中心に医療や看護・介護を受けることのできる施設です。高齢者の自立を支援し,家庭への復帰を目指します。費用は,介護保険の給付と自己負担とでまかなわれます。自宅で生活ができるようになるまでの間,一時的に入ることができます」
こんな誤解がある
- 介護保険施設の介護保険制度上の名称は,「介護老人福祉施設」「介護療養型医療施設」「介護療養型老人保健施設」など,語形が長く分かりにくいものが多い。また,制度も複雑で混乱が生じやすい現状がある。言葉と制度の分かりにくさから,区別できていない人が多い。
- マンション賃貸料金並みの費用がかかるという誤解が多い(27.2%)。また,相部屋で団体生活をする(17.7%),医療の設備は整っていない(15.1%)などの誤解もあり,どんな施設かがよく理解されていない。
言葉遣いのポイント
- 認知率は高い(89.3%)が,理解率が低く(59.6%),説明の必要性の高い言葉である。まずは,[まずこれだけは]に示した説明表現などで,大体のところを理解してもらい,必要に応じて詳しく説明したい。
- 医療・介護関係者は普通,「老健(ろうけん)施設」「老健」を略語として使っている。「介護老人保健施設」は介護保険制度上の正式名称だが,文書などでこの言葉が用いてある場合も,この分野になじみのある人に伝える場合は,上記の略語を使う方が,分かりやすい。
ここに注意
- 介護保健施設になじみのある人の間では,「介護老人福祉施設」は「特養」,「介護療養型医療施設」は「老人病院」と呼ばれることが多い。それぞれ,介護保険制度ができる以前に「特別養護老人ホーム」「老人病院」と呼ばれていたものが,そのまま残っているものである。内容の理解に誤解がなければ,これらの以前からある名称を使う方が分かりやすい。
- 「介護老人保健施設」「介護老人福祉施設」「介護療養型医療施設」「介護療養型老人保健施設」は,いずれも介護を第一の目的としているが,医療をどの程度,どのように行うかが異なっている。医療者が患者や家族に,上記の四つの介護施設を紹介する場合は,それぞれの介護施設で医療がどの程度受けられるのか,その費用負担がどのようなものであるのかについて,具体的に分かりやすく説明するのが親切である。あいまいな説明で済ませると,施設に移ってから混乱する場合があるので,注意したい。
- 「老健(ろうけん)」という言葉は,「年をとっても健康なこと」という意味で使われる場合もあり,この意味しか載っていない国語辞典も多い。介護保健施設になじみのない人は「老健」という言葉を分かりにくく感じる場合もあるので,注意が必要である。
- 「介護老人保健施設」を「老健」と略することは言葉の節約になり,分かりやすくする一つの方法ではあるが,「言葉を短くすることは,ぞんざいに扱うことに通じる」と考える人もいる。特に,自分が知らない短縮形を使われると,ばかにされたと感じる人もいるので,注意が必要である。この分野の言葉にどの程度なじみがあるかにより,短縮の程度を変える心遣いがあってもよい。
患者はここが知りたい
制度上のことでいくつかの疑問がよくある。それぞれ次のような内容を説明したい。
- Q:
- 一生入れるのか?
- A:
- 自宅で生活ができるようになったら出なければならない。
- Q:
- 費用はどのくらいかかるか?
- A:
- 介護保険による給付と,入所者の負担(給付の一割)でまかなわれる。介護保険で支払われる額は介護度により変わる。
- Q:
- 入居サービス以外にはどのようなサービスがあるのか?
- A:
- 多くの施設では1~2週間のショートステイ(短期入所,宿泊介護)と,デイサービス(日帰り介護,通所介護)を合わせて実施している。