10.予後(よご)
まずこれだけは
見通し
今後の病状についての医学的な見通し
少し詳しく
「今後の病状についての医学的な見通しのことです。病気の進行具合,治療の効果,生存できる確率など,すべてを含めた見通しです。これから病気が良くなる可能性が高いか,悪くなる可能性が高いかの見通しを指す場合もあります」
時間をかけてじっくりと
「今後の病状についての医学的な見通しのことです。治療を行った後に,病状がどのような経過をたどるのかを予測し,見通しを立てます。その判断材料には数々のものがありますので,必ずこうなるというものではなく,ある確かさを数値として表すことしかできません」
言葉遣いのポイント
- 「予後」という言葉は,一般にはあまり知られておらず(認知率52.6%),漢字から意味を類推することも難しいので,患者に対しては別の言葉で説明したい。[まずこれだけは]に記した表現などに言い換えたい。「予後が良い」と言いたい場合は「これから病気が良くなる可能性が高い」,「予後が悪い」と言いたい場合は「これから病気が悪くなる可能性が高い」などと言い換えると分かりやすい。
- 下の[ここに注意] 1. に述べるように,「予後」は,医師によって異なる意味に使われており,患者は混乱しやすい。伝える内容があいまいにならないようにするためにも,日常語で明解に言い換えることが望まれる。
ここに注意
- 「予後」という言葉を,医師は,病気の見通しという意味のほかに,余命の意味に限定して使う場合もある。例えば,「予後は六か月程度です」という言い方である。医師は,余命は六か月程度という意味で使う場合が多いだろうが,予後は見通しの意味であることを知っている患者でも,六か月程度で良くなる見通しなのか,六か月程度で亡くなる見通しなのかが分からず,大事なことが伝わらない危険性がある。大事なことがあいまいになってしまわないように,注意しなければならない。
- 余命の意味で「予後」を使うのには,「余命」という直接的な表現を避ける意図もあろう。しかし,上記のように大事なことが伝わらない場合は,婉曲(えんきょく)表現は逆効果になることもある。「あとどれぐらい元気でいられるかというと・・・」などのように言うことが考えられる。
患者はここが知りたい
病気について説明を受ける患者が,自分にとって最善の医療を選択するためには,病気の見通しを明確に理解することが極めて重要である。病気がこれからどうなっていくのか,良くなるのか,悪くなるのか,悪くなるとしたらどういう状態になるのか,といったことを具体的に説明する必要がある。