3.寛解(かんかい)
[関連] 治癒(ちゆ)(類型B) 増悪(ぞうあく)(類型A)
まずこれだけは
症状が落ち着いて安定した状態
少し詳しく
「症状が一時的に軽くなったり,消えたりした状態です。このまま治る可能性もあります。場合によっては再発するかもしれません」
時間をかけてじっくりと
「病気の症状が一時的に軽くなったり,消えたりした状態です。このまま再発しないで,完全に治る可能性もあります。しかし,場合によっては再発する可能性もまだあるかもしれません。再発しないようによく様子を見ていただく必要があります。ですから,定期的に検査を受けたり,薬を飲んだりしてください」
こんな誤解がある
病気が完全に治った状態だと誤解されやすい。一時的に症状が軽くなったり消えたりしているのであって,治ったわけではないことを,伝える必要がある。
言葉遣いのポイント
- 一般の人はふだん見聞きしない言葉であり(認知率13.9%),耳で聞いても漢字が思い浮かばず,漢字を見ても意味が推定できない難しい言葉である。患者に対して不用意に「寛解(かんかい)」という言葉を使わないようにしたい。
- ネフローゼ症候群(腎臓(じんぞう)の働きが悪くなり血液中のタンパク質が尿として出てしまう病気)やがんなど長期間の治療に取り組んでいる患者で,病状や治療について理解が深まっている場合は,「寛解」という言葉を使ってより正確な説明を行うことが望まれる。その場合は,時間をかけて次のような工夫を行い,意味や概念をきちんと伝えることが大事である。まず,漢字を書いて,病気が一時的に寛(ゆる)くなり解(と)けたような状態になることを意味していることを伝えたい。また,完全に治ることを表す,「治癒(ちゆ)」という言葉と対比して説明したい。
- 寛解の状態は,このまま治る可能性もあるし,再発する可能性もある。医療者の説明で,どちらの側面がニュアンスとして強く現れるかによって患者の印象は大きく違ってくる。安心感を与えたいときは治る可能性の方に重点を置いた説明をし,油断をさせたくない場合は再発する可能性の方を強調するなど,患者の状況に応じて,説明の仕方を工夫することも大切である。
ここに注意
- ネフローゼの場合,ぜん息の場合,がんの場合,白血病の場合など,病気に応じて説明の仕方を変える必要がある。
- 時間をかけてじっくり説明する場合は,次のような図示により,「治癒(ちゆ)」「増悪(ぞうあく)」(→[関連語])などの関連語も合わせて説明すると分かりやすい。
関連語
増悪(ぞうあく)(類型A)
- [説 明]
- 「病状がますます悪くなることです。一時的に良くなった状態からまた悪くなることを『再発』『再燃』と言いますが,『増悪』はもともと悪かった状態がもっと悪くなることです」
- [注意点]
- 「増悪」という字面を見ると,「憎悪」からの類推で「ぞうお」と読んでしまう間違いも起こりがちである。「増す増す悪くなる」と解けば分かりやすいが必要以上にショックを与えてしまうおそれもあり得る。「寛解(かんかい)」と同様,特別に患者に覚えてもらう必要がある場合以外は,日常語で言い換えたい言葉である。