4.「病院の言葉」を分かりやすくするための工夫の類型
2.で述べた患者に言葉が伝わらない原因と,3.で述べたその問題を解決するための対応をまとめると,次のようになります。
図 「病院の言葉」を分かりやすくする工夫の類型
以下,この提案では「分かりやすく伝える工夫」の類型ごとに,代表的な言葉を取り上げて,言葉遣いの具体的な工夫について記していきます。取り上げる言葉の選定は,各種調査結果のデータ分析11と,委員会での議論を通して行いました。類型A,類型Bは,言葉を五十音順(アルファベット略語は最後)に配列し,類型Cはテーマ別に並べました。関連して説明すると効果的な言葉を一緒に扱いました。心理的負担を軽減する言葉遣いについては,本提案の守備範囲を超える課題ですが,この側面への対応が特に必要になる言葉には,[不安を和らげる]という項目を立てて,個別の対応方法を示すことにしました。
なお,同じ言葉でも,相手や場面によって,適切な言い換えや説明の方法は異なってきます。場合によっては,別の類型で対応する方が効果的な場合もあります。例えば,診療の段階が進み,治療に積極的に取り組み病気や治療についての情報を自ら進んで集めている患者には,本提案で類型Aに入れた言葉を,類型Bの扱いをして,積極的に専門用語を用い,明確に説明を与えることが効果的になる場合があるでしょう。反対に,本提案で類型Bに入れた言葉を類型Aの扱いにして,その言葉を使わないで説明した方がよい場合もあると考えられます。患者の理解力や病状,心理状態などを見極め,そのときそのときに最もふさわしい工夫を行うことが大切です。
11 ここの調査データとは,医師に対する問題語記述調査,医療者に対する用語意識調査,非医療者に対する理解度等の調査,の三つを指します。詳しくは,「Ⅳ.検討の経過」を参照してください。