6.最終報告の発表と市販本の刊行
6.1 最終報告のとりまとめ
中間報告に対して寄せられた意見をふまえ,言葉別の記述を部分的に修正することから,最終報告のとりまとめに着手しました。提案の基本的な部分に対する異論は少なかったので,分かりやすくするための工夫の類型や具体例の雛形(ひながた)など,提案のおおもとになる部分は,中間報告からほとんど変更しませんでした。また,報告書全体をもう一度見直し,部分的に補正しました。さらに,中間報告に寄せられた意見とそれへの対応をまとめた章を追加しました。こうして,平成 21年3月7日に最終報告を発表しました。その内容は,ホームページに掲載し,中間報告に対して意見を寄せてくれた機関や個人に,報告書を送付しました。
6.2 市販本の編集
最終報告書は,委員会の活動の全体を報告するためのものですが,その内容をもとに医療現場で使いやすい形に編集した市販本を刊行することにしました。市販本では,その目的に合わせて,この報告書のなかの報告的色彩が強いところを削減し,現場で役立つ情報を増補しました。
この報告書の「Ⅳ.検討の経過」は簡潔に書き改め,「Ⅴ.中間報告に寄せられた意見」を削除したものを,市販本の原稿の基本としました。市販本で増補したのは,挿絵やコラムです。挿絵は,医療者が患者に説明する際に役立つものを,特に必要だと考えた14語について作成し掲載しました。コラムは,「コミュニケーション」「言葉」「診察室から」「調査」「中間報告に寄せられた意見」の五種類に分け30編を執筆し掲載しました。このうち「コミュニケーション」「言葉」「診察室から」は,委員の問題意識に基づいて分担して執筆しました。また「調査」「中間報告に寄せられた意見」は,この最終報告書の「Ⅳ.検討の経過」「Ⅴ.中間報告に寄せられた意見」に記載した内容を簡潔にまとめ直しました。
市販本を編集するには,報告書の作成とは違った作業をいろいろと行う必要が出てきました。そこで,本作りを目的とした「編集部会」を,実務委員会の中に置くことにしました。実務委員会が最終報告書の作成作業を進めたのとほぼ同じ時期である,平成20年11月から12月にかけて,編集部会を四回開催しました。編集部会では,出版社の編集者を交え,本の体裁や紙面のデザインの検討,イラストの作成,コラムの企画や執筆などを行いました。年が明け平成21年1月に,編集部会で作成したこの本のゲラを,実務委員会と全体会とで検討し内容を確定し,最終報告の発表とほぼ同時に刊行しました。
国立国語研究所「病院の言葉」委員会 編著
『病院の言葉を分かりやすく―工夫の提案―』
勁草書房,平成21年3月12日発行,A5判264ページ,定価 本体2,000円+税