3.3 医師に対する問題語記述調査
医師が患者とのコミュニケーションで問題に感じている言葉と,その言葉をめぐる具体的なできごとや場面を広く収集し,問題の類型の整理に役立てることを目指して実施しました。インターネット上に調査の専用ページを置き,問題に感じる言葉と,患者に通じなかったときの具体的なできごとや,伝わるように工夫していることなどを書き込んでもらいました。
まず,医師451人に対して,メールへの単純回答を求める「リクルート調査」を実施し,364人からの回答が得られました。「リクルート調査」に回答した364人の中から,詳細な調査に協力する意向を示し,詳しい回答をした300人を選び,二週間の期間中に随時回答を書き込んでもらう,「カレンダー調査」を実施したところ,180人から回答が得られました。それぞれの調査の主要な質問文は次の通りです。
[リクルート調査での質問文]
問1. あなたが患者やその家族とコミュニケーションする際に,理解してもらうことが難しいと感じたことがある言葉を,三つまでお答え下さい。
問2. 問1で回答した言葉について,あなたが,何か注意していること,工夫していることがあったら,自由にお書きください。また,その理由についてもお書きください。
[カレンダー調査での質問文]
問1. あなたや同僚が患者やその家族とコミュニケーションする際に,理解してもらうことが難しいと感じたことがある言葉を,一つ挙げてください。
問2. そのときのできごとについて,できるだけ具体的にお書きください。
問3. その言葉について,あなたが,何か注意していること,工夫していることがあったら,自由にお書きください。また,その理由についてもお書きください。
二つの調査を合算すると,約800語,約1,500件の情報が集まりました。この800語を,語彙選定のためのリストに加えました。
コーパス調査(用語集調査を含む)と,医師に対する問題語記述調査によって集めた20,000語余りの言葉のリストから,①コーパスでの難解度・重要度が高い,②収録される医療用語集が多い,③医師が問題語としてあげている,の三つの指標を組み合わせ,約2,000語を抽出しました。この約2,000語のリストを,詳しく検討する言葉を選定するためのリストとしました。
なお,医師に対する問題語記述調査で医師が書き込んだ多様なコメントは,「Ⅱ.『病院の言葉』を分かりやすくする工夫の類型」で述べた,問題の類型化の材料にも使いました。