「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

設立趣意書
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3.2 言葉の頻度調査(コーパス調査)

 「コーパス」とは,電子化された大量の言語資料を指す言語学の専門用語です。大量の言語データを定量的に分析することで,言語の諸相を解明することを目指す「コーパス言語学」という研究分野があります。この分野の手法を用いて,一般の人にとって難解な医療用語,重要な医療用語を抽出する調査を実施しました。
 医療媒体で使われている言葉と,一般媒体で使われている言葉とを,その使用頻度で比較することによって,医療媒体に特徴的な語彙が抽出できます。こうして抽出された言葉は,医療の専門用語であると考えられます。この専門用語の中には,一般の人にほとんどなじみのない専門度の高いものから,ある程度なじみがあり専門度の比較的低いものまで,多様な段階のものがあります。専門度の高いものは難解に感じられ,専門度の低いものはそれほど難解に感じられないと考えられます。この専門度すなわち難解度を測るために,二種類の頻度比較を行いました。

(1) 医療媒体における頻度と一般媒体における頻度を比較し,「分野の専門度」を測定
(2)専門家向け医療媒体(医療者が読む雑誌など)における頻度と,一般人向け医療媒体(一般人向けの医療情報誌,新聞の医療面,インターネットの患者向け情報など)における頻度とを比較し,「読者の専門度」を測定

 この測定の結果をもとに,「分野の専門度」と「読者の専門度」が高い言葉ほど「難解度」の高い用語と見なしました。
 次に,一般の人にとって重要な医療用語の抽出を行いました。一般人向け医療媒体によく使われている言葉は,理解する必要に迫られる機会が多いので,重要な言葉だと扱うことができると考えました。よく使われていると言う場合,繰り返し使われている使用回数の多さと,いろいろな話題で使われている使用範囲の広さと,二つの場合がありますので,「使用回数」と「使用範囲」の二つの指標でこれを把握することにしました。この二つの指標が高い言葉ほど,「重要度」の高い医療用語と見なしました。
 この方法によって,一般人にとって難解で重要な医療用語20,000語余りについて,難解度・重要度の段階を付したリストを作成しました。
 コーパスによって頻度を指標に言葉を抽出し段階を付ける方法は,一度に大量の言葉を扱える利点がある反面,難解さや重要さ以外で頻度に反映する要因によって,目的外の言葉を抽出したり,目的とする言葉を漏らしたり,段階の判定の信頼度を低下させるといった欠点もあります。この欠点を補うために,一般人向けに編集された医療用語集の見出し語調査を実施しました。医療用語集は,一般の人々が理解しておく必要がありながら,解説が必要な言葉を集めたものであると考えられます。それらを集めることによって,一般人にとっての重要語・難解語に近い言葉が得られるものと考えました。収録語数が多く,信頼性が高いと認められた二十数種類の医療用語集に収録されている言葉を,その掲載数とともにリストに加えました。

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