1.「病院の言葉」委員会の設立
医療者から患者に伝えられる言葉の問題を把握し,問題を改善する方法を検討していくには,調査を行ってデータを収集・分析することと,問題に精通している専門家同士で議論する場を設けることが必要だと考えました。そこで,いくつかの調査を実施し,その調査によって得られたデータを材料にしながら専門家が議論する場として,「病院の言葉」委員会を設立することにしました。まず,平成19年4月に準備委員会を設け,本格的な検討のための予備的な議論と調査に着手しました。半年後の10月には「病院の言葉」委員会を正式に設立し,10月31日に第一回委員会を開催しました。
「病院の言葉」委員会は,医師・薬剤師・看護師など医療の専門家,患者支援や医事紛争などの領域で活動している専門家,言語学・日本語学やコミュニケーションの専門家,報道機関で分かりやすい言葉を追求している専門家など,24名によって構成しました。委員全員で集まる場では,全般的な活動方針や提案の枠組みを検討することにしました。そして,提案に取り上げる言葉の選定や提案内容の作成といった実務を担当する15名からなる「実務委員会」を,委員会の内部に設けました。さらに,調査の実施や調査データの整備などを担当する7名の委員からなる「作業部会」を,実務委員会の中に置きました。
全体で集まる会議は半年に一回程度,実務委員会は二か月に一回程度,作業部会は随時開催しました。委員が集まって議論し,資料を持ち帰って検討し,考えた結果を記入した資料を提出し,それを集約し議論のたたき台を作成し,また議論を重ねるというやり方で,検討を進めました。作業部会の検討結果は実務委員会に報告され,実務委員会の検討結果は全体の委員会に報告され,検討の成果を積み上げていきました。中間報告書や最終報告書,市販本をまとめる段階では,会議の頻度を増やし,集中してとりまとめに当たりました。