「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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設立趣意書

国立国語研究所「病院の言葉」委員会 設立趣意書

独立行政法人国立国語研究所
平成19年10月15日

患者が自らの医療を選ぶ時代

 現代の社会では,個人の価値観が尊重され,国民一人一人が生活に必要な情報を自ら集め,理解し,判断することが重要になってきています。これまでは,専門家の判断に任せがちであった事柄についても,自らの責任において決定することが求められる社会に変わってきています。とりわけ,病院・診療所で診療を受ける場合には,患者が病状や治療について医師や看護師など医療者から十分な説明を受け,理解し,納得したうえで自らにふさわしい医療を選択することが大切です。

患者には病院の言葉は分かりにくい

 ところが,病院や診療所に足を運んだ患者は,医療者の話す言葉の内容や,ポスターやパンフレットなどに書かれた事柄を十分に理解できないことが,しばしばあります。そこには,病気になったりけがをしたりする前には見聞きすることのなかった,なじみのない分かりにくい言葉がたくさん出てくるからです。国立国語研究所が平成16年に実施した調査では,八割を超える国民が,医師が患者に話す言葉の中に,分かりやすく言い換えたり,説明を加えたりしてほしい言葉があると回答しています。

医療者は分かりやすい言葉による説明を

 このように,医療者が使う言葉を患者が理解できない現状では,患者が十分に納得したうえで,自ら受ける医療について決定することは容易でありません。患者が的確な判断をするためには,何よりもまず専門家である医療者が,専門家でない患者に対して,分かりやすく伝える工夫をすることが必要です。医療者が分かりやすく伝えようと努力することにより,患者の理解しようとする意欲も高まるはずです。医療の安心や安全は,医療者と患者との間で情報が共有され,互いの信頼が形成されることによって,初めて達成されるものと考えます。

分かりやすい説明の指針

 この委員会では,まず,患者がどのような言葉を分かりにくいと感じ,どのような誤解をしているのか,病院・診療所で使われる言葉の問題がどこにあるのかを把握します。そして,それに基づいて,医療者が患者に説明する際に,誤解を与えず分かりやすく伝えるには,どのような言葉や表現を選べばよいのか,そのための具体的な工夫について検討し,提案します。この提案が,医療者による分かりやすい説明の指針となり,ひいては患者やその家族の的確な理解を助ける手引きとなれば幸いです。

©2008 The National Institute for Japanese Language