行く(いく)

移動を表す動詞
活用表 1グループ 平板型
コアイメージ
語義リスト ・慣用表現
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1《目的地への移動》人・乗り物が、話者のいる(または注目する)場所から目的地(の方向)に移動する。
2《目的のための移動》人・乗り物が、何らかの目的のために話者のいる(または注目する)場所から移動する。
3《特定の方向への移動》人・乗り物が、話者のいる(または注目する)場所から特定の方向に向かって移動する。
4《経路を遠くに移動》人・動物・乗り物が、話者のいる(または注目する)場所から遠くに移動する。
5《経路内の位置を移動》人・乗り物が経路の中のある位置を、話者のいる(または注目する)場所から遠くに移動する。
6《進歩の先行》物事が進歩の過程の先を進む。
7《通勤・通学》人が何かの組織に所属し、そこへ通う。
8《組織への所属》人が何かの組織に所属する。
9《関心の向き先》関心が特定のものに向く。
10《情報の伝達》知らせなどが話者のいる(または注目する)場所から遠くへ伝えられる。
11《特定の集団に所属》人が家族、または家族に類する集団の一員となる。
12《順調な進行》事態が望ましい結果が得られる方向に進む。
13《目的達成方法の選択》人が望ましい結果が得られる方法を考えて実行する。
14《攻撃》人が敵を攻める。
15《特定の方向への進展》事態がある方向に向かって、進む。
16《特定の水準への到達》値がある水準に達する。
17《進路の選択》人がある生き方を選ぶ。
18《年月の経過》年月が過ぎる。
19《老齢化》人・動物が年をとる。
20《死去》人・(大切に思っている)動物が死ぬ。
21《納得》理解できない状況から望ましい(理解できる)状況に変化する。
22《道理との矛盾(容認不可)》わけにはいかない=することはできない
慣用表現 1月は行く、2月は逃げる、3月は去る、天馬空を行く(がごとし)、行きはよいよい(帰りはこわい)
全体解説
複合語
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1 《目的地への移動》
自動詞 初級 ★★★ 表記いく、行く
人・乗り物が、話者のいる(または注目する)場所から目的地(の方向)に移動する。
類義語向かう、出かける
反義語来る
文型
〈人・乗り物〉が〈目的地〉に[へ・まで]行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
太郎はバイクでスーパーに行った
左折して裏道を行けば早く着くよ。
太郎はトイレに行っている。
間に合わない。早く行け
営業の田中は、毎週、上司と東京へ行く
このバスは隣町までしか行きません。
友だちと広島に行こうかと思っています。
コロケーション
〈目的地〉に[へ・まで]行く 必須項
洗面所、学校、病院、東京、外国
この七年間、全然病院に行っていないんですよ。 (辺見庸著 『新・屈せざる者たち』, 2000, 914) コーパス
景色を見ながら、のんびりと歩いてJR水郡線の布袋駅まで行くのだ。 (清水義範著 『私は作中の人物である』, 1993, 913) コーパス
私は今、本当に学校へ行くのが毎日楽しいです (高木俊一郎編 『学校へ行きたい・行けない・行きたくない』, 1993, 371) コーパス
〈乗り物〉で行く
車、バス、電車、地下鉄、飛行機
来週、旭川に2泊して車で富良野、美瑛に行く予定です。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 国内) コーパス
〈人〉行く
友だちと、先生と、上司と、家族で、ひとりで
神戸の河合さんと湯河原へ行くのだ。 (新藤兼人著 『愛妻記』, 2000, 778) コーパス
〈様態〉行く
のんびり(と)、急いで、慌てて
急いで電話口へ行き、受話器を取り上げた。 (シドニィ・シェルダン著;天馬龍行訳;紀泰隆訳 『血族』, 1993, ) コーパス
〈経路〉を(通って)行く
国道、海沿いの道、バス通り、町中
〈起点〉から行く
自分の家、会社、学校、病院、東京
東京から山形まで高速バスで行きます。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 国内) コーパス
〈頻度〉行く
毎日、週に2回、毎週末、毎月、2年に一度
〈時点〉から行く
3時、午後、明日、来週
昨日は、午後から新宿の治療院に行ってきました。 (Yahoo!ブログ, 2008, 季節) コーパス
〈時点〉行く
3時に、午後、明日、来週
5時にH書店に行くためには、パークを4時40分には出なければいけません。 (Yahoo!ブログ, 2008, 乗り物) コーパス
非共起例
〈人〉に[へ・まで]行く
友だちへ行く
友だちのところへ行く
「〈目的地〉に[へ・まで]行く」という場合の〈目的地〉は〈場所〉でなければならず、〈人〉をそのまま〈場所〉として扱うことはできない。
〈職業名〉も同様で、
先生に行く。
美容師に行く。
とは言えないが、例外的に
医者に[へ、まで]行く。
は自然であり、
病院に[へ、まで]行く。
と同様に一般的に使われる。
〈もの〉に[へ・まで]行く
窓に行く
窓の側に行く
「〈目的地〉に[へ・まで]行く」という場合の〈目的地〉は〈場所〉でなければならず、「〈もの〉に[へ、まで]行く」とは言えない。
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2 《目的のための移動》
自動詞 初級 ★★★ 表記いく、行く
人・乗り物が、何らかの目的のために話者のいる(または注目する)場所から移動する。
類義語出かける
反義語来る
文型
〈人〉が〈目的〉に行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
昨日は家族と食事に行きました。
寒いところに旅行に行くなら、カイロを持っていくといいですよ。
アルバイトに行かなければならないのに、風邪をひいてしまった。
次郎を保育園に迎えに行ってもらえませんか。
勉強もしないで友達と遊びに行ってはいけません。
明日、図書館に本を借りに行こうと思っています。
コロケーション
〈目的〉に行く 必須項
旅行、仕事、食事、面接、散歩、買い物、遊び、買い
みんなで遊びに行きましょう! (Yahoo!ブログ, 2008, 日本) コーパス
昨日仕事の仲間同士でカラオケに行きました。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 恋愛相談、人間関係の悩み) コーパス
十社近く面接に行った。 (松原惇子著 『いい女は頑張らない』, 1990, 159) コーパス
昨日、主人と新潟旅行に行って来たの。 (船瀬俊介著 『ほのぼの奥さんかしこい暮らし』, 1993, 590) コーパス
〈目的地〉に[へ]行く
スーパー、公園、図書館、東京、外国
いつもはスーパーにお買い物に行く程度なので、久しぶりのドライブでした。 (Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ) コーパス
〈交通手段〉で行く
自転車、車、バス、電車、タクシー
昨日の夜7時(現地時間だから、日本時間だと夜中の2時頃)に、ヘルシンキから寝台列車で、12時間かけて、ロバニエミへ家族旅行に行った。 (Yahoo!ブログ, 2008, 家庭) コーパス
〈人〉行く
友達と、家族と[で]、二人で、太郎と一緒に
「昨日、徐さんと日本橋へ買物に行ったのですが」 (谷崎光著 『中国てなもんや商社』, 1996, 335) コーパス
〈頻度〉行く
毎日、週に2回、毎週末、毎月、2年に一度
ほぼ毎日買い物に行っていた時は3万では足りませんでした。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 家計、貯金) コーパス
〈様態〉行く
のんびり(と)、急いで、慌てて
〈時点〉から行く
3時、午後
今日も子供は朝から夏期講習に行きました。 (Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ) コーパス
〈時点〉行く
3時に、午後、明日、来週
この前、好きな人と食事に行きました。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 恋愛相談、人間関係の悩み) コーパス
解説
「語義1」が〈場所(目的地)〉を目指して移動する点に注目した用法であるのに対し、この「語義2」は、目的を果たすために移動するという、〈目的地〉への移動理由に注目した用法である。
誤用解説
スーパー買い物に行った。
図書館に本を借りに行った。
のように、「〈目的地〉に〈目的〉に行く」というパターンは自然である。しかし、同じ「〈目的地〉に〈目的〉に行く」というパターンであっても、〈目的地〉が何らかの〈組織〉でもあり、そこに所属して通う場合には、〈目的地〉と〈目的〉を一緒に用いるのは不自然である。すなわち、
来春から太郎は小学校勉強に行く。
卒業したら花子は銀行働きに行く。
は不自然で、その場合、
来春から太郎は小学校に行く。
卒業したら花子は銀行に行く。
のほうが自然となる。
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3 《特定の方向への移動》
自動詞 初級 ★★★ 表記行く、いく
人・乗り物が、話者のいる(または注目する)場所から特定の方向に向かって移動する。
類義語向かう
反義語来る
文型
〈人・乗り物〉が〈方向〉に[へ]行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
駅を出て左に行っても店は何もない。
次の角を右に行くとスーパーがある。
京都方面に行きたいのですが。
前の車がウインカーを出している。右に行くようだ。
ここから西へ1キロばかり行くと、海に出ます。
邪魔だよ。もうちょっと右へ行って
コロケーション
〈方向〉に[へ]行く 必須項
右、東、山側、奥、~の向こう、~の前
京阪電鉄大谷駅を東へ行き、少し入った高速道路の上に碑だけが建っている。 (網谷りょういち著 『日本の鉄道碑』, 2005, 686) コーパス
〈起点〉を[から]行く
角、交差点、目印となる場所(コンビニ、郵便局など)
環八で練馬方面から横浜駅に行きたいのですが、どのように行けばよろしいのでしょうか? (Yahoo!知恵袋, 2005, 交通、地図) コーパス
〈距離〉行く
100メートル、1キロ、少し、かなり
塔頭寺の間の県道を西へ1kmばかり行くと道標がある。 (兵庫県高等学校教育研究会歴史部会編 『兵庫県の歴史散歩』, 1990, 291) コーパス
〈様態〉行く
まっすぐ(に)
〈時間〉行く
10分、1時間、少し、かなり
解説
「語義1」が〈目的地〉へ向かう移動を表すのに対し、この「語義3」は〈目的地〉が明確には意識されておらず、特定の〈方向〉へ向けた移動であることに注意が向けられている。
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4 《経路を遠くに移動》
自動詞 初級 ★★★ 表記いく、行く
人・動物・乗り物が、話者のいる(または注目する)場所から遠くに移動する。
類義語通る
文型
〈人・動物・もの〉が〈経路〉を行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 △ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
にぎやかな通りを当てもなく行くと、大きな広場に出た。
住宅街の中をのんびり自転車で行くと、大きな建物があった。
知らない男が足早に廊下を行くのを見た。
町を行く女の子たちのファッションが春らしくなってきた。
ヌーの大群が草原を行く
高速道路を行く車が玉突き事故を起こした。
コロケーション
〈経路〉を行く 必須項
通り、町、林、草原、空
その湖に沿って温泉街を行くと、矢田屋が現れます。 ( 『Me´nage kelly』, 2003, ) コーパス
ここで左折し、コリドー通りを行く。 (鈴木謙一著 『江戸城三十六見附を歩く』, 2003, 291) コーパス
〈様態〉行く
ゆっくり(と)、のんびり(と)、急いで、あてもなく、まっすぐ
この道をまっすぐ行くと四つ角がある。 (野田知佑著;藤門弘写真 『世界の川を旅する』, 2001, 290) コーパス
靴音を忍ばせながら、早足で廊下を行く。 (藤川桂介著 『霧の伝説』, 1991, 913) コーパス
〈交通手段〉で行く
自転車、車、バス、電車、タクシー
〈人〉行く
友達と、家族と[で]、二人で、太郎と一緒に
非共起例
〈人・動物・乗り物〉が行く
太郎が廊下を行った。
飛行機が空を行った。
太郎が廊下を通って行った。
飛行機が空を飛んで行った。
「行く」が使えるのは、単に遠くへの移動であることを表す場合であり、特定の場所へ向けての移動〈経路〉が意識されるような場合には「通る」「飛ぶ」などが使われる。
解説
「語義1」が〈目的地〉への移動、「語義3」が〈方向〉への移動を表すのに対し、この「語義4」は、特定の〈目的地〉へ向かうわけでもなく、また、特定の〈方向〉へ向かうわけでもない。何らかの〈経路〉を通り遠くへ移動することを表す。
話者自身が〈目的地〉や〈方向〉が定まらないままに移動する「例文①」「例文②」や、集団の成員それぞれの〈目的地〉や〈方向〉にはずれはあるが、およそ同じ経路を通って遠くへ移動する「例文④」から「例文⑥」のような場合に「行く」が使えるのは、この「語義4」による。
この「語義4」の〈人・動物・乗り物〉は、集団(例:ヌーの群れ、女性たち)である場合が多い。
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5 《経路内の位置を移動》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
人・乗り物が経路の中のある位置を、話者のいる(または注目する)場所から遠くに移動する。
類義語進む、走る、歩く
反義語来る
文型
〈人・乗り物〉が〈位置〉を行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
前を行く車が急にブレーキを踏んだ。
足の遅い太郎を先に行かせた。
(マラソンで)先頭を行く集団が急にスピードを落とした。
すぐ前を行く太郎が急に振り返った。
後から出発した登山隊が、もう一つの隊のかなり前を行くのが見えた。
かなり先を、女の人が足早に行くのが見えた。
コロケーション
〈位置〉を行く 必須項
前、10メートル先、先頭、最後尾、~の後、~の前
かなり先を女の人が行く。 (松岡弘一著 『利己的殺人』, 1993, 913) コーパス
響木の前を行くランニングシャツの男が、徐々に下がりはじめた。 (斎藤純著 『銀輪の覇者』, 2004, 913) コーパス
〈様態〉行く
猛スピードで、ゆっくり、のろのろ(と)、時速100キロで
解説
「語義4」が「遠くに移動」することを表すのに対し、この「語義5」は、「遠くに移動」する経路上の特定の〈位置〉にいることを表す。
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6 《進歩の先行》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
物事が進歩の過程の先を進む。
類義語進む
文型
〈人・組織〉が〈位置〉を行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 × 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
田中は佐藤の上を行くやり手だ。
我が社はこの分野では、世界の最先端を行っている。
同期入社の中で先頭を行っているのは太郎だ。
時代の最先端を行く人材を養成することを目的としている。
人より一歩先を行く者が何かを発見できる。
勉強では、太郎より上を行きたい。
コロケーション
〈位置〉を行く 必須項
位置:上、先頭、前、最先端、先
期間:数か月先、1年先、10年前、少し先、かなり前
この情報システムによって、ロッフ社はいつも時代の先端を行くことができた。 (シドニィ・シェルダン著;天馬龍行訳;紀泰隆訳 『血族』, 1993, ) コーパス
〈様態〉行く
ただ一人
〈比較対象〉より行く
人、太郎、A社、同業他社、競争相手、同級生
非共起例
〈位置〉を行く
太郎は次郎のを行く。
太郎は次郎のにいる。
〈位置〉は、進歩の過程上の先の位置を表すものでなければならない。
解説
「語義5」が空間的な移動の経路上の位置を表すのに対し、この「語義6」は、抽象的な意味での移動の経路上の位置を表す。
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7 《通勤・通学》
自動詞 初級 ★★★ 表記いく、行く
人が何かの組織に所属し、そこへ通う。
類義語通う
反義語来る
文型
〈人〉が〈組織〉に[へ]行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
来年から太郎は小学校に行く
塾に行かなくても勉強はできる。
大学卒業後は、地元の役所に行くことになりました。
太郎は東京の大学に行っている。
本社に行くことができたら、出世は間違いない。
下の子を、習字に行かせることにした。
しかし、授業料はかかっても、あえて子どもを私立の小学校や中学校に行かせる家庭もあります。
コロケーション
〈組織〉に[へ]行く 必須項
幼稚園、学校、習い事(塾、習字、ピアノ)、会社
サッカー、サッカーって言って、塾にも行かないんだし…。 (河野礼子作;尾崎曜子絵 『ぼくらのじぐざぐドリブル』, 1996, ) コーパス
〈頻度〉行く
毎日、一日おきに、週に3回、月に2回
〈時期〉から行く
来週、月曜日、来月、4月、来年
〈期間〉行く
3日間、3年間
非共起例
〈組織〉に[へ]行く
父は学校に行っている。(勤務しているという意味では不自然)
父は学校で働いている。
多くの人にとって「学校」は「勉強するところ」であり、「働くところ」ではないから、学校に行くは、学校で勉強することを意味する傾向が強い。
解説
「語義1」が〈目的地〉への移動を表すのに対し、この「語義7」は、〈目的地〉となる組織に属し、そこに通うことを表す。
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8 《組織への所属》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
人が何かの組織に所属する。
類義語入る
反義語来る、出る、帰る
文型
〈人〉が〈組織〉に[へ]行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
夢は大リーグに行くことだ。
抜擢されて、開発チームに行くことになった。
罪を犯して刑務所に行く
来年の春から軍隊に行くことになりました。
ここにいるより、避難所に行ったほうが安全だ。
難民となった人々には、キャンプに行くより他に選択肢がなかった。
コロケーション
〈組織〉に[へ]行く 必須項
組織:大リーグ、Aチーム、プロジェクト、委員会
生活場所ともなる組織:刑務所、少年院、軍隊、収容所、避難所
「どう考えてもおまえは泥棒か何かになって、刑務所に行くだろうと思っていた」 (司馬遼太郎著 『司馬遼太郎全講演』, 2003, 914) コーパス
〈時期〉から行く
4月、来年、今
〈時期〉まで行く
来月、来年
〈期間〉行く
1年間、3年間、当面の間
うっかり人をはねてしまっただけで、10年も刑務所に行くなんて嫌だ。 (Yahoo!ブログ, 2008, 季節) コーパス
〈組織〉から行く
日本のプロ野球、○○課
非共起例
〈組織〉に[へ]行く
太郎はバレーボール部に行った。
太郎はバレーボール部に入った。
次郎は茶道部に行った。
次郎は茶道部に入った。
この場合の〈組織〉は、その〈組織〉に所属することによって、社会的立場や組織内での役割が変更するような〈組織〉である。例文①の場合には「日本のプロ野球」から「大リーグ」へ、例文②の場合には、「ある部署」から「開発チーム」へ、例文③の場合には「一般市民」から「服役中の人」へ、というように、それぞれ立場や役割が変更されている。
解説
「語義7」が組織に所属して通うことを表すのに対し、この「語義8」は、組織に所属することだけを表す。
次の例のように、組織に所属はするが通うべき定まった所在地がない場合、
開発チームに行く。
や、「通う」必要のない〈組織〉に所属する場合、
刑務所に行く。
にも「行く」を使うことができるのはこの「語義7」があることによる。
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9 《関心の向き先》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
関心が特定のものに向く。
類義語向く、向かう
反義語来る
文型
〈関心〉が〈もの・こと〉に行く
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 △ 意思 × 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
あせって周りの人のことにまで注意がいかない。
駅前の看板の字は大きくて目立つので、自然にそこに皆の視線がいく
細かなところに目が行きすぎると全体が見えなくなる。
明日の試験のことより他に頭が行かない。
客の注意が店の奥のショーケースにいくように工夫した。
彼の気持ちが他の人のところに行ってしまった。
「歩きスマホ」は、スマホの画面ばかりに視線が行って、周りに注意が行かないので、大変危険です。
コロケーション
〈関心〉が行く 必須項
目、視線、頭、考え、注意、意識、心
最初に目が行くのは大きな写真やイラストです。 (仲田玲子著 『Word 2002お仕事帖』, 2002, ) コーパス
強調したい箇所だけを独立した行にすると、自然とそこに視線が行くようになります。 (鈴木芳樹著 『メールを書く!ネット掲示板に書く!嫌われないための147のルール』, 2002, 694) コーパス
〈もの・こと〉に行く 必須項
太郎の顔、別の問題、細部、看板、広告
新聞をみると、自然と求人欄に目が行くようになった。 (清水洋著 『大倒産時代の生活防衛マニュアル』, 1998, 365) コーパス
〈様態〉行く
突然、急に、すぐ(に)
道路から玄関までの距離が短いので、足元にフラワースペースをつくって、道路からの目線がすぐに玄関へ行かないように工夫しました。 ( 『エクステリア&ガーデン』, 2005, ) コーパス
非共起例
〈関心〉が行く
お屋敷から聞こえてくるピアノにしばしが行く。
お屋敷から聞こえてくるピアノにしばしを傾ける。
大きな看板にが行く。
解説
「語義1」が〈人・乗り物〉の空間的移動を表すのに対し、この「語義9」は、〈関心〉の(抽象的な意味での)移動を表す。
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10 《情報の伝達》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
知らせなどが話者のいる(または注目する)場所から遠くへ伝えられる。
類義語届く
反義語来る
文型
〈ことば〉が〈到達点〉に行く
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
何かあれば全員に連絡が行くことになっている。
太郎にはまだ連絡が行っていないようだ。
3か月後に結果の通知がいくと言われた。
皆に知らせが行ったのは、事件から10日後のことだった。
あなたのところには、メールがいっていないのですか。
電話がいくまで事務所で待機していてください。
コロケーション
〈ことば〉が行く 必須項
情報:連絡、知らせ、通知
通信手段:手紙、はがき、メール、電話、電報
こちらが掲示板で返答した場合、相手の携帯に連絡が行きますか (Yahoo!知恵袋, 2005, Yahoo!オークション) コーパス
本人同士には直接、メールが行かないようになっています。 (矢野直明著 『女性がひらくネット新時代』, 2004, 007) コーパス
転入者には通知がいきませんので健康課へお問い合わせください。 (市報むさしの, 2008, 東京都) コーパス
〈到達点〉に行く 必須項

人や組織の所在地:東京、中国、イギリス
組織:本社、支社、課、部、A社
フロントに残っている住所氏名から、本人宛に連絡が行くそうよ。 (森詠著 『北のレクイエム』, 1986, 913) コーパス
〈起点〉から行く

人や組織の所在地:東京、中国、イギリス
組織:本社、支社、課、部、A社
行く医療機関が決まっていれば、事前に保険会社から医療機関に連絡が行き、費用が掛からない用になります。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 健康、病気、ダイエット) コーパス
〈頻度〉行く
毎日、週に一度、毎年、頻繁に
非共起例
〈ことば〉が行く
招待状が行きますので、ぜひともご参加くださいませ。
招待状を差し上げますので、ぜひともご参加くださいませ。
〈ことば〉は、依頼などではなく必要な連絡事項である。
〈人〉から行く
私からメールが行きました。
私がメールをしました。
私から電話が行きました。
私が電話をしました。
解説
「語義1」が〈人・乗り物〉の空間的移動を表すのに対し、この「語義10」は、〈ことば〉の移動(伝達)を表す。
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11 《特定の集団に所属》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
人が家族、または家族に類する集団の一員となる。
類義語なる
反義語来る
文型
〈人〉が〈家族関係内の役割〉に行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
私は一生お嫁には行かない。
跡とりとして、婿に行くことになった。
私が養子に行ったのは、8歳の時だった。
去年お嫁に行かれたお嬢さん、その後お元気でしょうか。
いやいや嫁に行かされた。
商家の子は、幼少時には丁稚に行くのが慣習だった。
コロケーション
〈家族関係内の役割〉に行く 必須項
嫁、婿、養子、後妻
〈場所〉に行く
田舎、都会、東京、サラリーマンの家、佐藤家
農家にお嫁に行って苦労したんじゃない。 (芹川芳江著 『雪柳』, 2002, 913) コーパス
〈場所〉から行く
田舎、都会、東京、サラリーマンの家、佐藤家
非共起例
〈家族関係内の役割〉に行く
部下に行く。
部下になる。
子分に行く。
子分になる。
〈家族(に類する)関係内の役割〉の中に、〈組織〉は含まれない。
〈家族関係内の役割〉に行く
里親に行く。
里親になる。
保護者に行く。
保護者になる。
解説
「語義2」が目的のための移動を表すのに対し、この「語義11」は、「集団内である役割を担い、特定の役割を果たす」という特別な目的のために、所属集団を移動することを表す。
「嫁[婿」に行く」は、結婚した相手の家族の一員としての役割を果たすという意識が強く、結婚が個人と個人の対等な関係であることを表すには適さない。その場合には、
AさんとBさんが結婚する。
と言う。
他に「手助けに行く」という意味で、
助っ人に行く。
という表現もある。
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12 《順調な進行》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
事態が望ましい結果が得られる方向に進む。
類義語行われる
反義語来る
文型
〈こと〉が〈様態〉行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 × 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
計画が思い通りに行った
今度の試験はうまく行ってよかった。
仕事が思うように行かなくていらいらする。
きっとうまく行くよ。がんばって。
太郎君の発表会、うまく行きますように。
会議が順調に行ったとすれば、その裏には大変な努力があったはずだ。
コロケーション
〈こと〉が行く 必須項
計画、試験、会議、プレゼンテーション、パーティー、運動会
「商売がうまく行かなかったのか」 (平岩弓枝著 『一両二分の女』, 1990, 913) コーパス
〈様態〉行く 必須項
思い通りに、うまく、順調に、問題なく
〈想定〉より(〈様態〉)行く
想定、予想、期待、思った
しかし、転職は予定通りにはいかず、悩んでいます。 (吉広紀代子著 『迷える20代へ』, 1993, 159) コーパス
非共起例
〈様態〉行く
試験は悪く行った。
試験はうまくいかなかった。
試験はだめだった。
この語義は、〈こと〉(たとえば試験)が望ましい方向に向けて進行した場合にしか使えない。したがって、〈様態〉は望ましい方向に進むことを表す〈様態〉に限られる。
〈こと〉がいく
宝くじがうまくいった
宝くじがあたった
〈こと〉は、望ましい結果が得られるように、意図的に計画や準備が可能でなければならない。
解説
「語義2」が目的達成のための空間的移動を表すのに対し、この「語義12」は、目的達成に向けた事態の進行(抽象的移動)において、その過程が順調であることを表す。
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13 《目的達成方法の選択》
自動詞 上級 ★ 表記いく、行く
人が望ましい結果が得られる方法を考えて実行する。
類義語やる
文型
〈方法〉で行く
文法
受身 × 尊敬 × 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
今夜の宴会は日本酒で行こう
(食事の会計のときに)今日は割り勘で行こう
今年の年賀状は手書きで行こう
今度の開発は新しい方法でいったのがよかった。
今後のプロジェクトはA氏との連携で行く
今度の捜査は単独行動でいったほうがいいだろう。
よ~し、今日はみんな、無礼講で行こうじゃないか。
コロケーション
〈方法〉で行く 必須項
宴会の方法:割り勘、中華料理、日本酒、立食
資料作成の方法:手書き、ワープロ、コピー、カラー、印刷
計画実行の方法:~との協力体制
しばしば、職場での飲み会において、部長などの上席者が「今日は無礼講でいこう」といいます。 (田坂広志著 『こころのマネジメント』, 1999, 336) コーパス
解説
「語義12」が目的達成に向けた事態の進行が順調であることを表すのに対し、この「語義13」は、順調に進行させるために、何らかの方法を選択することを表す。
誤用解説
この語義は、主に改まりの少ない話し言葉で使われる。したがって改まった場面や文章で、
今度の祝賀会はかねてからご要望の強い鍋料理でいき[まいり]ます。
先生が生徒に:時間の許す限り年賀状は手書きでいきましょう。
というのは不自然である。
この場合、
今度の祝賀会はかねてからご要望の強い鍋料理を用意いたしました。
先生が生徒に:時間の許す限り年賀状は手書きで書きましょう。
というように、〈方法〉を「用意する」「手書きで書く」などの動詞で具体的に示す。
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14 《攻撃》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
人が敵を攻める。
類義語攻める
反義語来る
文型
〈人・チーム〉が行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
(戦闘場面で指揮官が)行け
(スポーツの試合で)行くぞ。
(スポーツの試合で)何も考えず思いっきり行ったのがよかった。
(入学試験で)落ちついて行けば大丈夫だ。
(レスリングで)今度は相手の右側から行こうと思う。
太郎は落ちついて行こうと心に決めた。
コロケーション
〈様態〉行く
どんどん、思い切り、全力で、容赦なく
〈方法〉で行く
新しい攻め方、この戦略
解説
「語義2」が目的達成のための空間的移動を表すのに対し、この「語義14」は、勝利のために、攻撃の道を進むこと(抽象的移動)を表す。
この場合の「行く」は、「語義1」(「目的地へ進む」という空間的移動)とも解釈できる場合がある。例えば、戦闘場面で指揮官が「行け」と言う場合には、「攻撃せよ」という「語義14」と解釈できるだけではなく、「(敵陣へ)行け」という「語義1」とも解釈できる。
ただし、バレーボールの試合で「思いっきり行こう」と言う場合には「語義14」としか解釈できない。
誤用解説
この「語義14」は主に話し言葉で使われる。したがって、作文などで、
今度はAチームが行きました。負けずにBチームも行きました。
と書くのは不自然である。
その場合、次のように表現する。
今度はチームが攻めました。負けずにBチームも攻めました。
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15 《特定の方向への進展》
自動詞 上級 ★ 表記いく、行く
事態がある方向に向かって、進む。
類義語向かう
反義語来る
文型
〈こと〉が〈方向〉にいく
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 × 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
計画はよい方向に行っている。
病状は悪いほうに行ってしまった。
大企業に入れさえすれば、すべてがよい方向に行くと考えていた。
販売価格を抑えると、どうしても仕入れ値を下げる方向に行ってしまう。
日本はこれまでとは別のおかしな方向に行こうとしている。
この制度は廃止の方向に行くべきだ。
コロケーション
〈こと〉が行く 必須項
計画、動向、戦略、病状、人生
とても危険で、自分の人生がとんでもない方向に行ってしまう。 (黒沢年男著 『大莫迦になりたい』, 1992, 778) コーパス
〈方向〉に行く 必須項
よい方向、悪い方、おかしな方向、推進する方向、やめる方向
〈様態〉行く
どんどん(と)、順調に、思い通りに
そう言うことによって、ますます「ほらダメだね」という方向に行きます。 (中谷彰宏著 『一生懸命、適当に。』, 2005, 159) コーパス
非共起例
〈こと〉が行く
発表会はよい方向に行った。
発表会はうまく行った。
昨日の入学試験はよい方向に行った。
昨日の入学試験はうまくいった。
〈こと〉は過程があることが感じられるもの(計画、病気の回復、人生、経営戦略など)でなければならない。
解説
「語義3」が特定の方向への空間的な移動を表すのに対し、この「語義15」は、事態の展開の方向(抽象的な意味での移動)を表す。
この「語義15」と「語義12」は意味が極めて類似する場合がある。たとえば、
この計画はよい方向に行った。
というこの「語義15」は時として、「よい結果が得られらた」ことを意味する場合もあり、
この計画はうまくいった。
という「語義12」と同じような意味を表すことがある。
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16 《特定の水準への到達》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
値がある水準に達する。
類義語達する、伸びる
反義語来る
文型
〈こと〉が〈水準〉まで[に]行く
文法
受身 × 尊敬 × 使役 ○ 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
年末に為替は80円まで行った
今年に入って、株価は1980年代の水準まで行き人々を驚かせた。
検定試験で、1級まで行けば一人前だ。
どうしても二回戦までは行きたい。
スコアは100までいったが最下位だった。
英語の点が合格ラインまで行っていなくても、総合点で合格できる。
コロケーション
〈こと〉が行く 必須項
株価、為替、試合、スコア、点数
今年の2月危機の際も、カラ売り規制で日経平均株価が瞬間1万2000円に行ったら、それ以上のことは何もしなかったのです。 (MONEY japan, 2002, 家庭/生活) コーパス
〈水準〉まで[に]行く 必須項
80円、3億円、2兆円、段階、ステージ、5級、最高点
〈起点〉から行く
80円、2億円、1兆円、段階、ステージ、1級、決勝戦、合格ライン
〈時期〉までに行く
年末、年度末、決算、1月、2年後
〈様態〉行く
急激に、突然、徐々に、一直線に、ついに、やっと
〈期間〉行く
短期間で、~のうちに
〈時期〉から行く
年末、年度末、決算、1月、昨年
解説
「語義15」が特定の方向への事態の進展を表すのに対し、この「語義16」は、事態の進展の結果、特定の水準に達したことを表す。
この「語義16」における〈水準〉は、価値の低いほうの〈水準〉でもよい。たとえば、次のように言うこともできる。
成績は下がり続け、クラスの最低点まで行ってしまった。
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17 《進路の選択》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
人がある生き方を選ぶ。
類義語進む
反義語来る
文型
〈人〉が〈生き方〉を行く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
我が道を行く
自分の選んだ道を行けば、後悔はない。
田中は商売の王道を行くやり方で、店を繁盛させた。
あえて茨の道を行く選択をしたのには理由がある。
卒業したら、それぞれの道を行くことになる。
田中は困難な道を行こうとしている。
コロケーション
〈生き方〉を行く 必須項
我が道、先輩と同じ道、王道、困難な道、茨の道
ピーターに人物画テストを行なった心理学者は、彼が「わが道を行く」子供だと言った。 (エレン・ウィナー著;片山陽子訳 『才能を開花させる子供たち』, 1998, 141) コーパス
〈様態〉行く
まっしぐらに、このまま、ずっと
「乃木のやつ、また短気をおこして」と思いながら、私心なくひたすらわが道を行く希典の生き方を評価する者も少なくなかった。 (渡辺淳一著 『静寂[しじま]の声』, 1988, 913) コーパス
非共起例
〈生き方〉を行く
大学を卒業して会社員を行く。
大学を卒業して会社員になる。
大学を卒業して薬剤師を行く。
大学を卒業して薬剤師になる。
「〈生き方〉を行く」という場合の〈生き方〉として〈職業〉は不適である。
解説
「語義3」が空間的移動において、特定の方向へ進むことを表すのに対し、この「語義17」は、人生を生きるという抽象的な意味での移動において、特定の方向へ進むことを表す。
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18 《年月の経過》
自動詞 上級 ★ 表記いく、行く
年月が過ぎる。
類義語過ぎる、去る
反義語来る
文型
〈季節・年〉が行く
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
行く春を惜しむ。
行く年を振り返り、感慨にふける。
夏が行き、秋が来た。
コロケーション
〈季節・年〉が行く 必須項
春、夏、秋、冬、年
非共起例
〈季節・年〉が行く
間もなく夏休みが行く
間もなく夏休みが終わる
解説
「語義4」が空間的な意味で「遠くに移動」することを表すのに対し、この「語義18」は、時間的な意味で「遠くに移動」(時間が経過する)ことを表す。
誤用解説
主に文章語で用いられる。
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19 《老齢化》
自動詞 上級 ★ 表記いく、行く
人・動物が年をとる。
類義語とる、重ねる
文型
〈年齢〉がいく
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
年齢がいくと、いろいろなことが見えてくる。
年のいったおじいさんが一人で歩いている。
隣のおじいさんはかなり年がいっている。
コロケーション
〈年齢〉がいく 必須項
年、年齢
だけど、おせんだけは働き者の女中さん、大店で歳がいくまでつとめて、キャリアウーマンみたいなものでしょ。 ( 『武田百合子』, 2004, ) コーパス
〈程度〉いく
すっかり、かなり
非共起例
〈年齢〉がいく
100年いったお祖父さんが亡くなった。
100年生きたお祖父さんが亡くなった。
〈年齢〉として具体的数字は使えない。
解説
「語義18」が年月の経過を表すのに対し、この「語義19」は、年月の経過の結果、年をとることを表す。
誤用解説
この「語義19」は、文末では使いにくい。
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20 《死去》
自動詞 上級 ★ 表記逝く
人・(大切に思っている)動物が死ぬ。
類義語死ぬ、亡くなる
反義語生まれる
文型
〈人・(大切に思っている)動物〉が逝く
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 △ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
父が逝ったのは一昨年の冬のことだ。
昨年妻に逝かれてから、一人で食事を作るようになった。
連れ合いよりも自分のほうが先に逝きたい。
あの世に逝く前にまだやりたいことがある。
愛犬が天国に逝ってから2週間がたった。
死んじゃいや。まだ逝かないで。
コロケーション
〈人・(大切に思っている)動物〉が逝く 必須項
父、息子、祖母、おば、愛犬
彼女は夫が逝ってから、ひとりで台所にいることが多く、何か緩やかな変化の中でしか生きていないようだ。 (坂上弘著 『台所』, 1997, 913) コーパス
〈場所〉に逝く
天国、あの世
家内があの世に逝ってだいぶん経ってから、子どもたちに「うちは貧乏だったからずいぶん辛い思いをしたのでは」と問うてみたとき、「そんなことはまったく感じられなかった」との返事を聞いて、家内の配慮に改めて感謝した。 (財界, 2004, 経済/経営) コーパス
〈様態〉逝く
眠るように、静かに、穏やかに、突然
その後、この女性から娘が静かに逝ったとの手紙が届いた。 (保阪正康著 『医療崩壊』, 2001, 498) コーパス
非共起例
〈人・(大切に思っている)動物)〉が逝く
薬をかけたら、すぐにゴキブリは逝った
薬をかけたら、すぐにゴキブリは死んだ
〈(大切に思っている)動物〉でなければならない。
〈人・(大切に思っている)動物)〉が逝く
昨日、突然お隣の奥さんが逝かれましてね。
昨日、突然お隣の奥さんがお亡くなりになりましてね。
「逝く」は主に身内について用いられる。
〈場所〉に逝く
父があの世に逝ったのは、去年のことです。
父が逝ったには、去年のことです。
自分の死亡について言うのでない場合に「あの世」を用いるのは不自然である。
解説
「語義1」が空間的な意味で、目的地への移動を表すのに対し、この「語義20」は、「あの世」や「天国」のような目的地への抽象的な意味での移動(死亡)を表す。
「天国に行く」は死亡後の〈目的地〉が「天国」であることを表すこともでき、「よいことをすれば天国に行くが悪いことをすれば地獄に行く」というようにも使われる。「天国に逝く」が単に死ぬことを表せるのは、人が死んだとき残された者は、死者が「地獄」ではなく「天国」に向かうことを願うからだと考えられる。
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21 《納得》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
理解できない状況から望ましい(理解できる)状況に変化する。
類義語できる
文型
〈納得〉がいく
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
丁寧に説明をしてもらって納得が行った
満足の行く結果が得られるまでがんばれ。
話し合いは納得が行くまでやったほうがよい。
説明を聞いても合点が行かない。
そう考えれば合点が行く
担当者の話を聞いてはじめて、私も得心がいった
コロケーション
〈納得〉が行く 必須項
納得、合点、得心、満足、理解
これでその理由も納得がいく。 (C.W.ニコル著;村上博基訳 『白河馬物語』, 1996, 933) コーパス
長安随一の大寺である大興善寺と、随一の道観である玄都観が、なぜあの位置でなければならなかったのか、私もこの話を聞いて初めて得心がいきました (藤巻一保著 『陰陽魔界伝』, 2001, 913) コーパス
おまえが教師に暴力を振るうなど、わしには合点がいかんのだ。 (六道慧著 『羅刹王』, 1990, 913) コーパス
〈様態〉行く
ようやく、やっとのことで、ついに
土田警部はやっと合点がいき、盛んに頷いてサトルを誉めそやした。 (二階堂黎人著 『名探偵水乃サトルの大冒険』, 2002, 913) コーパス
解説
「語義1」が空間的な意味で、目的地への移動を表すのに対し、この「語義21」は、矛盾があって理解不可能な状態から、矛盾なく理解可能な状態へ到達すること(抽象的な意味での移動)を表す。
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22 《道理との矛盾(容認不可)》
自動詞 中級 ★★ 表記いく、行く
わけにはいかない=することはできない
文型
〈動き〉わけに(は)いかない
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
ここであきらめるわけにはいかない。
彼を見捨てるわけにはいかない。
そんなわけにはいきませんよ。
私をだました人を許すわけにはいかない。
風邪を引いたからといって寝込むわけにはいかない。
手伝うわけにはいかないと言うのなら、せめてアドバイスをしてあげて。
城北大学もここであきらめるわけにはいきません
コロケーション
〈様態〉わけにはいかない
どうしても、決して、絶対に
やっぱりどうしても納得がいかない。 (阿部邑紀著 『値段の秘密』, 2002, 337) コーパス
解説
「語義3」が、特定の方向への空間的移動を表すのに対し、この「語義22」は、道理の示す方向性とは合わない方向に進むべきではないこと(道理とは合わない方向への抽象的な意味での移動を阻止すること)を表す。
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慣用表現
1月は行く、2月は逃げる、3月は去ることわざ
月日が過ぎるのは速い。
仕事はなかなかはかどらないのに、1月は行く、2月は逃げる、3月は去る。がんばるしかないね。
天馬空を行く(がごとし)慣用句
考え方が自由奔放である。
太郎は天馬空を行くがごとし、だ。彼の発想にはなかなか皆ついていけない。
行きはよいよい(帰りはこわい)ことわざ
行くときは問題がなくても、帰りには何がおこるかわからない。「とおりゃんせ」の歌の歌詞より。
今日の午前中、得意先に契約書を持参したら、その受注より大口の解約の話を持ち出された。行きはよいよいだったよ。
執筆:木下 りか 校閲:籾山 洋介