落とす(おとす)

位置変化を表す動詞
活用表 1グループ 起伏型
コアイメージ
語義リスト ・慣用表現
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1《人やものの空中落下》人が人やものを空中に落下させる
2《主体の一部の落下》主体(人やもの)がその一部を落下させる
3《身体部位の下への移動》人が体の一部を下方向に移動、もしくは下向きにする
4《排水》たまっている水を低いところに流して排水する
5《自身が持つものの減少・消滅》人が自身が持つものを減らしたり、消滅させたりする
6《不要部分の切り離し》人や生物が自身やものの一部を切り離す
7《人による不合格・不選出判定》人が選考を行い、人やものを不合格・不選出とする
8《数値や量の減少》人やものの数値を小さくしたり数量を少なくしたりする
9《序列の低下》人やことが人やものの序列や社会的地位などを低くする
10《質・レベルの低下》人やものの質やレベルを下げる
11《別の形式への適合》人が情報や考えを別の表現方法や(保存)形式に適合させて変更や保存を行う
12《決済》人が決済する
13《利益の供与》人が受益者に利益や利益を生み出す手段を与える
14《能力の低下》人やことが人や機械などの持つ能力や潜在的な力を低下させる
15《気分の低下》人やことが気分や意欲を低下させる
16《評価の低下》人やことが(自分を含めた)人やものが持っていた評価や美徳を下げる
17《落下による紛失》人が落下(と考えられる原因)によってものを紛失する
18《欠落》人があるべきものを欠落させる
19《試験や選挙での敗北》試験や選挙などで意図した結果を得られなかったり、敗北したりする
20《スポーツでの敗北》人がスポーツで負ける
21《受け取りそこない》人が飛来物や渡されたものを受けることに失敗する
22《破壊・殺傷目的の落下》人が飛来物や建造物の破壊や殺傷を目的として落下させる
23《陣地の陥落》人が他人の陣地などを攻撃し、陥落させる
24《人の攻略》人を説得などの手段で攻略し、自分の思った通りにできる状態にする
25《光・影の到達》ものが光や影などを下方のどこかに到達させる
26《照明・動力源等の切断・弱化》人が照明や電気などの動力源などを切断したり、弱めたりする
27《地表に沿った落下》人が人やものを地表に沿って高いところから落下させる
28《付着物の除去》人やものの表面についているものを取り除く
29《苦境への転落》人やできごとが(他の)人を苦境に陥れる
慣用表現 秋の日は釣瓶(つるべ)落とし、飛ぶ鳥を落とす勢い、命を落とす、株を落とす、気[力]を落とす、ため息[嘆息]を落とす、原稿を落とす、身を落とす、幕を切って落とす、肩を落とす
全体解説
複合語
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1 《人やものの空中落下》
他動詞 初級 ★★★ 表記落とす
人が人やものを空中に落下させる
類義語落下させる
文型
〈人〉が〈人やもの〉を落とす
文法
受身 △ 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
「試験中に鉛筆や消しゴムを落としたときには、自分で拾わないで手を挙げてください」
この村では、敵国に誤って爆弾を落とされて、民間人が亡くなったそうだ。
マンションの高層階からごみや日用品が落とされる事件が続いている。
お食事中にフォークなどを落とされたお客様を見つけたら、すぐに代わりをお持ちするように。気をつけてくださいね。
「えっ、カレーライスにおしょうゆかけるの?」「変?うちの父は生卵を落として食べるよ」
9回の表、Y高校4番打者のB選手は、内角の球を巧みにセンター前に落とし、追加点を上げた。
コロケーション
〈もの〉を落とす 必須項
もの(固体):爆弾、吸い殻、バター、卵、消しゴム、財布
もの(液体):しょうゆ、水、お湯
人:赤ちゃん、子供
友人が財布を落としてしまい、クレジットカードを他人に不正に使用され、買い物をされました。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 法律、消費者問題) コーパス
子育て期のストレスが高じて,子どもを床に落としたり,口にタオルを詰めたりという悲惨な情景は,決して「特別」ではない。 (高橋重宏編 『子ども虐待』, 2001, 369) コーパス
結局、昨日の鍋の煮汁にうどんを入れて煮込み、を落とし葱を散らして食べました。 (Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ) コーパス
でもNATO軍はモンテネグロにも爆弾を落としている。 木村元彦著 『悪者見参』, 2000, 783) コーパス
〈基準点〉から落とす
空中:空、上空
上部:上層階、高層階、屋上
しかし、車の運転中、から車外へタバコの灰を落とす人が多い。 (広報あいこうか, 2008, 滋賀県) コーパス
〈到達点〉に落とす
地表面:地面、地上、床
もの:食べ物(カレーライスなど)
彼女は手にしていた金魚の入ったビニール袋を地面に落とした。 (小池真理子著 『夢のかたみ』, 2002, 913) コーパス
鍵を取ろうとして指がもつれ、に落とした。 (ジョン・ダニング著;宮脇孝雄訳 『失われし書庫』, 2004, 933) コーパス
非共起例
〈人やもの〉を落とす
(料理番組で)最後にしょうゆを1,2滴落としましょう
(料理番組で)最後にしょうゆを1,2滴かけましょう。
(料理番組で)召し上がるときに、お好みでしょうゆをかけてください。
(料理番組で)召し上がるときに、お好みでしょうゆを落としてください。
滝が藍色の滝壺に豪快に水を落としている
液体を落下させ、目的地に到達させることに注目がある場合、通常は「かける」を用いるが(例文5参照)、滴状の場合は「落とす」を用いる。また、落差がある場所から落下させる場合、大量の水でも「落とす」が用いられる場合がある。
〈人やもの〉を落とす
立ち上がろうとして、抱いていた子供をうっかり落としてしまった
ホームでうっかりお年寄りとぶつかって、線路に落としてしまった
ホームでうっかりお年寄りとぶつかって、(お年寄りを)線路に転落させてしまった。
断崖から人を落とす
断崖から人を突き落とす。
鳥を(銃で)落とす。(語義22)
鳥を(銃で)撃ち落とす。
人や生物など意志性を持つ対象を「落とす」場合には、「落とす」は多少不自然で、「突き落とす」「撃ち落とす」のように「落とす」方法などを述べると不自然さが軽減される。ただし、人や生物でも睡眠中・死亡後など意志を発揮できない場合は使用可能である。
解説
この語義は、人が人やものを空中や、より高い位置から低い位置へ、空中を通って落下させることを表すが、意志性がないものの場合、落下が意図的かどうか、また落下させるものの種類・大きさは、不問である。
この語義では、到達点に被害が生じている文脈であれば直接・間接受身ともに使用可能な場合がある。
間接受身の例文2と同様の状況での直接受身の例:
(直接受身)広島に原子爆弾が落とされた
(間接受身)広島に原子爆弾を落とされた
またこの語義の中には、主体が行った動作が実際に「落とす」行為でなくても、主体が移動させたものの軌跡の最後が落下で、そこに注目がある場合、主体の行為は「落とす」で表現される。
例えば例文6では、主体である「B選手」が行ったのは「打つ」動作であるが、この文が注目しているのは、打球の軌跡の最後の落下(到達)地点、「センター前」にボールが落下したことである。そのため、実際に主体(打者)が行った「打った」という動作ではなく「落とした」という動作が文の述語として用いられている。同様の例に、以下のような例がある。
ゴール下でディフェンスにつかれると、あせってシュートを落としがちだ
これも、選手が行う「シュート」はボールを上方に投げ上げる動作であるが、注目している部分は、ゴールリングを通過して落下するか否かである。そのため、実際の主体の動作とは異なるが、「落とす」が述語として用いられている。
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2 《主体の一部の落下》
他動詞 初級 ★★★ 表記落とす
主体(人やもの)がその一部を落下させる
類義語落下させる
文型
〈人・もの〉が〈人・ものの一部〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 × 意思 × 継続 △ 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
この公園の木は、秋になるとみんな葉を落とす
私の学校では、毎年コスモスが咲いて、タネを落としている
オーキシンは植物の成長を促す物質で、植物はオーキシンを壊すことにより、葉や花を落としたり、実を熟させたりします。
ナイアガラの滝は、約50メートルの高さから水を落とす、北アメリカで一番大きな滝です。
「ほらっ、この長い髪、あなたが落とした髪の毛でしょ」「わかった、掃除すればいいんでしょ!」
試合に負けて泣いている高校生が、グラウンドにはらはらと涙を落としている
コロケーション
〈人・もの〉が落とす 必須項
人:あなた、…(名前)
植物:木、広葉樹、コスモス
その他:滝
〈人・ものの一部〉を落とす 必須項
植物:葉(っぱ)、実、花粉、枝葉、種
人の一部:髪の毛、涙
その他:水
湖周辺の樹木もすっかりを落とし、冬の準備を始めたようです。 Yahoo!ブログ, 2008, 日本) コーパス
〈到達点〉に落とす
地表面:地面、地上、グラウンド、道路、道、舗道、歩道
特定の場所:足元、道端
地表面(基準点)より低い場所:海、滝つぼ
位置:○の上
〈様態〉落とす
はらはらと、ぽろぽろと、はらりと
町中の木々が、はらはらと葉を落とし始めるころになっていた。 (山崎玲子作;狩野富貴子絵 『もうひとつのピアノ』, 2002, ) コーパス
非共起例
〈人・もの〉が〈人・ものの一部〉を落とす
その木が落とした銀杏を拾う。
その木から落ちた銀杏を拾う。
子供が落とした髪の毛を拾う。
子供から落ちた髪の毛を拾う。
この語義では、主体から無意識・無意図に落下したものであっても「落ちる」は用いず、「落とす」を用いる場合が多い。
解説
この語義は、人やものが、自身の上部に固定されていた一部を落下させることを表す。人が主体であっても、ほとんどの場合、意図的に「落とす」行為を行っておらず、無意識・無意図で偶然に落下したことを表す。
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3 《身体部位の下への移動》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人が体の一部を下方向に移動、もしくは下向きにする
類義語下げる
反義語上げる、持ち上げる
文型
〈人〉が〈自身の体の一部・動き〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
綱引きでは、全員腰を落として重心を低くすることが肝心だ。
試合終了のホイッスルを聞くと、選手たちはがっくりと膝(ひざ)を落とし、グラウンドに崩れ落ちた。
まず仰向けに寝て、息を吸いながらかかとを30cmほどの高さまで上げます。息を吐ききったら、かかとをストンと床に落としましょう
バタフライでは、ドルフィンキックに入る前に、上半身を進入角度よりも下に落とす感じで、突っ込む。
プロレスラーAがリングに横たわるBに向かってギロチン・チョップを落とすと観客は興奮の渦に包まれた。
説明するときに、ずっと目線をメモに落としているのはよくありません。
コロケーション
〈体の一部・動き〉を落とす 必須項
体の一部:上体、上半身、腰、右[左]肩、右[左]腕、目、膝(ひざ)
体の動き・機能:重心、目線、視線
その他:ギロチン・チョップ、手刀
彼は少しをおとして、息をとめ両手をにぎりしめた。 (五木寛之著 『青春の門』, 1977, 913) コーパス
澄香は、腕時計に視線を落とした。 (金久保茂樹著 『長崎・京都、復讐の殺人ルート』, 2003, 913) コーパス
〈到達点・方向〉に落とす
到達点:床、グラウンド、人、メモ
方向:下
解説
この語義は、人が自身の体の一部を下方向に移動、もしくは下向きにすることを表す場合で、体の部分の位置や向きの変化を表す。
「目」の場合は、目の向きの変化によって生じる視界の変化を表す。
また「まぶたを落とす」は「目を閉じる」という意味である。
「肩を落とす」は、「がっかりする、落胆する」という慣用的意味も持ち、「気を落とす」「力を落とす」と同様の意味である。
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4 《排水》
他動詞 上級 ★ 表記落とす
たまっている水を低いところに流して排水する
類義語抜く、排水する、放水する
反義語入れる、ためる
文型
〈水・湯〉を落とす
文法
受身 ○ 尊敬 × 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
最後にお風呂に入った人は、お湯を落としておいてね。すぐにお風呂を洗いたいから。
「もうこの田んぼの稲、穂が出て1か月くらいかな」「うん、そろそろ水を落とそうと思ってたところだよ」
最近は、農業用ため池でも、秋に水を落とさない池が増えている。
北海道の一部では、水道管の凍結を防止するために、夜間などは「水抜き栓」を使って、水を落とします
花菖蒲(はなしょうぶ)は水草ではないので、開花時期が終わった後、水を落とさないと根腐れします。
当社の薬剤を使用する際は、いったん水田の水を落とし、水深1~2センチにすると効果的です。
コロケーション
〈水・湯〉を落とす 必須項
水、(お)湯
毎日浴槽のお湯を落とし、風呂蓋はベランダなどで乾かす。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 家事、住宅) コーパス
解説
この語義は、通常水がたまっている場所から低い場所に流して排水することを表す。水・湯がたまる場所には、風呂、ため池、水田、水道管などがある。水を完全に抜く場合が多いが、例6のように水位を低くする場合にも使用される。水がたまっている部分の下方から低い場所へ穴などを通して水を流す場合であり、くみ出す場合には用いられない。
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5 《自身が持つものの減少・消滅》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人が自身が持つものを減らしたり、消滅させたりする
類義語取る
文型
〈人〉が〈体内の一部〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 × 意思 ○ 継続 △ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
ダイエットでぜい肉は落としたいけど、筋肉は落としたくない
そのボクサーは、計量前に5キロも体重を落としているのに、体調はとても良さそうだ。
冬休みには、温泉にでも行って日ごろの疲れを落とそうと思っている。
「先週、競馬で大穴を当てたんだって?」「そうなんだよ。でもあれ以来、すっかりツキを落としちゃったみたいで・・・」
厄を落とそうと思って、神社にお参りに行った。
神社に入る前に手水舎(ちょうずや)で手を洗うのは、穢れ(けがれ)を落とし、身を清めるという意味がある。
コロケーション
〈体内の一部〉を落とす 必須項
体の部分:筋肉、ぜい肉、(皮下/内臓)脂肪、水分、胸
重さ:体重、ウェート
運勢:厄(やく)、運(気)、ツキ、穢れ(けがれ)
その他:疲れ、痛み、なまり、煩悩
背筋だけでなく反対側の胃から下腹の筋肉も鍛えて、ぜい肉を落とす。 (斎藤陽子著 『カラダ引き締め脂肪を燃やす斎藤陽子さんのプチダンベル』, 2003, ) コーパス
じわじわと増えた体重を、一気に落とすのは不可能です。 浅野裕子著 『20代で女を磨く本』, 2003, 159) コーパス
解説
この語義は、人が自身の体内に存在している(と考えられている)ものを除去・消滅させることを表す。この語義では語義6と異なり、自身から離れたものを視覚で確認することはできない。
「ツキ(=幸運)」「厄(やく)(=災難、災い)」「穢れ(けがれ)(=不浄)」などは、私たちの体の中に一時的にあると伝統的に考えられている運や心身の状態である。これらは一時的なものなので、「ツキ」はなんらかの理由で体から離れたり、「厄」や「穢れ」は神社へのお参りやお祓い(おはらい)などによって、故意に自身から離脱させることができると考えられている。「落とす」はこのようなものを自身の体から除去・消去させることを表す。
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6 《不要部分の切り離し》
他動詞 上級 ★ 表記落とす
人や生物が自身やものの一部を切り離す
類義語切る、取る、分ける
文型
〈人〉が〈人・ものの不要部分〉を落とす
文法
受身 △ 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
「昼ごはんはサンドイッチ?」「うん。でも食パンしかないから、耳を落とそうと思って」
このテーブルは、ぶつかっても危なくないように、角が落とされている
「着物、たくさんお持ちなんですね」「いえ。これは若い頃の振り袖(ふりそで)の袖を落として留め袖(とめそで)にしたんですよ」
生物の中には、身を守るために尻尾(しっぽ)を落として逃げる生物もいるそうだ。
魚はまず、頭と尻尾(しっぽ)を落とした後、内臓も落として、水洗いをしてください。ナスはヘタを、ホウレンソウは根を落として、流水で洗ってください。
流木アートでは、形のいい流木を拾ってきて、朽ちた所を落とし好きな形に加工する。
コロケーション
〈人やものの不要部分〉を落とす 必須項
人の不要な部分:ひげ、眉、髪、まげ(力士)、
動物・魚など:内臓、中骨、血合い、鱗(うろこ)、尻尾(しっぽ)
植物:(下)枝、根、石づき、枝葉
もの:角、先端、縁(ふち)、サイド
ササラでていねいにウロコを落とす AERA(アエラ), 2002, 一般) コーパス
一方盆栽は、一本の幹や枝の存在感を強調するためにその周りのを落としたり、花や実の数を極端に減らしたりします。 (葛西愛著 『盆栽は楽しい』, 2003, 627) コーパス
解説
この語義は、人や生物が自身やものの一部を切り離すことを表す。この語義では、意図や目的を持って自身やものの一部を切り離す点が、語義2や語義5と異なる。切り離す意図や目的は、不要な部分の除去、残された部分の有効活用などさまざまである。
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7 《人による不合格・不選出判定》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人が選考を行い、人やものを不合格・不選出とする
類義語不合格にする
反義語合格させる
文型
〈選考する人〉が〈選考の対象〉を落とす
文法
受身 ○ 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
不良品が市場に出回らないように、最終検査で確実に落とさなければならない。
「今年は随分、応募が多いね」「でも、記入事項に不備や漏れがある書類を落としてしまえば、かなり減ると思うよ」
不正の疑いがある現職議員を次の選挙では落とそうという動きが水面下で始まっている。
「就活どう?」「全然だめ。書類は通っても面接で落とされちゃうんだよね」
A社は過去に、本学が推薦した学生を落としているので、今年の推薦者を選ぶのが難しい。
昨年のコンクールでは、主催者が審査員を買収し、有力候補を事前審査で落とさせたという不祥事が起きた。
出席日数が足りない生徒は容赦なく落とす事で有名だよ。
コロケーション
〈選考の対象〉を落とす 必須項
もの:製品、書類
人:学生、議員
〈選考の種類・段階〉で落とす
選考の種類:検査、面接、選挙、コンテスト、コンクール、…審査、…選考
選考の段階:事前審査、書類審査、書類選考、面接、最終面接、一次…、二次…
つまり、筆記は合格したが面接で落とされて採用されなかったという人も多くいます。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 受験、進学) コーパス
過去にトラブルのある方はローンの審査で落とされますので現金決済になります。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 自動車) コーパス
非共起例
〈選考の対象〉を落とす
先生が出席不足の学生を落とす。
先生が(出席不足の)学生の単位を落とす。
学生は、単位を落とす(語義19の例)。
有権者は、A候補を落とした。
有権者は、A候補の票を落とした。
A候補は、(若者の)票を落とした。(語義19の例)
この語義では、ヲ格には「選考の対象」となる人やものが共起する。
選考の結果、選考される人が得られるはずだったもの(単位、票)をヲ格に取る場合は、語義19になる。
解説
この語義は、人が選考で人やものを不合格・不選出とすることを表す。「落とす」は、「〈人〉が〈…〉を落とす」という文型で、「選考する人が選考対象を意図的に落とす」意味と「選考の対象者/競争者が自分の意に反して選考/勝負に失敗する」意味の二つがあり、前者はこの語義(語義7)であり、後者は語義19と語義20がある。この語義7では選考する人が主体であり、語義19、語義20は被選考者/競争者が主体となる。
先生が出席不足の学生を落とす。(語義7:主体は選考する人=先生)
出席不足の学生が「英会話入門」を落とす。(語義19:主体は選考の対象者=学生)
有力選手が大事な試合を落とす。(語義20:主体は競争者=有力選手)
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8 《数値や量の減少》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人やものの数値を小さくしたり数量を少なくしたりする
類義語下げる、低下させる、縮小する
反義語上げる、伸ばす
文型
〈人・こと〉が〈数値・数量〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 × 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
ダイエットをするなら、夕食のカロリーを落とすのが効果的です。
飛行機は、着陸態勢に入り、高度を落としている
発電所から送られる50万ボルトの電圧を変電して275kVに落とし、その後も順次電圧を落としながら各家庭などへ配電されます。
昨年の金融危機で、両通貨とも為替レートを落としたが、現在は上昇傾向にある。
「大阪支店は、どうやって20%もコストダウンに成功したの?」「なんでも社内の電力やIT関係の固定費を徹底的に落とす取り組みをしたらしいよ」
九州工場の生産を落とすことで在庫の調整を行う。
コロケーション
〈数値・数量を表す語〉を落とす 必須項
指標:スケール、サイズ、ピッチ、電圧、出力、トーン、スピード、テンポ、周波数、音量
割合:…率(勝率など)
単位:カロリー、アンペア
数量:部数、シェア、ボリューム、…費(人件費、固定費など)
程度:解像度、精度、強度、高度
対象:ギア、声、成績、利益、業績、金額、生産、燃費
経済的価値:金利、価値、コスト、金額、賃金
値段:価格、値段、単価
列車が駅に近づいてスピードを落とした。 (パーネル・ホール著;田中一江訳 『撃たれると痛い』, 1995, 933) コーパス
今回の回路は、通常は12Vで動作しているファンの電圧を落とし、回転数を減らすことを目標としています。 (アスキーPC Explorer, 2002, 電気機/電子) コーパス
ゆっくり、ブラブラ歩き程度にペースをおとすことが、高山病にならないための大原則である。 (日本勤労者山岳連盟(労山)編 『登山と自然の科学Q&A』, 2000, 786) コーパス
〈様態〉落とす
短い時間に大きな変化:急激に、急に
大きな変化:大幅に、極端に
ゆっくり少しずつ:緩やかに
短い時間に:速やかに
滞りなく:順調に
解説
この語義は、人やことがものの数値や数量を小さく、または少なくすることを表す。文脈によりプラス評価・マイナス評価両方の意味を表すことが可能である。
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9 《序列の低下》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人やことが人やものの序列や社会的地位などを低くする
類義語下げる、降格する
反義語上げる
文型
〈人・こと〉が〈序列・地位など〉を落とす
文法
受身 ○ 尊敬 △ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
格付け会社がB社の格付けを2ランクも落とした
N選手は世界ランキングを8位に落としたそうだ
「たけしくんって、私たちより1つ年上なの?」「うん、海外から帰ってきて日本語に自信がないから、学年を落とすことにしたんだって」
松田家は政治的理由によって、武士から平民に身分を落とされた
「サッカーのJリーグって何チームあるの?」「J1は18チームだよ。でも毎年、成績の下位3チームを落として、J2の上位3チームと入れ替わるから、チームは毎年変わるけどね」
「昨日のファイル、見られなかったの?」「私のパソコン古いから。悪いけど、バージョンを落として、もう一度送ってくれない?」
コロケーション
〈序列〉を落とす 必須項
順位:順位、番付、ランキング
社会的地位:地位、身分、学年
順序:バージョン、打順
しかし、20分過ぎにイタリアAのマシンがエンスト、これで順位を大幅に落とす。 (ラジコンマガジン, 2004, レジャー/趣味) コーパス
しかし、根が善人の山下は検察側の反対尋問をスルリとかわして田中を弁護することができず、田中の激怒を買って、以後、田中派内での地位を落としていく。 (佐高信著 『ニッポンの大問題』, 2001, 304) コーパス
〈現在より下の序列や地位〉に落とす 必須項
順位:順位、○位、○番
身分:平民、(学年)○年(生)
層:二軍、J2
また,93年には第7位に順位を落としたオーストラリアが,94年は前年比58.8%増となり第4位に上昇してきている。 (通商白書, 1995, ) コーパス
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10 《質・レベルの低下》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人やものの質やレベルを下げる
類義語下げる・低下させる
反義語上げる、向上させる
文型
〈人・こと〉が〈質・レベル・程度〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 △
例文
連続して聞く
写真の画質を落とさないと、メールでは送れない。
あのホテルは、室料を値上げしない代わりに、サービスの内容を落とすことにしたようだ。
サーバーを用途によって使い分けることで、パフォーマンスを落とさずに、メモリを有効活用できます。
マイホームの予算を下げたい場合は、規模を変えないで設備のグレードを落とすことをお勧めします。
ここ数年、業界大手3社のうち、R社だけが勢いを落としている状況である。
「ねえお姉ちゃん、本気で結婚する気ある?理想が高すぎるんじゃないの?」「結婚相手の条件を落とそうと思った時期もあったけど、やっぱり妥協はできないわ」
コロケーション
〈質・レベル・程度〉を落とす 必須項
質・レベル:レベル、質、品質、画質、音質、クォリティ、グレード、程度、鮮度、効果
分野名:味、画像、志望校、パフォーマンス、(サービス)内容
ほんの少し生活レベルを落としてみることで、いろいろなところに精神的余裕が出てくるのではないか。 賀谷高四郎著 『英語ひとり旅』, 2001, 290) コーパス
食卓に並ぶ豆腐の味が落ちたのも、いつも使っている町内の豆腐屋がを落としたのだろうと思っていた。 (日明恩著 『鎮火報』, 2005, 913) コーパス
一度決めたコンセプトに基づき、売れようと売れまいと、品質を落とさずにこだわりを持って作っていることを強調するのです。 (田中明子著 『ネットのパン屋で成功しました』, 2003, 588) コーパス
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11 《別の形式への適合》
他動詞 上級 ★ 表記落とす
人が情報や考えを別の表現方法や(保存)形式に適合させて変更や保存を行う
類義語入れる、コピーする
文型
〈人〉が〈情報・考え〉を〈別の表現方法や形式〉に落とす
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
撮影したビデオの会話を字幕に落とすのが大変だった。
住所はわかっているので災害時の避難所の位置を地図上に落として分布図を作成したい。
目標に至るまでの道筋を、細かく協議して実行計画にまで落としたい
ここまでは国レベルの話でしたが、これを自治体や地域レベルに落として考えれば、実は身近な話だと気づくはずです。
「発表には、自分のパソコンを持って行かないといけませんか」「いえ、パソコンはこちらで用意しますので、データをフラッシュメモリに落としてお持ちください」
違法ダウンロードとは、インターネット上に不正にアップロードされたコンテンツだと知りながら、端末に落とすことを意味する、
ねえ、お母さん、このゲーム、家のパソコンに落としてもいい?
コロケーション
〈情報〉を落とす 必須項
考え、計画、データ、話、住所、ファイル、データ、アプリ、映像、音声
翌日営業マンが会社に出社して、専用のチップで会社のコンピュータから携帯端末にデータを落とします。 (田部井昌子著 『資産ゼロから大成功する「魔法の粉」の使い方』, 2003, 159) コーパス
〈別の表現方法・(保存)形式・記憶媒体〉に落とす 必須項
表現方法:書面、地図、実行計画、共同声明、制度
レベル:国、自治体、市町村、地域、…レベル
記憶媒体:DVD、HD、CD、メモリフラッシュ
機材:スマホ、PC、端末
異なる形式:PDF
個人情報をデータファイルに落として、そのデータファイルを暗号化して電子メールに添付することが望ましい。 (日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会編著 『IT企業のための「個人情報保護法」がわかる本』, 2005, 007) コーパス
解説
この語義は、人が情報や考えを趣旨や内容を変えないまま、別の表現方法や(保存)形式、別の機材に適合させて新たに表現、もしくは変更し、保存することを表す。インターネット上にある情報を、内容は変えずに個別の端末に写す「ダウンロード」もこの語義に含める。「落とす」が表す情報・考えは、抽象から具体へ(例:音声→文字、考え→実行計画、住所→地図)、大きな単位→小さな単位(例:国→都道府県、ネット上→端末、HD→リムーバブルな記憶媒体)などの方向で移され、変更、もしくは保存される。
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12 《決済》
他動詞 上級 ★ 表記落とす
人が決済する
類義語決済する、(口座を使用する場合)引き落とす
文型
〈人〉が〈決済の方法・手段〉で〈支払いの対象〉を落とす
文法
受身 ○ 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
「この飲食代、経費で落とせないかな」「悪いけど、課長に聞いてくれる?私じゃ判断できないから」
「あれっ?めずらしいね。現金?」「うん、クレジットで落とそうかと思ったんだけど、残高が心配だったから」
離婚後、子供の養育費が毎月給料から落とされるようになった。
ホテルで起こした浸水事故の修理代がカードから自動的に落とされると聞いてショックを受けた。
今回は飲食代も旅費として落としといたけど,次回からは自分で払ってくださいね。
コロケーション
〈決済の対象〉を落とす 必須項
手形、名画、…代
Xは、印刷所を経営していたが、折からの不況で注文が激減し、翌日が満期日になっている200万円の手形を落とす資金もなくなってしまった。 (山本敬三著 『民法講義』, 2005, 324) コーパス
〈決済の方法・手段・値段〉で落とす 必須項
(クレジット)カード、オークション、…円
今回のチケットはオークションで落としたものだったんですが意外と前の方で値段も定価に近かったんで良い買い物が出来ました。 (Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ) コーパス
〈名目〉で[として]落とす 必須項
経費、…費
すなわち、価値の減少を金額で出すことで、それを毎年経費としておとすことになっているので減価償却費といいます。 (法律実務研究会編 『税金に関する法律知識』, 2002, 345) コーパス
〈引き落とし先〉から落とす
(銀行)口座、給料、カード
〈方法〉落とす
自動的に
〈頻度〉落とす
定期的に、毎月
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13 《利益の供与》
他動詞 上級 ★ 表記落とす
人が受益者に利益や利益を生み出す手段を与える
類義語(お金の場合)使う、払う
文型
〈人〉が〈利益・利益を生み出す手段〉を落とす
文法
受身 △ 尊敬 × 使役 ○ 意思 △ 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
外国人観光客が落とす外貨に期待して、ビザの規制緩和を検討する。
年末年始は、買い物客に自分の店でお金を落とさせようと商店街は張り切っている。
県立博物館は、昨年だけで約120万人来館者が総額約40億円を落としてくれた
家を新築するとき、システムキッチンなどを自分で用意すれば、ハウスメーカーに利益を落とさないので確実に安くなります。
「ここは小さな町なのに、ずいぶん活気があるね」「あの自動車工場が税金を落としてくれるおかげだよ。ほかにたいした産業はないから」
東京に産業を集中させるのではなく、地方に仕事を落とさなければ、地方再生はあり得ない。
コロケーション
〈利益・利益を生みだすもの〉を落とす 必須項
収入の種類:予算、税(金)、外貨、
通貨:円、ドル
その他:○円(金額)、お金、大金、仕事
自衛隊の活動は自己完結型といわれ、食糧も装備もたいていは日本から持参するため現地にほとんどを落とさない。 (渡辺悟著 『クルド、イラク、窮屈な日々』, 2005, 302) コーパス
〈受益者〉に落とす
場所:地元、村
組織:メーカー、業界
続々とやってくる巡礼の流れは、通過路となった地域に大変なお金を落としていきます。 (村上満著 『ビール世界史紀行』, 2000, 588) コーパス
解説
この語義は、受益者(人、自治体、業界など)に対して、利益や利益を生み出す手段を与えることを表す。この表現が使用される場合は、だれかが利益などを意図的に供与するのではなく、第三者が消費や納付、支払いなどをすることにより、その結果として自分や他の誰かに利益をもたらしている状況を描写する場合に用いられることが多い。
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14 《能力の低下》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人やことが人や機械などの持つ能力や潜在的な力を低下させる
類義語下げる、低下させる、悪化させる
反義語上げる、向上させる、改善させる
文型
〈人・こと〉が〈能力・潜在的な力〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 △ 意思 × 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
ハードな練習をすると、疲れからコンディションを落とす選手もいる。
腎臓が機能を落とすと、体液のバランスを保つのが難しくなることがある。
ウォーキングなどの有酸素運動は、基礎代謝を落とさないために有効です。
「先生、最近、メガネを使われてるね」「うん、パソコンの使い過ぎで視力を落とされたそうだよ」
インターネットの台頭とともに、従来のマスメディアは、相対的に影響力を落としつつある。
このまま教育の質が下がれば、国力を落とすことになるだろう。
コロケーション
〈能力・潜在的な力〉を落とす 必須項
能力:能力、国力、戦力
潜在的な力:免疫力、スペック、機能、性能、(基礎)代謝、効果、味覚、体力
身体の状況:体調、コンディション
そうなると、腸内は悪玉菌の巣窟となり、便秘になったり、免疫力を落としたりするのです。 (大森一慧著 『自然派ママの食事と出産・育児』, 2005, 599) コーパス
職人の自主的判断によって作業をおこなうことは、結果的に作業能率を落とすことにもつながっていたのである。 (初田亨著 『職人たちの西洋建築』, 1997, 523) コーパス
解説
この語義は、人やことが人やものの持つ能力・潜在的な力を低下させることを表す。なお「力を落とす」には、「元気をなくす、がっかりする」という慣用的な意味もある。
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15 《気分の低下》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人やことが気分や意欲を低下させる
類義語下げる、低下させる
反義語上げる、向上させる
文型
〈人・こと〉が〈気分・意欲〉を落とす
文法
受身 △ 尊敬 ○ 使役 △ 意思 × 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
食欲を落とそうと思って、インターネットで食欲を抑える薬を探してみた。
今日のテンションを落とさずに次の試合まで気持ちを保つことが何より難しい。
難しい問題を渡されると、全く解けない生徒はモチベーションをがっくりと落とします
必要以上の合理化や経費削減は、従業員の士気を落とし、かえって経営にマイナスである。
「部長、リストラが決まったんだってね」「ここ数日、すっかり意欲を落とされて・・・。胸が痛むよね」
散歩好きの母は、けがをしてから気力を落とし、寝たきりになるまで時間はかからなかった。
コロケーション
〈気分・意欲〉を落とす 必須項
気分:気持ち、メンタル、気分、エネルギー、心、テンション
意欲:モチベーション、意欲、士気
〈様態〉落とす
がっくりと
〈程度〉落とす
すっかり
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16 《評価の低下》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人やことが(自分を含めた)人やものが持っていた評価や美徳を下げる
類義語下げる
反義語上げる
文型
〈人・こと〉が〈評価・美徳〉を落とす
文法
受身 △ 尊敬 △ 使役 × 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
老舗(しにせ)のG商店は、拡大路線を始めてからすっかり評判を落としている
清純派として知られていた女優がスキャンダルですっかりイメージを落としてしまった
その会社の不正会計処理は、消費者の信頼を地に落とした
「佐藤さんちのご長男、また警察のお世話になったそうですよ」「名門佐藤家も、あの子のせいですっかり名を落としちゃいましたね」
15世紀後半の「応仁(おうにん)の乱」により、中央政府は権威を落とし、守護大名も力を失いました。
新入社員の皆さん、これからはわが社の社員としてどのような場でも品位を落とさず、自覚を持って行動しましょう。
コロケーション
〈評価・美徳〉を落とす 必須項
人からの評価:評判、信用、人気、名声、名、名誉
人の美徳:品位、権威、威厳、印象、…感(存在感)
日頃から評判の悪い男がそこでもう一つ評判を落すのを見て、みんなが溜飲をさげる。 (井上ひさし著 『腹鼓記』, 1985, 913) コーパス
多少のPRはいいとしても、チラシ文句めいた宣伝一色は避け、挨拶状としての品位を落とさないように心がけることです。 (郷田稔著 『はがきの書き方』, 1992, 816) コーパス
給料の遅配は会社の信用を落とすことになりかねない。 (芦崎治著 『逃げない人を、人は助ける』, 2004, 673) コーパス
〈程度〉落とす
すっかり
解説
この語義は、人やことが(自分を含めた)人やもののそれまで持っていた評価や美徳を下げることを表す。
特にその評価や美徳が最低レベルまで失墜したときには「地に落とす」という表現がよく用いられる(例文3参照)。
また「営業の際は、自分を落として相手を持ち上げることも必要だ」のように、評価に関わる語を用いず、直接対象となる「人」を表す語を用いる使い方もある。
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17 《落下による紛失》
他動詞 初級 ★★★ 表記落とす
人が落下(と考えられる原因)によってものを紛失する
類義語なくす、紛失する
文型
〈人〉が〈もの〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
「あれ、手帳、どこかで落としちゃったみたい。あれないと困るんだけど」
「お母さん、ハンカチ~!」「どっかで落としたって?そんなにしょっちゅうハンカチばっかり買ってあげられないわよ」
「あれ、本の間にコピーをはさんでおいたんだけど、どっかで落としちゃったみたい」
駅で財布を落としたので交番に行ったら、もう誰かが届けてくれていた。
この手袋、気に入ってたのに、片方落としちゃった。残念だな~。
「実の娘に向かってよくそんな冷たいことが言えるね。思いやりをどっかで落としてきたんじゃないの?」
あ、俺、前に携帯落としたことあるよ。
コロケーション
〈もの〉を落とす 必須項
電話、カメラ、カード、ボタン、手袋
とにかくキャッシュカードを落としたら君はすぐ銀行に連絡をしなければいけない。 (池田真朗ほか著 『法の世界へ』, 2004, 320) コーパス
〈落とした場所〉で落とす
どこか[どっか]で
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18 《欠落》
他動詞 上級 ★ 表記落とす
人があるべきものを欠落させる
類義語(無意識)漏らす、抜かす、(意識的)削る
反義語そろえる、入れる
文型
〈人〉が〈あるべきもの〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
「もう出発の時間だけど、人数確認、終わった?」「今終わったところ。乗客リストの名前、一人落としちゃってて慌てちゃった」
メールの文に間違えて「s」を全部落としてしまったので、意味がよく通じなかったようだ。
重要な会議の前には、何か大切なことを落としているのではないかと心配になる。
うっかり重要事項の記載を落としてしまい、書類が無効になってしまった。
最近の若者はよく述語を落としてしゃべるから、何を言いたいのかわからないことがある。
「部長はどうしてこの改善案に不満なのかな」「時間がなくて私たちが考えたプロセスを落として説明しちゃったから、よく伝わらなかったんじゃないかな」
コロケーション
〈あるべきもの〉を落とす 必須項
全部そろうべきもの:(リストなどの)名前、編み目
もともとあるもの:母音、子音、字、ページ、項目、説明
本来ならあるべきもの・あると望ましいもの:ディテール、プロセス、情報、要素
〈様態〉落とす
うっかり、不注意で、間違えて
解説
この語義は、人があるべきものの一部を抜かし、そろわなくなるなど不都合が生じることを表す。多くは不注意や過失などで漏らす場合であるが、例5、6のように故意に抜かす場合も表現可能である。
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19 《試験や選挙での敗北》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
試験や選挙などで意図した結果を得られなかったり、敗北したりする
反義語(単位を)取る、(選挙)当選する
文型
〈選考される人〉が〈得ようとするもの〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 △ 意思 △ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
「『英会話入門』の単位、落としたんだって?」「もう言うなよ。落とそうと思って落としたわけじゃないんだから」
本来なら点数を稼ぐべき基本的な計算問題も落としてしまったので、数学の点数はさんざんだった。
また資格の試験を落としてしまい、就職の内定をくれた会社に報告できず困っている。
党首の地元の選挙区を落としてしまったことは、我が党にとって大きな打撃だ。
与党は前回の衆議院選挙で、それまでずっと勝利してきた神奈川7区を落としているので、今度の選挙では必ず取り返すつもりだそうだ。
あと1つでも単位落としたら、留年決定だよ。
コロケーション
〈得ようとするもの〉を落とす 必須項
単位、試験、面接、…問題(例:基本問題、計算問題、読解問題)、選挙区
医学部への転部を狙っていたが、一教科の単位を落として留年の危機に。 (TVぴあ関東版,関西版,東海版,北海道・青森版,福岡・山口版, 2005, 娯楽/芸能) コーパス
〈理由・原因〉で落とす
試験の場合:(ケアレス)ミス、不注意
解説
この語義は、試験や選挙などで人が意図した結果を得られなかったり、敗北したりすることを表す。
「落とす」は、「〈人〉が〈…〉を落とす」という文型で、「選考する人が選考対象を意図的に落とす」と「選考の対象者/競争者が自分の意に反して選考/勝負に失敗する」という二つの意味があり、前者には語義7が、後者にはこの語義19と20がある。
語義7と語義19は、語義7の主体は「選考者」、語義19の主体は「被選考者」であるため、語義19が表すのと同じ事態を語義7の「落とす」の受身で表すことが可能な場合がある。
A先生は、(「英会話入門」で)Bさんを落とした。(語義7)
Bさんは、A先生に落とされた。(語義7の受身)
Bさんは、「英会話入門」(の単位)を落とした。(語義19)
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20 《スポーツでの敗北》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人がスポーツで負ける
文型
〈人〉が〈試合・試合の一部〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 △ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
(サッカーで)ここまでがんばってきてPKで試合を落とすなんて、悔しくてたまらない。
(野球で)カープは、開幕初戦を落として以来、なかなか調子が上がらない。
(相撲(すもう)で)横綱は中日(なかび)にして、既に3つも星を落としており、今場所の優勝の可能性はほぼなくなったと言える。
(サッカーで)アジア予選を落としても、オセアニアとの大陸間プレーオフで勝てば、ワールドカップに出られるそうだ。
(バドミントンで)第1ゲームを落とした田中・中村ペアは、その後、2ゲームを連取して試合に勝利した。
(テニスの試合を見ながら)「あ~、N選手、このセット取られたら、負けだよね」
コロケーション
〈試合・試合の一部〉を落とす 必須項
試合、初戦、予選、星(相撲)、ゲーム、セット
ここでサンティアゴがミクロフのサーヴをボレするか、はたまたこのゲームを落とすか。 (ジェリー・エイハーン著;安藤由紀子訳 『フロリダ半島壊滅』, 1989, 933) コーパス
〈理由・原因〉で落とす
PK
非共起例
〈試合・試合の一部〉を落とす
[試合、予選、ゲーム、セット]を落とす
[点、ゴール]を落とす
[ワールドカップ、オリンピック、金メダル、チャンピオン、タイトル]を落とす
「試合や試合の一部(ゲーム、セットなど)」など、勝負の判定がなされる単位を表す語とは共起可能だが、それだけでは勝負を決するとは言えない点数を表す語や大会名(例:ワールドカップ)、勝利したことによって得られるタイトル(例:チャンピオン、金メダル)などとは共起しない。
解説
この語義は、スポーツで敗北することを表す。「落とす」は、「〈人〉が〈…〉を落とす」という文型で、「選考する人が選考対象を意図的に落とす」意味と「選考の対象者/競争者が自分の意に反して選考/勝負に失敗する」意味の二つがあり、前者には語義7が、後者には語義19とこの語義20がある。また「選考・勝負に失敗する」の意味で、試験やコンクールなど選考する人が存在する事態を表す語義19では、同じ事態を語義19の能動態と語義7の受動態で表せることがある。
出席が足りない学生が「英会話入門」を落とした。(語義19)
出席が足りない学生が「英会話入門」を落とされた。(語義7の受動態)
しかし「選考をする人」が存在しないスポーツでは(スポーツではルールに基づく判定が行われるのみで、人による意図的な選考は行われない)、語義19のような他動詞の語義7との対応関係はない。
日本チームは大事な試合を落とした。(語義20)
日本チームは大事な試合を落とされた。(語義7の受動態)
またこの語義には、対応する自動詞もない。
日本チームは、アジア予選の第一試合に落ちた
日本チームは、アジア予選の第一試合が落ちた
「アジア予選の第一試合で落ちた」のように言うことは可能だが、この文は1回の試合の結果を表すのではなく、大会など段階的に試合がある場合のひとつで負け、選外(これ以上の試合に参加できないよう)になったことを表すものであり、「落とす」の語義20に対応する意味ではない。
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21 《受け取りそこない》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人が飛来物や渡されたものを受けることに失敗する
類義語受けそこなう、取りそこなう
反義語受ける、取る
文型
〈人〉が〈飛来物・渡されたもの〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 △
例文
連続して聞く
「あのパフォーマー、すごい!」「あんなにたくさんのお手玉、よく落とさないね」
「ねえ、そこの消しゴム取って」「ああ、投げるから落とすなよ」
じゃ、あと100回、シャトルを落さずにラリーができたら練習終わろうね」「え~、きっつ~い!」
レジで店員さんが手のひらに載せてくれた小銭がこぼれて落としてしまった
1000メートルリレーで最終走者がバトンを落とすというアクシデントが起こった。
「昨日の試合、田中さんがわざとパスを落としたんじゃないかって噂があるよ」「あんな大事な場面で落とそうと思って落とせるもんじゃないでしょ」
コロケーション
〈飛来物・渡されたもの〉を落とす 必須項
スポーツ用の飛来物:ボール、シャトル(バドミントン)
スポーツの動き:パス、フライ
その他飛来物:お手玉、消しゴム
手渡しするもの:おつり、バトン
解説
この語義は、人が飛んで来たもの(落下してきたものを含む)や人から渡されたものを受けることに失敗することを表す。通常は不注意や技術不足が理由だが、例文6のように故意に行った場合も表現可能である。
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22 《破壊・殺傷目的の落下》
他動詞 初級 ★★★ 表記落とす
人が飛来物や建造物の破壊や殺傷を目的として落下させる
類義語落下させる
文型
〈人〉が〈飛来物・建造物〉を落とす
文法
受身 ○ 尊敬 △ 使役 ○ 意思 ○ 継続 △ 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
敵軍の攻撃によって輸送用リコプターが落とされた
日本は戦時中、女性たちに竹やりで飛行機を落とす訓練をさせていたと聞いて驚いた。
「こんな煙で本当に蚊を落とせるの?」「見ててごらんよ、昔からの知恵だよ」
殺虫剤でハエを落とそうとしたが、逃げられてしまった。
戦争中は、敵が近づかないようにわざと橋桁を爆破して落としてから撤退したそうだ。
古民家リフォームの最初の作業は、まず天井を落とすことだった。
コロケーション
〈飛来物・建造物〉を落とす 必須項
飛来する人工物:飛行機、ヘリコプター
飛来する生物:鳥、蚊、ハエ
建造物:橋(桁)、アーチ、天井
周囲には狩野川から引き入れた水で堀を巡らし、いざというときには、を落して防戦できるようになっていた。 (新田次郎著 『武田信玄』, 1987, 913) コーパス
〈道具〉で落とす
攻撃に用いるもの:銃、殺虫剤、煙、竹やり
〈行為〉で[によって]落とす
攻撃、一撃、爆破
解説
この語義は、人が、対象を破壊したり、死なせたりすることを目的として、道具などを用いて飛来しているものや建造物などを落下させることを表す。破壊の意図は、攻撃の場合や他の作業のためなどいろいろである。
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23 《陣地の陥落》
他動詞 上級 ★ 表記落とす
人が他人の陣地などを攻撃し、陥落させる
類義語陥落させる、手中にする
文型
〈人〉が〈他人の陣地〉を落とす
文法
受身 ○ 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
将軍は、難攻不落と呼ばれた要塞を次々と落とした功績で勲章をもらった。
戦争は、首都を落とせば国を滅ぼせるといった簡単なことではない。
敵兵がとうとう本丸を落とそうとして押し寄せてきた。
1994年、米軍はサイパン島、テニヤン島を落とし、ペリリュー島へと進撃した。
戦いは、まず手前のとりでを落としてから本城を攻める予定であった。
敵に居城を落とされ降伏した。
コロケーション
〈他人の陣地〉を落とす 必須項
建造物:城、城塞、要塞、基地、本丸、とりで、司令部
場所:首都、都、拠点、高地
織田軍は犬山城を陥した後、その舟橋をわたって美濃に侵入することも川筋衆に教えた。 (遠藤周作著 『決戦の時』, 1994, 913) コーパス
勇猛をもって鳴る佐久間盛政の兵、七千は、余呉湖周辺に、築かれた羽柴秀吉軍のを、次々に落としていった。 (西村京太郎著 『十津川警部湖北の幻想』, 2005, 913) コーパス
〈様態〉落とす
次々と
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24 《人の攻略》
他動詞 上級 ★ 表記落とす
人を説得などの手段で攻略し、自分の思った通りにできる状態にする
類義語(警察)自白させる
文型
〈人〉が〈人〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
女性を落とすには、話し上手になるより、聞き上手になることが大切だと言われる。
「あ~、またふられちゃった。今度はうまくいきそうだったのに!」「見かけばっかり磨いてもだめだめ!男を落とすには、まず料理の腕を磨かなくちゃ!」
ベテラン刑事が犯行を否認していた容疑者をついに落とした
営業マンの話では、ご主人に決断させるには、まず奥さんを落とすことが肝心だそうだ。
普段は「お客様は神様です」と言っている店だが、実は上客になりそうなクライアントを落とそうとあの手この手を使っている。
組織ごとにルールもカラーも違うから、知らない相手を落とすためには十分な下調べが重要だ。
男を落とす「さしすせそ」?
コロケーション
〈人〉を落とす 必須項
異性:女性、男性、異性、女の子、娘、…のハート
その他:相手、犯人、客、クライアント
これは彼がいつも使うを落とすときの手だ。 (衛慧著;泉京鹿訳 『ブッダと結婚』, 2005, 923) コーパス
相手の情報がわかれば、次の戦略を考えるのも楽になり、相手を落とすことも可能になっていくのです。 (椋木修三著 『記憶力30秒増強術』, 2002, 141) コーパス
〈様態〉落とす
ついに
非共起例
〈人〉を落とす
彼[彼女]は、みんなのマドンナ[ヒーロー]をついに落とした
刑事は容疑者を落とした
セールスマンは、顧客を落とした
先生は学生を落とした
「落とす」が使える人間関係は、①恋愛関係、②刑事と容疑者などの関係(自白)、③売り手と客の関係(契約や購入など)にほぼ限られる。
解説
この語義は、人を説得などの手段で攻略し,自分が思った通りにできる状態にすることを表す俗語的な表現である。この語義が使用可能な人間関係は、「誤ったコロケーション」で先述した場合にほぼ限られ、る。くだけた表現なので、フォーマルな書き言葉や敬語と同時に使用されることはほぼない。
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25 《光・影の到達》
他動詞 上級 ★ 表記落とす
ものが光や影などを下方のどこかに到達させる
文型
〈光・影など〉を落とす
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
のぼり始めた太陽は、柔らかな日差しをカーテン越しに落としていた
舞台では赤紫の照明の中、光を何本も落とし、ヒロインの登場を演出していた。
この通りでは、ポプラの並木が大きな葉を茂らせて歩道に木陰を落としている
まっすぐに延びる歩道にはイチョウの木が木漏れ日(こもれび)を落とし、散歩する人々を照らしている。
神通池では、まわりの木々が水面にシルエットを落とし、静寂な雰囲気があたりを包んでいました。
この事件は彼の心にその後も暗い影を落とすことになった。
コロケーション
〈光・影など〉を落とす 必須項
光:光、日差し、雷、木漏れ日
影:日陰、日影
その他:シルエット
廊下の二十ヤードほど先にも蛍光灯がついていて、そちらは安定したを落としている。 (リチャード・レイナー著;吉野美恵子訳 『天使の街の地獄』, 2001, 933) コーパス
西北には黒姫山(標高890メートル)が黒いを落としている。 (小野清春写真/文 『消えゆく茅葺き民家』, 2002, ) コーパス
〈到達点〉に落とす 必須項
床、歩道、舞台
解説
この語義は、光や影などが上部から下方のどこかに到達することを描写するときに用いられる。
この語義では、例6のように「影を落とす」が慣用的に「不安や不吉などを心に残す」意味で使用される場合がある。「落とす」が同様の意味を表す例として「影響を落とす」「(心に)悲しみを落とす」「(人生に)暗雲を落とす」などの使われ方もある。
例:その事故は、市民の心に深い悲しみを落とした
また「雷」については、自然現象には「雷が落ちる」という自動詞が用いられ、「雷を落とす」は「(親や教師、上司などが主に教育的・指導的観点から子供や学生、部下を)大声でしかりつける」という意味の慣用的な表現になる。
例:父親は子供に「バカ者!」と雷を落とした
同様の意味で「拳骨を落とす」は、「(親や教師などが主に教育的観点から子供や学生の頭を)げんこつでなぐる」ことを意味する。
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26 《照明・動力源等の切断・弱化》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人が照明や電気などの動力源などを切断したり、弱めたりする
類義語切る、消す、弱める
反義語つける
文型
〈人〉が〈照明・動力源など〉を落とす
文法
受身 ○ 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
共用パソコンを使った後は、必ず電源を落としてください。
店内は少し明かりを落として、大人のムードを演出しています。
たとえ負荷が軽い時間帯でも、原則としてサーバーを落とすことはできません。
プログラマはマシンを落とし、仕事が終えた充実感とともに帰宅した。
「じゃ、一週間後に焼却炉の点検作業をしよう」「中に入るためには、明日の朝には火を落とさないといけませんね」
それでは、しばらく火加減を弱火に落として、材料が柔らかくなるまで煮込みましょう。
コロケーション
〈動力源・照明など〉を落とす 必須項
動力源:電源、電気、電力、火、火力
照明:照明、明かり、電灯、電気
PC関係:サーバー、マシン(PCの意味)
その他:エンジン、(自動)ドア、スイッチ、火加減
現在起動中のアプリケーションを全て終了し、完全に電源を落とす。 (Yahoo!知恵袋, 2005, パソコン、周辺機器) コーパス
オシャレなレストランバーやダイニングバーは、照明を落とし、店内を暗くしているものだ。 (エンサイクロネット・ビジネス著 『どんな人にも好かれる魔法の心理作戦』, 2004, 361) コーパス
煮立ったらを落とし、蓋をして時々かきまぜながら15〜20分、または汁気がなくなって米が炊けるまで煮る。 (ジュディ・バスティラ,ジュリア・カニング著;野間けい子訳 『フルーツ』, 1989, 596) コーパス
〈弱化の程度〉落とす
少し、弱火に
非共起例
〈照明・動力源など〉を落とす
電源[電気・火]を落とす
ガスを落とす
照明[明かり・電灯・電気]を落とす
サーバー(マシン)を落とす
テレビ[パソコン・携帯電話]を落とす
携帯電話[パソコン・ルーター・ビデオカメラ]の電源を落とす
不要な電気製品[入口のドア、エンジン]の電源を落とす
テレビ[洗濯機・掃除機]の電源を落とす
「落とす」は、電気、火・火力などの動力源や照明関連の語、インターネット接続に関連する機器(「サーバー」「マシン」など)と共起して「動力源を切る」という意味を表す。一方、動力源や設備に近い「エンジン」「(自動)ドア」や電子機器製品などの電源を切るという意味を表す場合は「~の電源を落とす」という言い方にする必要がある。「テレビ」「洗濯機」など一般の家庭電化製品などとは共起しにくい。
解説
この語義は、人が照明や電気などの動力源などを切断したり、弱めたりすることを表す。通常は切断・消火することを表すが、照明や火加減など段階性を持つものについては、程度を弱めることを表すこともある。また特にインターネットとの接続に関連のあるPC関連製品や電子機器と共起しやすい。
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27 《地表に沿った落下》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人が人やものを地表に沿って高いところから落下させる
文型
〈人〉が〈人・もの〉を落とす
文法
受身 △ 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
雪の玉を丘の上から落とすと、転がりながらどんどん大きくなります。
御柱祭(おんばしら)は、諏訪大社の神木となる大木に氏子を乗せたまま傾斜約30度の木落とし坂から落とす行事で有名だ。
敵軍がその難所を通るとき、山から岩石を落とし、慌てているところを一気に攻め込もうという作戦をとった。
この銅山では、上からスロープを使って積み出し用のトラックに鉱石を落としていた
そのクイズ番組では、答えられないと滑り台から落とされて、下にある風船のプールに落ちるルールになっている。
(車でバックをしていて)「えっ脱輪?」「ん~、後ろのタイヤ、落としちゃったみたい!」「左に溝があったのわからなかったの?」
コロケーション
〈人・もの〉を落とす 必須項

もの:岩石、鉱石、雪、柱、車輪、タイヤ
〈出発点〉から落とす
山、丘、上、坂、路肩、滑り台
非共起例
〈出発点〉から落とす
滑り台(の上)から落とす
坂(の上)から落とす
スロープを使って落とす
滑り台を落とす
坂を落とす
「滑り台」「坂」「スロープ」などは、落下物の通過点でもあるが、これらは通過点を表す助詞「を」は使用されない。出発点として「から」、または手段・方法の意味で「を使って」などが用いられる。
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28 《付着物の除去》
他動詞 中級 ★★ 表記落とす
人やものの表面についているものを取り除く
類義語取る
反義語つける
文型
〈人〉が〈付着物・被覆物〉を落とす
文法
受身 ○ 尊敬 ○ 使役 ○ 意思 ○ 継続 ○ 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
葉野菜は、流水で泥や農薬をきれいに落としましょう
どんなに疲れていても、化粧はクレンジングなどでしっかり落としてから寝た方がいい。
この洗剤は汚れを落とす力が強い。
クサフグが川に入ってくる理由は、淡水域で生きられない体表の寄生虫を落とすためと考えられている。
服についたたばこのにおいを落とそうとしたが、落ちなくて困った。
「ねえ、私の演奏、早くブログにアップロードして!」「ちょっと待って。ノイズを落としたらすぐにするから」
コロケーション
〈付着物・被覆物〉を落とす 必須項
表面の一部に付着する:汚れ、泥、さび、垢(あか)、歯垢(しこう)、こげ、かび、マジック、傷、寄生虫
表面全体を被覆する:メイク[化粧]、皮脂、角質、皮膜、艶、色、農薬、塗装、ワックス
その他:ノイズ、匂い
傷口を流水で流し、汚れを落としたあと消毒する。 (佐藤紀子監修 『赤ちゃん・小児病気事故ケガ応急処置とホームケア』, 2001, 598) コーパス
化粧を落とした花菜子さんは舞台の印象とはまるで違った。 (盛田隆二著 『ラスト・ワルツ』, 2005, 913) コーパス
電話を置いた高見は、バスルームに向かい、たっぷりと湯を張った風呂で旅のを落とすと、着替えを済ませた。 (サンデー毎日, 2004, 一般) コーパス
〈方法・道具〉で落とす
方法:クリーニング、洗濯、洗顔、シャワー、もみ洗い
せっけん・溶剤など:水、お湯、せっけん、洗剤、、ベンジン、クレンジング
道具:歯ブラシ、たわし、紙やすり
サンドペーパー等で錆を落とすのは良いですが経験上、かなり疲れます。 (Yahoo!知恵袋, 2005, バイク) コーパス
時々、軽石で硬くなった角質を落とすのはいいと思いますよ。 (Yahoo!知恵袋, 2005, コスメ、美容) コーパス
〈様態〉落とす
容易に、丁寧に
〈結果〉落とす
完全に、きれいに
修正液を使うと、油性ペンで書いたものをきれいに落とすことができるのです。 ( 『伊東家の食卓裏ワザ大全集』, 2000, 590) コーパス
解説
この語義は、人やものの表面についているものを取り除くことを表す。多くの場合、本来はついていなかった付着物を、不要、不快、不衛生などの理由から除去することを表す。中には本来全体を覆う被覆物であったものを何らかの理由で落とす、以下のような場合もある。
例:車の塗装をいったん落として、別の色に塗り替える。
  生地の光沢を落として、あえてレトロな雰囲気を出す。
また、付着されるものが形を伴わない場合(音声の「ノイズ」など)にも使用可能である。
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29 《苦境への転落》
他動詞 上級 ★ 表記落とす
人やできごとが(他の)人を苦境に陥れる
類義語(深くその状態になる場合)陥れる
文型
〈人・できごと〉が〈人〉を〈苦境〉に落とす
文法
受身 ○ 尊敬 × 使役 × 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
不治の病を告知され、絶望の淵(ふち)に落とされたような気分になった。
彼女を不幸に落としたのは、おまえだ!
泣いている赤ちゃんに周りの人が冷たくすることは、困っているお母さんをさらに不安に落とすことになる。
父の突然の死亡、母の病気、さらに長男の失業が一家の生活をどん底に落とした
「あの人、なんであんなに警察が嫌いなの?」「子供の頃、警察のせいでお父さんが無実の罪に落とされたことがあるって言ってたよ」
この産地偽装疑惑は、我が社を窮地に落とそうとする人によるデマに違いない。
コロケーション
〈苦境〉に落とす 必須項
困った状況:窮地、罪、冤罪(えんざい)、わな、泥沼、闇
深い場所の比喩:地獄、奈落、絶望の淵(ふち)、深淵、あり地獄、どん底、落とし穴
形:悪循環、スパイラル
心理状態:不安、恐怖、不幸、混乱
〈人〉を落とす 必須項
私、彼女、彼、自分、我が社
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慣用表現
秋の日は釣瓶(つるべ)落としことわざ
秋の夕暮れは、一気に暗くなること
「あれっ?もうこんなに暗くなっちゃった」
飛ぶ鳥を落とす勢い慣用句
勢いがとても盛んなことを表す
M社はここ数年、急成長しており、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
1975年当時、アラブ諸国やイランなどの産油国は、飛ぶ鳥を落とす勢いでした。(View of the World - Masuhiko Hirobuchi廣淵升彦・国際ジャーナリスト講演スヌーピーエッセイ)コーパス
命を落とす慣用句
事故や病気などで亡くなる。「人命を落とす」や「(亡くなった人が一人の場合は)一命を落とす」が使われることもある。
彼女のご両親は、交通事故で命を落とした
残念ながら「乳がん」は命を落とす可能性のある病気です。(【検診・治療ハウマッチ】保険対象外!?乳ガンに関するお金の話 | ブレキャンガイド)コーパス
株を落とす慣用句
評価を下げる
他人の悪口を言うことは、自分の株を落としてしまうことにもなりかねない。
前回で稚拙な報復を企て大いに株を落とした揚句、今回では近藤の暗殺を画策するも「策士、策に溺れる」ということわざ通りあっという間に殺されてしまいました。 (つれづれ歴史語り  2011年『新選組血風録』を語る!)コーパス
気[力]を落とす慣用句
がっかりする。
おばあさんも天国からあなたを見ていると思いますよ!どうぞ気を落とさずがんばって。
たとえ残念な結果となった場合でも、気を落とすことなく次の選考に向けて準備を進めましょう。 (外国人留学生特集 - マイナビ2013)コーパス
ため息[嘆息]を落とす慣用句
心配や失望などで思わず息をはく
何を話しかけても新聞から目を話さない夫を見て、彼女は小さくため息を落とした
哀しいことに、ソーシャルワーカーや肝心の障害当事者にも思い込みがはこびり、ため息を落としたくなるときがあります。(Welcome to Adobe GoLive 6)コーパス
原稿を落とす慣用句
(新聞や雑誌などで)原稿がしめきりに間に合わない
依頼を受け過ぎて、万が一原稿を落としてしまったら、ライターとしての信用を失う。
この描き込みの過剰さが、宮谷の劇画家生命を縮めたのかもしれない。最後の頃は、連載の原稿を落とし続け、待機する編集者の前からアシスタントごと忽然と姿を消したりしていたそうである。(実著者不明/永山薫(著)『ネットプレイヤー』セブン新社、2003コーパス
身を落とす慣用句
社会的地位がなくなり、生活程度などが惨めな状態になる
彼女は突然、すべてを失い、失意のうちに身を落とした
私は数年前に生活が苦しくなってから今まで、決済を先送りにしてきたのである。それが破綻して、路上生活に身を落とした。(松井計(著)『ホームレス失格』幻冬舎、2002コーパス
幕を切って落とす慣用句
(主に受身の形で使われて)はなばなしくイベントや争いごとなどを始める。
いよいよ明日、オリンピックの幕が切って落とされる
こうしてトロイ戦争の幕は切って落とされたのである。 (不思議館〜古代の不思議〜)コーパス
肩を落とす慣用句
がっかりする。落胆する。
コーパス用例
執筆:中溝 朋子 校閲:砂川 有里子