落ちる(おちる)

位置変化を表す動詞
活用表 2グループ 起伏型
コアイメージ
語義リスト ・慣用表現
クリックでその項目にジャンプ
1《人やものの空中落下》人やものが空中や水中を落下する
2《人やものの一部の落下》人やものの一部が落下する
3《身体部位の下への移動》人の体の一部が下方向に移動、もしくは下向きになる
4《自身が持つものの減少・消滅》人が自身に持つものが除去されたり、消滅したりする
5《地表に沿った落下》人やものが地表に沿って高いところから落下する
6《能力の低下》人や機械などの持つ能力や潜在的な力が低下する
7《気分の低下》人の気分や意欲が低下する
8《評価の低下》人やものが持っていた評価や美徳が下がる
9《地形の傾斜》地形、もしくは崩落などの結果、大きな傾斜や段差がある
10《陣地の陥落》陣地などが攻撃され陥落する
11《人の攻略》人を説得などの手段で攻略し、その人が自分の思った通りにできる状態になる
12《付着物の剥離》人やものの表面の付着物、もしくは被覆物が剥離する
13《光・影の到達》光や影などが下方のどこかに到達する
14《照明・動力源の切断・弱化》照明や電気などの動力源が切断されたり、弱められたりする
15《苦境への転落》人が苦境に陥る
16《普通でない状態への転落》人が通常の意識や精神状態ではない状態になる
17《都落ち》人が逃避や左遷などの事情で中央から地方へ移動する
18《不合格・不選出》人が選考によって不合格・不選出になる
19《不合格になる》試験などで不合格になる
20《抜け落ち》あるべきものが抜ける
21《納得》人が納得する
22《数値・数量の低下》人やものの数値や数量が小さく、または少なくなる
23《決済》決済される
24《利益の到達》受益者に利益や利益を生み出す手段が与えられる
25《序列の低下》人やものの序列や地位などが低くなる
26《質・レベルの低下》人やものの質やレベルが下がる
慣用表現 猿も木から落ちる、目から鱗(うろこ)が落ちる、(問うに落ちず)語るに落ちる、人後に落ちない、ほお[ほっぺ(た)、あご]が落ちる、理に落ちる、巨星墜つ、雷が落ちる、腑(ふ)に落ちる、手[手中]に落ちる
全体解説
複合語
語義リストに戻る
1 《人やものの空中落下》
自動詞 初級 ★★★ 表記落ちる
人やものが空中や水中を落下する
類義語落下する
文型
〈人・もの〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 ○ 結果・完了 △
例文
連続して聞く
きのう、北海道で飛行機が落ちたそうです。
パラパラと小雨が落ちてきた
この旅館のお風呂は、滝のようにお湯が落ちてくる「打たせ湯」が有名です。
「落馬」は、「人が乗っている馬から落ちる」という意味です。
「木村くんたちとけんかした?」「けんかじゃないけど・・・。木村くんたちがビーチに落とし穴を掘って、それに私が落ちたから、すっごく笑われたんだよね」
砂漠では、地平線に太陽が落ちると、たくさんの星が見えてくる。
コロケーション
〈人・もの〉が落ちる 必須項
人工的飛来物:飛行機、ヘリ(コプター)、ロケット
自然現象:雪、雨粒、太陽(日)、流れ星
人:人、酔っぱらい
その他:もの(一般)
飛行機が落ちるときに、その模様をもっとも正確に記録しているのはフライト・レコーダーである。 (枝川公一著 『私家版アメリカ語感辞典』, 1998, 834) コーパス
乾いた軒の瓦に大粒のがポツリと落ちた。 (川島民親著 『スズメバチの死闘』, 1988, ) コーパス
博多に着いた時はが落ちていた。 (石川文洋著 『てくてくカメラ紀行』, 2004, 291) コーパス
〈到達点〉に落ちる
地表面:地面、地上、地平線、山、道端
人の体:足元、頭、頭上、肩、ほお
地表(基準点より低い場所):川、海、溝、○の底、水、井戸
屋内:床、部屋、家
位置関係:中、内、側、ほう、下、○の上、近く、すき間
桜が散って、地面に花びらが落ちていました。 (Yahoo!ブログ, 2008, 乗り物) コーパス
帽子を留めるヘアピンがに落ちる。 高里椎奈著 『本当は知らない』, 2001, 913) コーパス
カムパネルラはに落ちたザネリを助けようとして溺れ死んだ。 (鎌田東二著 『霊性の文学誌』, 2005, 902) コーパス
彼女の足元にポトリと煙草が落ち、ローファーがそれを踏み付けた。 (鹿島田真希著 『二匹』, 1999, 913) コーパス
〈基準点〉から落ちる
空中:空、上空
より高い場所:木、ホーム、馬
折り悪しく厚い雲に覆われたから雨粒が落ちてきた。 (森村誠一著 『人間の剣』, 2001, 913) コーパス
棋院と横浜の行き帰り、頭の中にあるのは碁ばかり、足を踏み外して駅のホームから落ちたこともあった。 (藤沢秀行著 『藤沢秀行』, 1987, 795) コーパス
〈(落下の)様態〉落ちる
逆さまに、まっすぐ(に)、垂直に、静かに、一緒に、ぽとんと、ぱらぱらと、無造作に
もう少しで僕達は、崖下にまっさかさまに落ちていたところでした。 (Yahoo!ブログ, 2008, 超常現象) コーパス
〈結果〉落ちる
点々と
解説
この語義は、人やものが落下することを表す。
人が落下する場合は、無意識、または意図せずに落下する場合に「落ちる」が用いられ、意図的に落下する場合(バンジージャンプやパラシュートなど)は、基本的に「飛ぶ」や「降りる」が使われる。
誤用解説
(空を見て)さっきまで飛んでいた飛行機が落ちている
(地表を見て)飛行機が落ちている
(木を見て)先週まできれいだったモミジの葉がすっかり落ちている
この語義では、語義2と異なり、「結果・完了」を用いて、落下物が落下前にあった場所を描写することはできない。
語義リストに戻る
2 《人やものの一部の落下》
自動詞 初級 ★★★ 表記落ちる
人やものの一部が落下する
類義語落下する
文型
〈もの〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 △ 結果・完了 △
例文
連続して聞く
「桜ももう終わりだね。あんなに花びらが落ちてる」「きれ~い!まるで雪みたい」
寒くなって、道に枯れた葉っぱがたくさん落ちている
この通りの並木は、すっかり葉が落ちている
試合が終わった選手たちの汗がぽたぽたと床に落ちていた
彼女はスカートに涙が落ちても、じっと動かなかった。
「お母さんの病気、どう?」「抗がん剤の影響で髪がすっかり落ちちゃったけど、前より元気だよ」
コロケーション
〈もの〉が落ちる 必須項
自然物:葉、どんぐり、花びら
人の一部:髪(の毛)、涙、汗
ある秋、観察会でキリの蕾を見ていたら、いきなりがどさっと落ちた。 (柿原申人文・絵 『草木スケッチ帳』, 1998, 472) コーパス
当日はが解答用紙に落ちるほどの暑さで、頭はボーとしてくるし、なんでこの時期にやるのかと不満をどこかにぶつけたいくらいでした。 (佐藤尚弘著 『35歳までに自分を変えたい人の勉強法』, 1999, 159) コーパス
〈到達点〉に落ちる
地表面:地面、地上、道路、道、舗道、歩道、山、道端
人の体:足元、頭、頭上、肩、頬(ほお)
地表面(基準点)より低い場所:落とし穴、川、海、溝、○の底、線路、滝つぼ、水、井戸
屋内:床、部屋、家
位置:〇〇の上、中、内、側、方(ほう)、下、○の上、近く、すき間
蛇口をきちんと締めていないシャワーの取っ手から水滴が垂れるように、一粒また一粒と涙が膝の上に落ちた。 (スー・グラフトン著;嵯峨静江訳 『危険のP』, 2001, 933) コーパス
〈様態〉落ちる
静かに、ころんと、ぽろんと、はらはらと、ぱらぱらと、ぽたぽたと、自然に、急に
ついでばらのつるが、何本もばらばらと落ちてきた。 (トールモー・ハウゲン作;木村由利子訳 『トロルとばらの城の寓話』, 2002, 949) コーパス
〈落下したものの様態〉落ちる
あちらこちらに、点々と
積んでいたダンボール箱などはあちこちに放りだされ、中味の食料が点々と落ちている。 佐藤健著 『マンダラ探険』, 1988, 180) コーパス
解説
この語義は、人やものの一部で、上部にあったものが落下することを表す。
「結果・完了」は、到達点に落下した物についても、基準点の落下後の状態についても述べることができる(例文2、3)。
(イヤリングを見て)床にイヤリングが落ちている。(到達点に落下した物:イヤリング)
(顔を見て)「あれ、左耳、イヤリングが落ちてるよ」(基準点の落下後の状態:左耳)
固定されていたものが外れるだけで、必ずしも「落下」はしていない場合にも、使用されることがある。
固いものを食べたら、前歯がぽろりと落ちた
いつの間にか本につけておいた付箋(ふせん)が落ちていた
クリーニング店では、洗っているときにボタンが落ちるととても困るそうだ。
語義リストに戻る
3 《身体部位の下への移動》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人の体の一部が下方向に移動、もしくは下向きになる
類義語下がる
反義語上がる、持ち上がる
文型
〈体の一部〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
その知らせを聞くと、受話器を持つ手がだらりと落ち、受話器が床に転がった。
歩くときには、首が前に落ち、背中が丸まった、いわゆる猫背にならないよう注意しましょう。
ドライバーで思いっきり打ってもあまり距離が伸びないのは、ダウンスイングのとき右肩が落ちているからである。
骨盤周辺の筋肉が緩むと、内臓が下に落ちるそうです。
プレゼン中、発表者の視線が手元に落ちていることが多かったので、先生に注意された。
(空手で)相手に倒されないためには、重心を低くすることが大切です。ひざを曲げるだけでは体の重心は落ちません。気持ちを腹の下に集中させてひざをゆっくり曲げてください。
コロケーション
〈体の一部〉が落ちる 必須項
体の一部:腰、右肩、肘(ひじ)、まぶた、手、膝(ひざ)、土踏まず
体の動き・機能:重心、目線、視線
黒い瞳がふっと曇って、小さながシュンと寂しげに落ちる。 (加納邑著 『黒ねこラブラブ注意報』, 2001, 913) コーパス
続いて、教授の冷ややかな視線がベネチアの上に落ちた。 (ベティ・ニールズ作;塚田由美子訳 『愛を演じて』, 2002, 933) コーパス
解説
この語義は、人の体の一部が下方向に移動したり、下向きになったりすることを表すほか、体の動きや機能が下向きに行われる場合も含む。例えば、「視線[目線]が落ちる」は「視線[目線]」が「目(基準点)」から「視覚が捉える対象(到達点)」までを「線」と表し、その線が下向きに変化することを表す。「重心」は「下腹部にある、体のバランスがとれる点」を表し、「重心が落ちる」は姿勢を変えたり、意識を集中させたりすることで、そのバランスがとれる点が低くなることを表す。
「まぶたが落ちる」は、実際にまぶたが下方に移動する動きを表す場合と、眠り始めることを表す場合がある。
語義リストに戻る
4 《自身が持つものの減少・消滅》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人が自身に持つものが除去されたり、消滅したりする
類義語取れる
文型
〈体内の一部〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
「あれっ、やせた?」「そうなの!ダイエットしたら、1か月で5キロも体重が落ちて・・・」
二の腕や背中のぜい肉は、簡単には落ちない
東京に来て10年もたつので、すっかり国のなまりも落ちた
薬を飲んだら腰の痛みも落ちたので、今日は会社に行くことにしました。
引っ越して以来、運気が落ちている気がする。
息子はまるで憑き物(つきもの)が落ちたようにまじめになり、自分から勉強までするようになった。
コロケーション
〈体内の一部〉が落ちる 必須項
体の部分:筋肉、ぜい肉、(皮下/内臓)脂肪、水分、胸
重さ:体重、ウェート
運勢:厄、運(気)、つき、穢れ(けがれ)
その他:疲れ、痛み、なまり、煩悩、憑き物(つきもの)
筋肉が落ちるとシワやタルミも増えていきます。 (駒崎優著 『「歩き方」ひとつで生き方が変わる』, 2003, 498) コーパス
食事制限だけのダイエットでは最初は体重が落ちても、筋肉が衰えていってしまいます。 (COSMOPOLITAN 日本版, 2001, 一般) コーパス
〈様態〉落ちる
緩やかな変化:自然に
短い時間に大きな変化:急に、急激に
滞りなく:順調に
困難なく:楽に
体脂肪って急に落ちたりすることありますか? (Yahoo!知恵袋, 2005, 健康、病気、ダイエット) コーパス
語義リストに戻る
5 《地表に沿った落下》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人やものが地表に沿って高いところから落下する
類義語(身に着けるもの)下がる、(地形)崩れる
文型
〈人・もの〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 × 意思 △ 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
ショルダーバッグのひもが肩から落ちた
「メガネ、変えるの?」「ん~、ちょっと下を向くと落ちちゃって不便なんだよね」
「どうしたの?そのけが」「実は、階段から落ちちゃって
雪崩がすごい速さで斜面を落ちてくる映像をテレビで見た。
気配を感じて振り向くと、山が轟音とともに、こちらに向かって落ちてきた
諏訪の御柱祭(おんばしら)は、人を乗せた大きな木が急坂を落ちていくシーンがよくニュースで放送される。
コロケーション
〈人・もの〉が落ちる 必須項

自然物:雪崩、表土、土石
身に着けるもの:(バッグなど肩の)ひも、メガネ
タイヤ:前輪、車輪
その言葉の終らないうちに、山でも崩れて、一度に土砂が落ちて来たかのような音がした。 (新田次郎著 『聖職の碑』, 1976, 913) コーパス
〈基準点〉から落ちる
山、山頂、路肩、肩、階段
ソフト・アタッシュバッグがから落ちる。 (梅原克文著 『カムナビ』, 2002, 913) コーパス
〈通過点〉を落ちる
斜面、(急)坂
こうした状況のなかで、上級レベルのスキーヤーがステップアップをめざす時に大切にしてもらいたいのは、斜面を落ちる力を効率的に取り込んだショートターンをすることです。 (月刊SKI JOURNAL, 2002, スポーツ) コーパス
解説
この語義は、人やものが空気中を落ちる落下ではなく、地表などの斜面(体のラインなどを含む)に沿って高いところから移動し、位置が変化する場合を表す。
語義リストに戻る
6 《能力の低下》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人や機械などの持つ能力や潜在的な力が低下する
類義語下がる、低下させる、悪化する
反義語上がる、向上させる、改善する
文型
〈能力・潜在的な力〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
「週末、山に登られたそうですね」「ええ、でも久しぶりで。体力が落ちたのを痛感しましたよ」
年をとってから、昔と比べて、随分記憶力が落ちている
「あれっ、メガネ?」「最近、視力が落ちちゃって・・・ゲームのし過ぎかな」
先月からコンディションが落ちているからか、昨日の大会でも良い記録は出なかった。
風邪をひいたせいか味覚が落ちて、食べ物がおいしくない。
3年生が卒業すると、全国大会で優勝までしたバスケ部の戦力がぐっと落ちてしまうと、みんな心配している。
コロケーション
〈能力・潜在的な力〉が落ちる 必須項
能力:能力、国力、戦力、体力、記憶力
潜在力:免疫力、スペック、機能、性能、(基礎)代謝、効果、味覚
身体の状況:体調、コンディション
後半戦での巻き返しを図ったはずなのに、体が思うように動かない。 自分でも体力が急激に落ちていることが分かりました。 (君原健二述;助清文昭著 『君原健二聞書きゴール無限』, 2002, 782) コーパス
体内のインスリンが不足すると抵抗力が落ち、風邪などの病気にかかりやすくなります。 (宮川高一監修;池上保子料理指導 『糖尿病に良い献立』, 2005, 493) コーパス
〈起きる確率の高さ〉落ちる
確実に
〈程度〉落ちる
相当(に)
〈様態〉落ちる
ガクンと、格段に[と]
その年齢を過ぎると、記憶力がガクンと落ちてきて、本屋で何時間も費やしても、一週間もすれば忘れてしまうそうである。 (堀場雅夫著 『仕事ができる人できない人』, 2000, 159) コーパス
語義リストに戻る
7 《気分の低下》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人の気分や意欲が低下する
類義語下がる、低下する
反義語上がる、向上する
文型
〈気分・意欲〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
親に勉強しろと言われると、ますますやる気が落ちる
「この前の試験、太郎君らしくない成績でしたね」「ええ、あれ以来、学習意欲がすっかり落ちて困ってるんです」
夜中になってもみんなのテンションが落ちず、パーティーは朝方まで続いた。
疲労やストレスで気持ちが落ちているときは、免疫力も下がります。
「あ~、ダイエットしなくちゃ」「大丈夫!夏になれば食が落ちて、自然にやせられるよ!」
けがのためにエースが不在になって以来、チームの士気が落ちている
風邪をひいたり、体調を崩すと、食欲が落ちます
コロケーション
〈気分・意欲〉が落ちる 必須項
気分:気持ち、メンタル、気分、エネルギー、心
意欲:モチベーション、テンション、意欲、気力、士気
何となくみんなのテンションが落ちて、沈黙が支配した。 『文芸誌「そして」にかかわった作家たち』, 2004, 913) コーパス
スケジュールを立て、張り切って仕事をはじめても、しだいにモチベーションが落ちてくることは誰にでもあるはず。 (ライフ・エキスパート編 『仕事ができる人のちょっとしたコツ400』, 2004, 336) コーパス
〈様態〉落ちる
急に
〈結果〉落ちる
完璧に、完全に
語義リストに戻る
8 《評価の低下》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる、堕ちる
人やものが持っていた評価や美徳が下がる
類義語下がる
反義語上がる
文型
〈評価・美徳〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 △
例文
連続して聞く
B高校は、学校の評判が落ちないように、厳しく校則が決められている。
テレビによく出るあの専門家は解説が下手で、しだいに視聴者の評価が落ちてきた
あんな人を推薦したら、私の信用まで落ちそうだ
「テレビも週刊誌も、不倫騒動の話ばっかりだね」「あの女優さん、イメージがすっかり落ちて、仕事も減ったらしいね」
著名な学者が研究費の不正使用で起訴され、権威が地に落ちてしまった
新人アイドルが次々にデビューして、彼女の存在感は少しずつ落ちてきている
コロケーション
〈評価・美徳〉が落ちる 必須項
人からの評価:評判、信用、人気、名声、名、名誉
人の美徳:品位、権威、威厳、印象、〇〇感(存在感)
「大学で理工系学部の人気が落ち、研究者、技術者に人材が集まらなくなっているという。これは若者の移り気というより、もっと構造的で根深い問題を含んでいるようだ。… (川人博編 『「東大卒」20代の会社生活』, 1994, 335) コーパス
私たち大人の中にある「子どもらしさ」をわが子に見せたからって、親の権威が落ちるわけではありません。 (増田修治著 『話を聞いてよ、お父さん!比べないでね、お母さん!』, 2001, 375) コーパス
〈様態〉落ちる
時間の大きな変化:急に、急激に、ガクンと
大きな変化・大きな差:格段に[と]
〈起きる確率の高さ〉落ちる
確実に
解説
この語義は、人やものの評価が(大幅に)下がることを表す。評価や美徳が最低レベルまで失墜したことを言うときには「地に落ちる」という表現がよく用いられる。
語義リストに戻る
9 《地形の傾斜》
自動詞 上級 ★ 表記落ちる
地形、もしくは崩落などの結果、大きな傾斜や段差がある
類義語(崩落の場合)崩れる
文型
〈地形・崩落した場所〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
大雨による崩落で、この先は道路の路肩が落ちている
新潟県の「親知らず子知らず」は、かつては断崖が海に向かって落ちる交通の難所として有名であった。
頂上から下をのぞくと、雪の斜面が一気に下に落ちていた
その尾根の道は、両側の斜面が急角度に落ちていて、恐怖を感じずにはいられなかった。
この道は、山側は切り立った崖、川側は、アスファルトの路肩がすぐに早瀬川に向かって落ちている
このあたりからは、深く海底が落ちているので、ダイビングをするときは注意が必要だ。
コロケーション
〈地形・崩落した場所〉が落ちる 必須項
場所:山、海底、道、道路、路肩、
地形:断崖、坂、(急)斜面、傾斜
そのが海に落ちてゆく途中の崖腹を切り拓き、改札口もないこの無人駅が出現した…という状況がよくわかる。 (茜嶺治著 『『歴史紀行』海の見えるプラットホームから』, 2004, 915) コーパス
“美の島”と呼ばれるにふさわしく、東海岸は花で埋まっていたのだが、いっぽう、西側は険しい山々が続き、海岸線にむかってがストンと落ちていく。 (松本葉著 『どこにいたってフツウの生活』, 2003, 914) コーパス
〈方向〉に(向かって)落ちる
下、海、〇〇川(地名)
〈様態〉落ちる
一気に、急角度に、すぐに、なだらかに
解説
この語義は、「落ちている」または「落ちる+名詞(例:断崖が海に向かって落ちる交通の難所)」という形でしか用いられない。これらの形で、地形、もしくは崩落などの結果、急激で大きな傾斜や段差があることを表す。
似た言い方に「傾斜が落ちる」という表現があるが、こちらは語義22の意味で使われており、「傾斜の程度が小さくなる」すなわち「傾斜が緩やかになる」という意味を表している。
例:この登山道は、途中から傾斜が落ちて楽になるが、道が細くなる。
地形以外にも高低差がある場合に用いられることがある。
「頬(ほお)が落ちる」
例:入院中の彼は、目がくぼみ、頬(ほお)が落ちて、まるで別人のようだった)。
語義リストに戻る
10 《陣地の陥落》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる、墜ちる
陣地などが攻撃され陥落する
類義語陥落する、手[手中]に落ちる
文型
〈陣地〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 △
例文
連続して聞く
開戦1週間で、首都が落ちた
あの島が敵国に落ちれば、我が国の形勢は大変不利になる。
王宮が革命軍の手に落ち、国会も全く機能しなくなった。
戦国時代には、城が落ちると、夫とともに自害する夫人も多くいた。
あの要塞が落ちたら、敵軍が市街地まで到達するのに時間はかからないだろう。
金融機関のセキュリティは、取引の関係上、ひとつ陥落させられれば、同様のセキュリティを持つ企業はすべて落ちる可能性がある。
コロケーション
〈陣地〉が落ちる 必須項
建造物:城、城塞、要塞、基地、本丸、とりで、司令部
場所:首都、都、拠点
張鎬はようやく目的地に着いたが、が陥ちて三日後だった。 (チョ人穫原作;田中芳樹編訳 『隋唐演義』, 2004, 913) コーパス
サイパンが落ちる一月前、岡田は重臣たちの意向を伝えるために、東條を重臣会議に招いた。 (甲斐克彦著 『真珠湾のサムライ淵田美津雄』, 1996, 289) コーパス
〈敵(国・組織・軍隊)の名称(の手)〉に落ちる 必須項
国の名称
組織名称:テロ組織
軍の名称:米軍、国連軍、革命軍
解説
この語義は、戦いなどで城や陣地が攻撃され陥落することを表す。「落ちる」だけでなく「〇〇の手[手中]に落ちる」(〇〇は陥落された人や組織)の表現が用いられる場合もある。
語義リストに戻る
11 《人の攻略》
自動詞 上級 ★ 表記落ちる
人を説得などの手段で攻略し、その人が自分の思った通りにできる状態になる
類義語(警察)自白する
文型
〈人〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
ベテラン刑事の追及にあい、犯行を否認していた容疑者がついに落ちた
彼女が落ちなかったときは、にっこり笑ってその場を立ち去るしかないでしょう。
やぎ座のあなたはラッキーデー!あの人の心があなたの魅力に落ちるかも!
あの人は金では落ちない人だから、買収なんて考えても無駄だ。
彼は弁舌巧みでイケメンだから、女性客はすぐに落ちて勧められるままに高い商品を買ってしまう。
コロケーション
〈人〉が落ちる 必須項
容疑者、犯人、彼女、彼
〈様態〉落ちる
簡単に、容易に
〈結果〉落ちる
完全に
解説
この語義は、人を説得などの手段で攻略し,その人が自分の思った通りにできる状態になることを表す俗語的な表現である。主に意中の異性の気持ちについて用いられるが、警察の事情聴取の場面などでも用いられる。とてもくだけた表現なので、フォーマルな書き言葉や敬語と同時に使用されることはほぼない。
語義リストに戻る
12 《付着物の剥離》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人やものの表面の付着物、もしくは被覆物が剥離する
類義語取れる、(外壁など)崩れる
反義語つく
文型
〈付着物・被覆物〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
「これがお父さんからもらった車?」「うん、もうかなり塗装も落ちちゃってるんだけどね」
「どうしよう、ボールペンのしみ、洗剤でも落ちないよね」「ベンジンを使えば?ほら、落ちてる、落ちてる
「日焼け止めは、どうやって落としたらいいですか」「専用クレンジング不要と書いてあれば、洗顔で落ちます
知らないうちにかさぶたが落ちて、新しい皮膚ができていた。
薬用せっけんでよく洗ったので、手についていたばい菌もきっと落ちているはずだ。
髪や服に着いたタバコのにおいは、なかなか落ちない
コロケーション
〈被覆物・付着物〉が落ちる 必須項
表面全体を被覆する:メイク[化粧]、泡、色、かさぶた、光沢、日焼け止め、曇り止め
表面の一部に付着する:汚れ、しみ、さび、垢(あか)
その他:匂い
私の足もとに座った絹代は、化粧が落ちて、中学生の頃の細目に戻っている。 (綿矢りさ著 『蹴りたい背中』, 2003, 913) コーパス
汚れが落ちたら、冷めないうちにそこをふき取ります。 (佐光紀子著 『重曹・酢・石けんでナチュラルおそうじ』, 2004, ) コーパス
〈道具・方法〉で落ちる
方法:クリーニング、洗濯、洗顔、シャワー、もみ洗い
せっけん・溶剤など:水、お湯、せっけん、洗剤、ベンジン、クレンジング
道具:歯ブラシ、たわし、紙やすり
そうなった時に、泥汚れは簡単に水洗いで落ちますが、水垢はそうは行きません。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 自動車) コーパス
合皮の部分は靴専用クリーナーなどで多少落ちるかもしれません。 (Yahoo!知恵袋, 2005, ファッション) コーパス
〈様態〉落ちる
容易に、簡単に、楽に
あとは乾いた布で磨くと汚れが簡単に落ち、木製の家具にもツヤが出ます。 ( 『暮らしの達人』, 2001, 590) コーパス
〈結果〉落ちる
きれいに、完全に、十分に
熱いうちに新聞紙でふくと、ススがきれいに落ちる。 (神谷明宏,柴田俊明編著 『キャンプ&野外生活ワンダーランド』, 1998, ) コーパス
解説
この語義は、人やものの表面の被覆物、もしくは付着物が剥離することを表す。全体を覆う「光沢」や「色」が経年劣化などで薄くなる場合も、一部に付着する「汚れ」や「泥」、「さび」などを意図的に除去する場合も含む。
この語義では、既に被覆物や付着物が剥離してその場にない場合(以前ついていたものが現時点で確認できない場合)でも、以前はそこに存在していたことが明らかな場合には、結果完了で述べることが可能である(例文1、例文4)。例えば例文4では、「かさぶた」がいつの間にか剥離し、今は「かさぶた」を確認できない場合でも、真新しい皮膚を見て「かさぶたが落ちた」と言うことができる。
語義リストに戻る
13 《光・影の到達》
自動詞 上級 ★ 表記落ちる
光や影などが下方のどこかに到達する
類義語(日が)差す
文型
〈光・影など〉が〈到達点〉に落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 ○ 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
リビングには大きな窓から自然な光が落ちてくる
舞台を照らしたスポットライトが、グランドピアノと歌手の上に落ちていた
青々と茂る葉の間からは、静かな散歩道に木漏れ日(こもれび)が落ちていた
「葉とらずりんご」は、りんごの表面に葉っぱのかげが落ち、見た目は悪いものの、味は甘くておいしい。
二人の短いシルエットが床に落ちていた
夕暮れ時の日差しが落ちて、山々をあかね色に染めている。
コロケーション
〈光・影など〉が落ちる 必須項
光:日光、スポットライト、日差し、反射
影:日陰、夕闇、日影
雷:稲妻
その他:シルエット
不思議に思って外に出てみると、大きな月が高く昇っていて、白いが家やニワトリ小屋や葉の落ちた庭の木々にふりそそいでいた。 (いわむらかずお著 『風といっしょに』, 2002, ) コーパス
ものすごい音がして、が近くに落ちた。 (清水義範著 『ゴミの定理』, 2004, 913) コーパス
ビルから出ると、表参道に夕闇が落ちていた。 (高樹のぶ子著 『ナポリ魔の風』, 2003, 913) コーパス
〈到達点〉に落ちる 必須項
床、歩道、舞台
時がとまってしまったかと思われたほどのどかな朝で、金色の日の光が幾筋も喫煙室の床の上に落ちていた。 (川村二郎ほか編 『集英社ギャラリー「世界の文学」』, 1989, 908) コーパス
解説
この語義は、光や影などが下方のどこかに到達することを表す。スポットライトのように光が視界の一部分に当たる場合にも、視界全体に明るく、もしくは暗くなる場合にも用いられる。
この語義では、以下のような慣用的な意味を持つ表現もある。
「かげが落ちる」は、「顔・瞳(ひとみ)・表情にかげが落ちる」で、表情などが暗くなるという意味である。
「雷が落ちる」は自然現象を表すほかに、「(親や教師、上司などが主に教育的・指導的観点から子供、学生、部下を)大声でどなりつける」という意味もある。
例:授業中、子供たちがあまりにうるさかったので、ついに先生の雷が落ちた
語義リストに戻る
14 《照明・動力源の切断・弱化》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
照明や電気などの動力源が切断されたり、弱められたりする
類義語切れる、弱まる
文型
〈動力源・インターネットの接続など〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
PC内で極端な温度上昇があると、電源が落ちることがあります。
地震などで電気が落ちても、火は使えるようにしておきたいものだ。
ブザーの音が鳴ると場内の照明が落ち、舞台の幕が上がった。
社内の不祥事が報道されるとホームぺージへのアクセスが殺到し、サーバーが落ちてしまった
「新しいスマホ、どう?」「すごくいいよ!もうアプリが落ちたり、動作が不安定になったりすることもなくなったし」
導入初日は、高負荷がかかってシステムが落ちたらどうしようと、プログラマーたちは心配でならなかった。
ブレーカーが落ちたみたいね。
コロケーション
〈動力源やインターネットの接続など〉が落ちる 必須項
動力源:電源、電気、火
照明:照明、明かり、電気
インターネット関係機器:サーバー、ルーター
接続:ネット、サイト、接続、回線、システム
その他:ソフト、アプリ、ブレーカー
電源を入れて数時間経つと勝手に電源が落ちてしまい、仕事にも支障が出てきます。 (Yahoo!知恵袋, 2005, パソコン、周辺機器) コーパス
ブザーが鳴り、照明が落ちる。 (歌野晶午著 『女王様と私』, 2005, 913) コーパス
〈結果〉落ちる
完全に
〈様態〉落ちる
突然、不意に
最近パソコン使用中に突然電源が落ち再起動することが多々あります。 (Yahoo!知恵袋, 2005, パソコン、周辺機器) コーパス
解説
この語義は、照明や電気などの動力源、またインターネットの接続などが切断されたり、弱められたりすることを表す。
インターネット関係の機器や接続などを表す語とは広く共起するが、照明関係の語の場合は、「明かり」や「電気」以外の語とは共起しにくい。「落ちる」と対応する他動詞「落とす」の場合は、「落ちる」に比べてインターネット関係の語とはあまり共起しないが、照明関係の語とよく共起する。
なお、「ライトが落ちる」「スポットライトが落ちる」など、一部を照らす場合は、「電源が切れ、光が消える」や「光が弱まる」という意味のほかに、語義13の「照明が当たる(光が届く)」という意味を表すこともある。
語義リストに戻る
15 《苦境への転落》
自動詞 上級 ★ 表記落ちる、堕ちる
人が苦境に陥る
類義語(深くその状態になる場合)陥る
文型
〈苦境〉に落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
現代でも悪事を重ねると地獄に落ちると信じている人がいる。
「友達から絶対もうかる話って聞いたんだけど」「そんなの信じると、思わぬ落とし穴に落ちるかもよ」
彼は会社が倒産して、貧乏のどん底に落ちてしまった
最近、大学生が悪徳商法のワナに落ちる事件が相次いでいる。
多重債務という泥沼に落ちそうになっている人を助けるシステムが必要だ。
野菜が病気になるたびに化学肥料を使うと自己免疫力が低下し、また農薬に頼るという悪循環に落ちてしまう
コロケーション
〈苦境〉に落ちる 必須項
困った状況:窮地、罪、冤罪(えんざい)、わな、不幸、泥沼、闇、危機
深い場所の比喩:地獄、奈落、絶望の淵(ふち)、深淵、あり地獄、どん底、落とし穴
形:悪循環、スパイラル
心理状態:不安、恐怖、混乱
なぜ身を慎まず、みずから窮地に落ちるようなまねをする。 (今戸栄一著 『超・三国志-赤壁秘話』, 1993, 913) コーパス
それだけに、また泥沼に落ちないよう支えてやりたいという彼女の気持ちはよくわかる。 エリック・ガルシア著;酒井昭伸訳 『鉤爪の収穫』, 2005, 933) コーパス
善いことをすると、天に生まれるとか、いちばん悪ければ、地獄に落ちる。 岸田秀,三枝充悳著 『仏教と精神分析』, 1993, 180) コーパス
語義リストに戻る
16 《普通でない状態への転落》
自動詞 上級 ★ 表記落ちる
人が通常の意識や精神状態ではない状態になる
類義語陥る
文型
〈普通でない状態〉に落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
母はよほど疲れていたのか、ベッドに横になるとすぐに深い眠りに落ちた
彼は彼女を一目見るなり、恋に落ちた
同じ職場の男女が恋愛関係に落ちると、いろいろややこしい問題が起こり得る。
H選手は、大事な予選前にスランプに落ちてしまい、日本代表に選ばれなかった。
少しでも募金をすると、世界を救ったような錯覚に落ちることがある。
最近は、人手不足と人件費の削減というジレンマに落ちている企業が多い。
疲れて眠りに落ちる人もよく見ます。
しかし、恋愛には奥手で、そう簡単には恋に落ちません
コロケーション
〈人・組織〉が落ちる 必須項
人:人、彼、彼女、男女
組織:企業
〈非日常的精神状態〉に落ちる 必須項
人間関係:恋、恋愛、誘惑、〇〇関係
無意識:眠り、睡眠
不調・不具合など:スランプ、錯覚、虚無、パニック、不満、ジレンマ、行き止まり
この家でメラニーとゲイブは出会い、に落ちたのだ。 (バーバラ・マコーリィ作;南和子訳 『忘れられた一夜』, 2002, 933) コーパス
二時過ぎにベッドに入り、すぐに眠りに落ちた。 (阿刀田高著 『花あらし』, 2003, 913) コーパス
解説
この語義は、人が通常の判断ができるような意識の状態や精神の状態ではない状態になることを表す。同様の表現として、慣用表現で魚や鳥が死ぬことを「魚[鳥]が落ちる」と言い、柔道では「気絶すること」を「落ちる」と言う。
語義リストに戻る
17 《都落ち》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人が逃避や左遷などの事情で中央から地方へ移動する
類義語下る
反義語上る
文型
〈地方〉へ[に]落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 △ 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
敗れた平家一門は西国へ落ち、山奥などに身を潜めて暮らしたと言う。
九州へ落ちた平家の落人(おちうど)の里として有名なところには、椎葉(しいば)などがある。
戦いに敗れた兵士たちは、都から各地へ落ちて行った
コロケーション
〈地方〉へ[に]落ちる 必須項
地名など:西国、九州
〈中央〉から落ちる
都、京
解説
この語義は、逃避や左遷などの事情で中央から地方へ移動することを表す。歴史的な場面で使用されることがあるが、現代の状況を表す語としては、ほとんど用いられない。
語義リストに戻る
18 《不合格・不選出》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人が選考によって不合格・不選出になる
類義語(検査、試験)不合格になる、(選挙)落選する
反義語(検査)合格する、(選挙)当選する
文型
〈選考の対象〉が〈選考〉に落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 ○ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
銀行の住宅ローンの審査に落ちてしまった
「大学、行くのやめるの?」「うん、行きたかった大学に落ちちゃったからね」
だれも落ちようと思って試験に落ちる人はいないんだから、彼を怒ってもしょうがないよ。
彼女はもう30回以上オーディションに落ちているが、女優になる夢を捨ててはいない。
「政治家は選挙に落ちればただの人」とよく言われる。
彼の作ったスィーツは、国際コンクールの最終審査で落ちてしまった
コロケーション
〈選考の対象〉が落ちる 必須項
人:学生、友達
もの:商品
〈選考〉に落ちる 必須項
選考を行う団体:大学、志望校、会社、第一志望
選考の方法:検査、選挙、試験、審査、選考、オーディション、抽選、テスト、コンクール
選考の段階:事前審査、書類審査、書類選考、面接、最終面接、一次〇〇、二次〇〇
けれども結果は、第一志望の高校に落ちてしまい、兄は見事、東京の難関大学に合格しました。 (香月美里著 『リボーン』, 2005, 913) コーパス
書類選考に落ちていた場合連絡がないということですが、大体どれぐらい待てばいいものなのでしょうか。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 就職、転職) コーパス
解説
この語義は、人が選考に落ちる場合を表すが、同じ内容を異なる助詞で表す場合もある(語義19参照)。
息子は第一志望に[が、を]落ちたら、浪人したいと言っている。
公務員に[が、を]落ちたときのために、民間の内定ももらっておきたい。
語義リストに戻る
19 《不合格になる》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
試験などで不合格になる
類義語不合格になる
文型
〈選考の対象・選考の方法など〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
この科目は、単位が落ちる可能性が高そうだ。
実力不足とわかっていても、何度もエントリーシートが落ちるとショックです。
学会誌に投稿した論文が落ちてしまったと、先輩が悲しそうに話していた。
高3の息子は、第一希望が落ちたら浪人したいと言っているので、困っている。
公務員が落ちたときのために、民間の内定ももらっておきたい。
学科の勉強はしていなかったので、社会人入試が落ちたら、この学校には入れなかった。
コロケーション
〈選考の対象・選考の方法など〉が落ちる 必須項
選考の対象:単位、エントリーシート、論文
選考の方法・段階:第一希望(の試験)、公務員(試験)、社会人入試、面接
解説
この語義は、人が試験や選考などに落ちる場合を表すが、同じ内容を表す場合は、「に」が用いられる方が普通である(語義18参照)。
息子は第一志望が[に]落ちたら、浪人したいと言っている。
万が一、公務員が[に]落ちた場合は、民間に就職してもいいと思っている。
これらの言い方の中では、一般的には語義18の「〈私(選考の対象)〉が〈大学・試験(選考を行う団体・選考の方法や段階)〉に」の形が用いられる。語義19の「〈選考の対象・選考の方法や段階〉が」は、「試験が落ちた」「単位が落ちる」のような言い切りの形では用いられず、上記の例のような条件節や連体修飾節内での使用が多い。「〈試験(選考の方法や選考の段階)〉を」の形もまれに見られ、同様に言い切りの形では用いられない。
語義リストに戻る
20 《抜け落ち》
自動詞 上級 ★ 表記落ちる
あるべきものが抜ける
類義語漏れる、抜ける、欠ける
反義語そろう
文型
〈あるべきもの〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
先発メンバーのリストからキャプテンの名前が落ちている
印刷物のページが落ちていることを「落丁」と言う。
母語の影響か、彼が発音するとhの音が落ちて、「ホテル」が「オテル」のように聞こえる。
この議論は、人々の意識をどう変えていくかという観点が落ちている気がする。
私はあの事故から病院で目が覚めるまでの記憶が落ちている
イベントが中止された場合の説明が落ちていたため、チケット購入者から問い合わせが殺到した。
コロケーション
〈あるべきもの〉が落ちる 必須項
全部がそろうべきもの:(リストなどの)名前、名前(のこぎりの)歯、網目
もともとあるもの:母音、字、記憶、ページ
あるべきもの:ディテール、項目、説明、情報、要素、ページ、プロセス
解説
この語義は、あるべきものの一部が抜け、すべてそろわず漏れることを表す。主に不注意や無意識で抜けてしまったり、欠けていることを描写したり、指摘したりするときに用いられる。
語義リストに戻る
21 《納得》
自動詞 上級 ★ 表記落ちる
人が納得する
類義語納得する
文型
〈こと〉が〈内臓〉に落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
どうしてあの選手が代表に選ばれたのか腑(ふ)に落ちないものがある。
(推理小説を読んでいて)ずっと犯人がわからなかったが、最後まで来て、すべてがストンと落ちた
コーチのアドバイスはひとつひとつ胸に落ち、私のやる気をかきたてた。
先輩の言葉はよくわかり、腹に落ちた
その小説は作者からのメッセージが私の心にストンと落ちて、胸が温かくなった。
コロケーション
〈内臓〉に落ちる 必須項
腑(ふ)、腹、胸、心
僕はひとつに落ちないことがあるんです。 (京極夏彦著 『塗仏の宴』, 1998, 913) コーパス
子のいうことは理論が通ってもいよう、親よりも子の方が書物を読んでいるかもしれない、しかし親はまだそれだけでは納得ができない、まだに落ちない。 (河合栄治郎著 『学生に与う』, 1997, 159) コーパス
〈様態〉落ちる
ストンと、すっと、やっと、見事に、妙に
今のライアンのことばがすとんと胸に落ちた気がした。 (ノーラ・ロバーツ著;芹澤恵訳 『盗まれた恋心』, 2004, 933) コーパス
解説
この語義は、人が納得することを表し、多くの場合「腑(ふ)に落ちる」という形で用いられる。その他に例文2のように、「落ちる」だけが用いられる場合もある。情報を得たときに、理解するまでの時間はかかることもあるが、理解できたときに何の障害もなく心情的にも一気に納得できた場合などに用いる。
語義リストに戻る
22 《数値・数量の低下》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人やものの数値や数量が小さく、または少なくなる
類義語下がる、(量について)減る
反義語上がる
文型
〈数値・数量〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
為替レートが毎日変わり、円の価値が日に日に落ちている
「この血圧なら、薬をやめてもいいですか」「今はこの薬で数値が落ちている状態ですから、飲み続けないとだめですよ」
リーディングは良かったがリスニングのスコアが落ちてしまった
エアコンをつけると、車の走行距離は20%程度落ちると聞いた。
夕方になり、風がやや落ちたので、セイリングもここまでとすることにした。
近くに大きなショッピングセンターができて、商店街の客足が落ちた
コロケーション
〈数値・数量〉が落ちる 必須項
程度・割合:スピード、速度、ペース、〇〇率
量:量、生産(高)、客足、売れ行き
数値:点、スコア
金額・価値:売り上げ、税収、値段、株価、為替
その他:タイム、効果、効率(性)
香の歩く速度が徐々に落ちていく。 (今福美枝子著 『砂の鐘』, 2003, 913) コーパス
売れ行きが落ちた分をどこかで補いたいと思っていた。 (米原ろしゅう著 『箱車面白人生』, 2003, 289) コーパス
うちの飲食店は現在、客足が落ちて経営が苦しいのです。 (Yahoo!知恵袋, 2005, マナー) コーパス
犬は疲れてくると走るペースが落ちてくるが、それよりも犬の動作ですぐわかる。 (植村直己著 『冒険』, 1998, 290) コーパス
〈様態〉落ちる
大きな差:極端に、大幅に
ゆっくり少しずつ:緩やかに
短い時間に大きな変化:急激に、劇的に
その他:日に日に
衝撃が三回続いてから、船のスピードが急に落ちた。 喬林知著 『天に(マ)のつく雪が舞う!』, 2003, 913) コーパス
〈結果〉落ちる
半分に
解説
この語義は、人やものの持つ数値や数量が小さく、少なくなることを表すが、良いことを表す数値の減少には用いられない場合がある。
市内の犯罪発生件数が大幅に(○減った×落ちた)。
交通事故の死亡率が(○下がった×落ちた)。
語義リストに戻る
23 《決済》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
決済される
類義語決済される
文型
〈決済の対象〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
この手形が落ちなかったら、この会社は倒産だ!
あの名画は、昨日のオークションで予想以上の高値、2000万円で落ちた
保険料は、毎月、私の銀行口座から落ちることになっている。
「今月、クレジットカードの支払いが落ちなかったんだよね」「そりゃまずいよ。ブラックリストに載らないうちに早く処理したほうがいいよ」
銀行の残高が少なくて家賃が落ちなかったようで、大家さんが訪ねてきた。
私はカード利用額が落ちた日に、必ず家計簿につけるようにしています。
コロケーション
〈決済の対象〉が落ちる 必須項
手形、名画、カード利用額、〇〇代、〇〇料、金額、家賃
ところが、私のメインバンクが破綻すると、決済のため当座預金に用意しておいたお金は凍結されて、手形が落ちません。 (山田伸二著 『これならわかる日本経済入門』, 2000, 332) コーパス
〈引き落とし先〉から落ちる
(銀行)口座、給料、カード
私もデビットカードの方が良いと思うのですがすぐに口座から落ちてしまうのでお金がない状態では使えないからじゃないでしょうか・・・・・。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 家計、貯金) コーパス
〈決済の方法・手段〉で落ちる
(クレジット)カード、○○円(値段)、オークション
〈名目〉で[として]落ちる
経費、○○費
語義リストに戻る
24 《利益の到達》
自動詞 上級 ★ 表記落ちる
受益者に利益や利益を生み出す手段が与えられる
類義語使う、払う、投入される
文型
〈利益・利益を生み出す手段〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
大きな工場ができ、その周りに産業が広がっても、地元にお金が落ちないこともある。
この村には、農地改良や林道整備などに莫大な予算が落ちました
「最近は、地方の町でも外国人観光客をよく見かけるようになったよね」「うん、おかげで日本全国にかなりの額が落ちてるよね」
新しい施設ができても、固定資産税が落ちるだけで、町おこしにはつながらない。
大規模プロジェクトを県内に誘致することができ、地元に仕事が落ちると期待されている。
これからは、口を開けて仕事が落ちてくるのを待っている時代ではない。
たくさんの人が来れば、商店街にもお金が落ちて、景気が良くなるわね。
コロケーション
〈利益・利益を生み出すもの〉が落ちる 必須項
収入の種類:予算、税(金)、外貨
通貨:円、ドル
その他:金額、仕事、お金、大金
発電所立地の自治体とその周辺自治体に、様々な名目で巨額の交付金が落ちる仕組みになっている。 (朝日新聞山口支局編著 『国策の行方』, 2001, 543) コーパス
〈受益者〉に落ちる 必須項
場所(自治体など):地元、村、町
組織:メーカー、業界
解説
この語義は、受益者(人、自治体、業界など)に対して、利益や利益を生み出す手段が与えられることを表す。この語義で利益が与えられる場合は、受益者は(構成員)自身の経済活動で直接収入を増やすのではなく、第三者の経済活動によって利益を得る場合に使用される。
語義リストに戻る
25 《序列の低下》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人やものの序列や地位などが低くなる
類義語(同じ人やものの場合)下がる
反義語上がる
文型
〈序列・地位〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
K選手は、スタートではトップを走っていたが、折り返し地点では4位まで順位が落ちた
インターネットの台頭により、マスコミ、特に新聞はその地位が落ちてしまったように思える。
私の好きなタレントの好感度ランキングが落ちてしまった
このレストランは、今年、二つ星から一つ星にランクが落ちたそうだ
「スペインのワインって値段の割においしいよね」「うん。値段が安いからって、フランスワインより格が落ちるみたいに言われるのは残念だよね」
近年、母校の学生の不祥事が相次ぎ、学校のステータスが落ちていることは嘆かわしい。
コロケーション
〈序列・地位など〉が落ちる 必須項
順位:順位、番付、ランキング
社会的地位:地位、身分、学年
順序:バージョン、打順
それに、もう高いビルができた分なぜか桜の地位が落ちたような気持ちがつきまとう。 稲本正文;姉崎一馬写真 『森の旅森の人』, 2005, 652) コーパス
解説
この語義は、ある人やものの序列や社会的地位などが(比較対象に比べて)低くなることを表す。この語義では、比較の対象が同じ人やものの以前と現在の差である場合や、異なる2つの人やものの同時期の差である場合がある。
例:A選手は、去年に比べてランキングが落ちている。(同じ人の以前と現在の差)
A選手は、B選手よりランキングが落ちる。(異なる人の同時期の差)
語義リストに戻る
26 《質・レベルの低下》
自動詞 中級 ★★ 表記落ちる
人やものの質やレベルが下がる
類義語下がる
反義語上がる
文型
〈質・レベル〉が落ちる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
「A大学の志願者数、今年はすごく減ったみたいだね」「じゃ、合格ラインも落ちるかな」
市内の保育園は、民営化してからサービス内容が落ちた
果物は甘味が落ちるので、冷やしすぎないようにしましょう。
見積書の安い工場が高い工場より技術が落ちるとは言えない。
サバは鮮度が落ちるのが早いので「サバの生き腐れ」という言葉がある。
規模の小さい職場では、担当者が変わると、業務の質が一気に落ちることがある。
コロケーション
〈質・レベル〉が落ちる 必須項
質・レベル:質、品質、画質、音質、クォリティ、グレード、程度、鮮度
分野:味、切れ味、画像、パフォーマンス、(サービス・投球)内容
右の数字からいけば、少しでも安いアルバイトのコーチを使えればいいわけだが、それだけがおちる。 (守誠著 『円高時代-値段のからくり』, 1986, 337) コーパス
美味しいと評判になり、マスコミに登場するようになって店を大きくすると、が落ちる。 (下重暁子著 『シンプルのすすめ』, 2002, 159) コーパス
鮮度が少し落ちていても、それはそれで、それなりの調理法があるはずです。 (魚柄仁之助著 『うおつか流ぜい肉リストラ術』, 2002, 596) コーパス
〈様態〉落ちる
急に、急激に、ガクンと
解説
この語義は、人やものの質が下がることを表し、必ずしも数値では表せないその人・ものが表す価値などについて述べる。以下のように時間的な変化(低下)を表すのではなく、2つの異なるものの違い(差)も述べることができる。
例:この焼き物の職人の技術は、昔に比べて落ちたと言われる(時間的な変化:低下)。
この工場の技術は、大工場に比べると落ちる(異なる二つのもの違い:差)。
語義リストに戻る
慣用表現
猿も木から落ちることわざ
(木登りが上手な猿も木から落ちることがあるということから)ある分野で優れた人でも失敗することがある
いくらベテランと言われるようになっても「猿も木から落ちるということもあるのだから、気を抜かないで」と言われた。
関本まさかのバント失敗。名手がどうしたことでしょう?それとも今までのバント成功率はランナーが赤星くんだったらから?な〜んてことはないですよね〜。猿も木から落ちるってことで、忘れていいと思います。(Yahoo!ブログ Yahoo!、2008)コーパス
目から鱗(うろこ)が落ちる慣用句
あることがきっかけで、急に目についていた鱗(うろこ)が落ちたかのように鮮明に見えるようになったということ。
伝記を読んでエジソンという人のイメージが一変し、まさに目から鱗(うろこ)が落ちるようでした。
クラマーコーチの指導はすべて具体的で、基本に忠実で的確で、まさに目から鱗が落ちる思いでした。(JOC - 東京オリンピック 1964)コーパス
(問うに落ちず)語るに落ちる慣用句
(秘密にしていることは、質問されると話さないが)自分から話すときは、うっかり本当のことを言ってしまう。
「そんな店は知らない」と答える彼女に、刑事は一言、「語るに落ちましたね。私は店なんて一言も言っていませんよ。人の名前だとは思わなかったんですか」と言った。
小鹿は二十七、八歳である。謀りごとに適さない純朴な人柄のようで、自分のほうから語るに落ちて、風魔という盗賊団の行方を追っていると、口に出した。(高橋 義夫(著)『風魔山嶽党』文藝春秋)コーパス
人後に落ちない慣用句
ひけをとらない。比べても負けない。
あの人は学校で専門的に勉強したわけでもないそうだが、野菜に関する知識は人後に落ちない
大工としての経験と知識では、そうそう人後に落ちないつもりです。(王道アパート大工職人 管武人【アパート投資の王道】)コーパス
ほお[ほっぺ(た)、あご]が落ちる慣用句
とてもおいしいこと
この料理、おいしくてほっぺが落ちそう
秘伝のタレが素材の味を存分に引き立てていて、ほおが落ちそうな美味しさでしたよ。(プロフィール/対談記事 - 異業種ネット|日本全国の経営者と名刺交換ができる!新規登録者は年間3,500社以上!!)コーパス
理に落ちる慣用句
話が理屈っぽくなること
あの人が話し出すと、いつも最後が理に落ちてつまらない。
「…あっしみてえな三下でも何かお役に立つことがありましたら、申しつけ下さいまし」「うむ」刀痕の深い顔を酒に輝かせて、快然と笑った左膳、「まあ、宜いや。話が理に落ちた。しかし、あんな若造の一匹や二匹おれの手ひとつで片のつかねえわけは無えが、・・・」(林不忘(著)『丹下左膳』林不忘|著、光文社2004)コーパス
巨星墜つ慣用句
偉大な人物が死亡する
尊敬する作家、○○先生の訃報が届いた。まさに昭和の巨星墜つという感が拭えない。
「稲原…」鶴岡親分は、そこまで言うと、静かに眼を閉じた。それが親分の最期の言葉であった。まさに、巨星墜つ、の感があった。(大下英治(著)『修羅の群れ』徳間書店)コーパス
雷が落ちる慣用句
(親や教師、上司などが主に教育的・指導的観点から子供、学生、部下を)大声で叱りつける。
いつまでも母親にわがままを言っている末っ子に、ついに父親の雷が落ちた
・・・航空技術審査部に出向いた石原は、ようやく行き詰まっていた戦闘機開発の状況に気付いた。「南方に目を向けなければいけないときに、貴様らは何をやっているのだ!」激怒した石原の雷が落ちて、戦闘機開発の障害だった審査部の幹部らは、即座に更迭され、上層部の風通しが一変した。(髙貫布士(著) 『烈日の海戦』実業之日本社、2004コーパス
腑(ふ)に落ちる慣用句
得た情報を理解でき、心情的にも一気に納得できたことを表す。
あの二人、どうもよく似ていると思っていたが、兄弟だと聞いて腑に落ちた
「あの…」 声をかけたのは香取つぐみさんだった。「今のお話で一つ腑に落ちないんですけど…犯人さんはどうしてそんなに慌てておじいさんを襲ったんですか?・・・」(霧舎巧(著) 『ラグナロク洞』 講談社 2005)コーパス
手[手中]に落ちる慣用句
その人の所有や支配下になる
兵士たちは、王子が敵国の手に落ちたと知ると、士気を奮い立たせて戦闘の準備を始めた。
六月一日、ついにバレテ峠は突破され、ついでサラクサク峠も米軍の手中に落ちた。両峠を米軍に占領されたことにより、尚武集団は総崩れ状態となった。(樋口晴彦(著)『レイテ決戦』光人社 2001)コーパス
執筆:中溝 朋子 校閲:砂川 有里子