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慣用表現
知る人ぞ知る慣用句
一般に広く知られてはいないが、その分野の情報や事情をよく知っている人達の間ではよく知られている。
その歌手は世界的に有名であったが、当時の日本ではあまり知られておらず、知る人ぞ知る存在だった。
ブレゲは知る人ぞ知る時計職人で、その腕から繰り出す精巧な時計の数々は、まさに芸術と言うにふさわしい。(中野明著『腕木通信』,2003,692)コーパス
知らぬが仏ことわざ
事実を知らなければ、嫌な感情に振り回されることがなく、仏のように平穏な気持ちでいられる。
「佐藤さんには最近、付き合い始めた恋人がいるらしいよ」「佐藤さんって山口くんが好きな女の子だよ。知らぬが仏だから山口君には黙っておこう」
(建墓について)吉日や悪日の総合的判断は、これらを総合して判断すべきで、大安だからといって簡単に選んではなりません。もっとも知らぬが仏で、何も知らずに建てることも吉日ではあるのですが、建墓は一生の大事であり、お家の一大事ですから、十分に自分で研究をして鑑定すべきでしょう。(福原堂礎著『間違いだらけの「正しいお墓」』, 2004)コーパス
知る由(よし)[術(すべ)]もない慣用句
仮に知ろうとしても、手段がなく知ることができない。
外と通信できない環境に1週間滞在していた私たちは、世の中で起きている出来事を知る由もなかった。
デッカにとっては、こうした家族からの手紙以外に、父の消息を知る術はなかった。(メアリー・S.ラベル著;粟野真紀子,大城光子訳『ミットフォード家の娘たち』2005,288)コーパス
いざ知らず慣用句
よく分からないが。そうかもしれないが。
「このレストランのコースメニューはあまりよくないね」「本当だね。ファミリーレストランならいざ知らず、ここは高級レストランなんだからもっと工夫してほしいな」
今から二十年前、三十年前ならいざ知らず、現在では多くの家庭や職場にクーラーが入っており、夏場のクーラーは冬場の暖房器具と同様、日常生活の必需品となっている。(初宿正典・高橋正俊・米澤広一・棟居快行著『いちばんやさしい憲法入門』,1996)コーパス
衣食足りて礼節を知ることわざ
人は衣類や食事などの物質的側面が充足してから、初めて心に余裕ができて、礼儀や節度などの倫理的側面を考えて守れるようになる。「衣食足れば礼節を知る」ということもある。
「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるが、礼節を重んじる前に、食料の確保を重視しなければならない事態に陥ることがある。
「衣食足りて礼節を知る」ということわざがありますが、人は二度と生活の心配をしなくて済むようになると、今度は「他の人にも喜んでもらえることをしたい」と、殊勝なことを考えつくようになります。(松田綾子著『ローリスク・ハイリターン起業法』,2005,335)コーパス
井の中の蛙(かわず)、大海を知らずことわざ
(小さな井戸の中に住む蛙は大きい海があることを知らないという意味から)他に広い世界があることを知らず、物の見方や考え方が狭い。
高校でトップクラスの成績だった彼は、自分よりはるかに優秀な学生が大勢いる大学に入ってショックを受けた。まさに「井の中の蛙、大海を知らず」だったのだ。
井の中の蛙、大海を知らずと申すが、拙者も柳川にとじこもって、しばらく世間をみなかったので、だいぶ、世の動きにうとくなったようだ。(歴史を旅する会編『剣豪伝』,2003,281)コーパス
一を聞いて十を知ることわざ
物事の一部を聞いただけで、その全体を理解すること。頭の回転がよく、賢明で察しがいいこと。
彼は一を聞いて十を知る優れた理解力を持っている。私もそうなりたいし、そういう人が味方にいると頼もしい。
なんじは一を聞いて十を知るというように、過去のことを話してやれば、それによって将来のことを推知する人物である、と言って賞賛した。(諸橋轍次著『論語の講義』,1989)コーパス
親の心子知らずことわざ
親が子供に対して持っている愛情を理解せず、子供は自分の考えだけで勝手に振る舞う。
親は子供の健康を願って体にいいものを食べさせようとするが、子供は「これはまずい、あれは嫌だ」と言ってなかなか食べてくれないことがある。まさに「親の心、子知らず」だ。
親の苦労が分かるから フリーターは「親の心子知らず」」を絵に描いたようなものだ、という意見がある。苦労して育て、学校を出したのに、その後も定職に就かず、親の臑をかじり続けているとなれば、親は困惑するだろうし、経済的にも苦しくなる。(長山靖生著『若者はなぜ「決められない」か』,2003)コーパス
知らぬは亭主ばかりなりことわざ
妻の悪行(浮気など)を他の人は知っているのに、亭主だけが知らないでいる。
あの家の奥さんが旦那さん以外の男性とよく会っているところを見かける。どうも浮気のようだが、旦那さんは仕事が忙しく、全く気づいていないようだ。知らぬは亭主ばかりなりというところだ。
足る(こと)を知る慣用句
身分相応に満足することを知る
他人にはあって自分にないものばかりに目を向けて、常に欲しいものが出てきてしまう私に、祖父は「足るを知ることが大事だ」と教えてくれた。
いま与えられてあるものだけで感謝して満足する、足ることを知る、そのほうが人間らしいのではないか。(五木寛之著『人生の目的』,1999,914)コーパス
お里が知れる慣用句
言葉遣いや仕草によって、その人の生まれや育ち、経歴の程度の低さが分かってしまう。
どんなに立派なことを言っていても、ひどいお箸の持ち方をしていてはお里が知れてしまう。
「(略)食事中に席を立つなんて、不作法な。おまけに味噌汁に湯を足して飲むなんて、そんなことをしたらお里が知れますよ」(群ようこ著『家の光』2001)コーパス
得体(えたい)が知れない慣用句
正体がよく把握できない。名詞を修飾する場合は、「得体の知れない」「得体の知らない」もある。
念願だった自分の会社を立ち上げることができたが、将来のことを考えると漠然と得体が知れない不安に襲われることがある。
友義の取り巻きの中で一番親しげにしていた男だ。若いけれど落ち着いた雰囲気がして、ほかの浮ついた連中と比べると増しに見えたが、その分どこか得体が知れない感じもして怖かったのを覚えている。(五百香ノエル著『太陽と月のカタチ』2002)コーパス
推(お)して知るべし慣用句
想像すれば簡単に分かる
大事な試験日はすぐそこまで迫っているのに勉強に集中できず、準備不足。体調も崩してしまった。結果は推して知るべし。不合格だった。
大学を出たばかりの新人の先生はだいたいにおいて、言葉に関しての知識と教養が乏しい。一般社会の新卒者は推して知るべしである。(長島猛人著『チャイムが鳴ったら』2002,370)コーパス
高(たか)が知れる慣用句
程度がそれほど高くないことが分かっている
学生がアルバイトで稼げるお金など高が知れているが、それでも一生懸命働いて親の金銭的な負担を軽くしようとした。
一人でやれることは高が知れているから「仕事は(上司あるいは同僚を)巻き込め」を実践しながら教えていった。(高橋基人著『中国人にエアコンを売れ!』2005)コーパス
物を知る慣用句
知識が多い、精通している
最近知り合った友人は、よく物を知っていて、会話が面白い、魅力的な人だ。
舌なめずりするように名品を語る彼らを見てから、私はワインのようなものに足を踏み入れまいと心に誓ったのだ。そうはいうものの、物を知らない小娘のように思われるのも、私は我慢できなかった。だからレストランやバーに行く前は、時々はワインの特集記事をつまみ読んだりする。(林真理子著『最終便に間に合えば』1985,913)コーパス
執筆:生天目 知美 校閲:砂川 有里子