広がる・拡がる(ひろがる)

状態変化を表す動詞
活用表 1グループ 平板型
コアイメージ
語義リスト
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1《空間の範囲が広くなる》ものが空間に占める範囲が広くなる。
2《現象の範囲が広くなる》社会現象や文化などの及ぶ範囲が広くなる。
3《知覚範囲が広くなる》身体内において、感覚の及ぶ範囲が広くなる。
4《認識可能な範囲が広くなる》認識できる範囲が広くなる。
5《視界が広くなる》視界に入る情景の範囲が広くなる。
6《選択肢が広くなる》選択肢が広くなる。
7《人間関係の範囲が広くなる》人間関係の範囲が広くなる。
8《隙間が広くなる》ものの内部にある空間が大きくなる。
9《閉じているものが開く》ものの内部に存在する、本来は小さな空間が広くなり、全体として大きくなる。
10《差が広くなる》差が広くなる。
11《幅が広い》ものの先の幅が広い。
全体解説
複合語
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1 《空間の範囲が広くなる》
自動詞 中級 ★★ 表記広がる、拡がる
ものが空間に占める範囲が広くなる。
類義語広くなる
反義語狭くなる
文型
〈もの〉が広がる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
池に石を投げると波紋が広がった
帰宅すると、部屋中にケーキの甘い香りが広がっていた
低気圧の予期せぬ動きで、雨の地域が広がった
明日は全国的に晴れ間が広がるでしょう。
広がってしまった染みを取り除くのは難しい。
このあたりは護岸工事がされていないので、大雨が降ると川幅が広がる
コロケーション
〈もの〉が広がる 必須項
面として捉えられるもの:波紋、沙漠、領土、交通網、染み、炎症、晴れ間
立体として捉えられるもの:煙、霧、香り、光、闇、ざわめき
幅のあるものとして捉えられるもの:川幅、道幅
褐色のコーヒーが銀のポットから注がれたとたん、いい香りが部屋じゅうに広がっていく。 (篠藤ゆり著 『旅する胃袋』, 2002, 292) コーパス
つまようじの先に洗剤をつけて、まんなかにつけるとぱっとがひろがる。 (河原ノリエ著;榊原洋一監修 『恋するように子育てしよう!』, 2005, 378) コーパス
〈範囲〉に広がる
湖面、部屋中、町中、全国、腕
このようにすべての音は,水面に広がる波紋と同じように空気中を伝わる一種の波(=空気の密度の周期的な変化)だと考えることができる。 (安斎直宗著 『シンセサイザーの全知識』, 1996, 763) コーパス
しつこい湿疹が、残っていた片方の耳全体に広がった。 (アニー・デュペレ著;藪崎利美訳 『運命の猫』, 2002, 778) コーパス
〈様態〉広がる
網の目のように、徐々に、一挙に、ゆっくりと、ふわふわと
廊下の床には死んだ女性の体が横たわり、血だまりがどんどん広がっている。 (シャーロット・ヴェイル・アレン著;京兼玲子訳 『Eメールは眠らない』, 2004, 933) コーパス
非共起例
〈もの〉が広がる
風船が広がった
風船がふくらんだ
「語義1」は、輪郭が明確ではなく、空間と一体化したものについて、その存在範囲が広くなることを表す。「風船」は輪郭が明確な「もの」であり、空間と一体化しているとは考えられない。よって「広がる」を用いると不自然である。
解説
「語義1」は、空間と一体化したものについて、その存在する範囲が、最初からあった場所を含んで広くなり、その結果、全体として大きくなることを表す。意味の似た表現に「広くなる」があるが、「広がる」が、全体として大きくなる過程に注目した表現であるのに対し、「広くなる」は、狭い状態が広い状態になる点という変化に注目をする。
この「語義1」に対応する他動詞は多くの場合、存在しない。しかし「ものが空間に占める範囲が広くなり全体として大きくなる」という状態変化が、意図的な動作によって生じることもあり得る場合、次例のように、自然な動きを表す自動詞「広がる」に、意図的な動きを表す他動詞「広げる」が対応する。
染み抜きをしたら、染みが広がった
染み抜きをするとき、薬品の量を間違えると、かえって染みを広げてしまうので、必ず指定された量を守ってください。
護岸工事で川幅が広がった
護岸工事で川幅を広げた
誤用解説
「語義1」は、空間と一体化して存在するものの存在範囲が広くなり、その結果、全体として大きくなることを問題とした表現である。したがって、「もの」が遠くに「到達する」という結果を問題にする場合に用いることはできない。次例では、「声」が「先生に到達する」ことが問題にされている。したがって「広がる」を用いると不自然である。
拡声器でグランドの端にいる先生を呼ぶと、ようやく声が先生に広がった
拡声器でグランドの端にいる先生を呼ぶと、ようやく声が先生に届いた
また、「広がる」は、「広くなる過程を経て全体として大きくなる」ことを表すため、広くなる過程が想像しにくい場合には用いられない。
古い家を建て直して、前より広がった
古い家を建て直して、前より広くなった
「古い家」と「新しい家」は、別の「家」であると捉えるのが自然であり、「古い家」が「広くなる過程を経て全体として大きくなる」とは捉えにくい。
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2 《現象の範囲が広くなる》
自動詞 中級 ★★ 表記広がる、拡がる
社会現象や文化などの及ぶ範囲が広くなる。
類義語広まる
反義語減る
文型
〈現象など〉が広がる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
政府の急な方針転換で、社会に動揺が広がった
少数民族の人権保護を訴える意見に対し、ツイッターで共感が広がり、やがて社会現象となった。
衛生状態が悪く、病気が広がるのを食い止めることができなかった。
そろそろ金利の引き下げがあるのではないかという見方が、専門家の間で広がっている
稲の品種改良によって、稲作文化は北へと広がりました
野生動物を交通事故から守ろうという取り組みが各地で広がれば、人々の意識も変わるだろう。
コロケーション
〈現象など〉が広がる 必須項
現象:経済格差、影響、波紋、被害、汚染、文化、習慣
活動:取組、運動、動き、利用
認識:考え、判断、見方、理解、関心
好み・感情:人気、ブーム、不安、安堵、恐怖
買い物にマイバッグを持参し、レジ袋の受取を辞退する運動が全国的に広がっています。 (広報たじみすとTajimist, 2008, 岐阜県) コーパス
思わぬところで被害が広がる「不正アクセス」に気をつけよう (朝日ビジネスPASO(ビズぱそ), 2002, 電気機/電子) コーパス
〈社会〉に[で]広がる
若者、専門家の間、各地、村、社会
彼の死は臨時ニュースでアメリカ全土に拡がったが、それはケネディ大統領の暗殺に匹敵するほどであった。 (青木英夫著 『風俗史からみた1960年代』, 1993, 209) コーパス
〈様態〉広がる
徐々に、急速に、急に、一挙に
一般番組なら放送は一回だが、CMは繰り返されるので、評判は長い時間をかけてじわじわと広がっていく。 (武藤直路著 『スタイリストになるには』, 2000, 593) コーパス
非共起例
〈現象〉が広がる
王の命令で、新しい法律が広がった
王の命令で、新しい法律が施行された
「語義2」は、現象が及ぶ範囲が広くなる過程に注目する場合に用いられるのであって、法律が施行される場合のように、影響が及んでいく過程が感じられない場合に使うことはできない。
解説
「語義1」が「ものが空間に占める範囲が広くなる」ことを表すのに対し、この「語義2」は、「現象の及ぶ範囲が広くなる」ことを表す。これらの間には、「範囲が広くなる」という共通点がある。
誤用解説
「語義2」は、現象が及ぶ範囲が広くなることを表すのであって、程度が増すことを表すのではない。したがって、次の例に示すように、「溝」の程度が強くなる場合に「広がる」を用いると不自然である。
隣国との間の溝が広がっている
隣国との間の溝深まっている
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3 《知覚範囲が広くなる》
自動詞 中級 ★★ 表記広がる、拡がる
身体内において、感覚の及ぶ範囲が広くなる。
類義語拡大する
反義語狭まる
文型
〈感覚〉が広がる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
その薬を口に入れたとたん、強い苦みが口に広がった
口に広がる甘みは、なんとも言えない上品な味わいでした。
これが、来月発売予定の、コクが口いっぱいに広がる新感覚のチーズです。
高熱が出て、筋肉や関節に痛みが広がった
しびれが、だんだん指の先まで広がってきた。
「胸やけ」とは、みぞおちからのどへ広がる、焼けるような不快感のことを言います。
コロケーション
〈感覚〉が広がる 必須項
感覚:感覚、快感、不快感
味覚:味、甘味、味わい、苦み、風味
痛覚:痛み、しびれ
香ばしい焦げ目の苦味が、心地良く口中に広がる。 (渡瀬草一郎著 『陰陽ノ京』, 2002, 913) コーパス
か細い蜘蛛の糸がまとわりついた時のような、とらえどころのない感触が彼の頰に拡がった。 (小池真理子著 『夜ごとの闇の奥底で』, 1996, 913) コーパス
〈身体〉に広がる
口、口いっぱい、のどの奥、筋肉や関節、指の先
甘酸っぱさが口いっぱいに広がって、ちょっと口をすぼめた。 (及川征志郎著 『縄文の風』, 2001, 913) コーパス
〈身体〉まで[へ]広がる
のどの奥、指の先、足先、背中
キリキリとした痛みが、喉から頭のてっぺんまで広がった。 (窪依凛著 『エスケープ!』, 2005, 913) コーパス
〈様態〉広がる
だんだん、徐々に、ゆっくり、一挙に
最初はにぶい腹痛だったものがだんだんと広がり、強烈な便意に変わってきている。 (鳴海章著 『冬の狙撃手』, 2002, 913) コーパス
非共起例
〈感覚〉が広がる
体操教室に通って、バランス感覚が広がった
体操教室に通って、バランス感覚がついた/伸びた
「語義3」は、知覚できる範囲が広くなることを表すのであって、「バランス感覚」のような、能力の獲得を表すのではない。
解説
「語義1」が「ものが空間に占める範囲が広くなる」ことを表すのに対し、この「語義3」は、「身体内で感覚の及ぶ範囲が広くなる」ことを表す。これらの間には、「範囲が広くなる」ことを表すという共通点がある。
誤用解説
激痛が広がった
激痛が走った
「語義3」は、知覚される範囲が面として広くなっていくと感じられる場合に用いられる。「激痛」は、面というより、線として感じられるため「広がる」を用いると不自然である。
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4 《認識可能な範囲が広くなる》
自動詞 中級 ★★ 表記広がる、拡がる
認識できる範囲が広くなる。
類義語深まる
反義語狭まる
文型
〈認識可能な範囲〉が広がる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
大学生になって、いろいろな人と出会い、世界が広がった
子供の興味や関心が広がるように、いろいろな体験をさせてあげるとよいと思います。
本をたくさん読めば、知識が広がります
留学で視野が広がったと自分でも思う。
先生に助言をもらって、作りたい作品のイメージが広がった
転職活動でいろいろな会社を見ることで視野が広がり、新しい人生が開けた。
コロケーション
〈認識可能な範囲〉が広がる 必須項
世界、視野、見方、知識、関心
異文化に触れることは,視野が広がり、いろいろな発見もできます。 (広報きりしま, 2008, 鹿児島県) コーパス
自然現象の不思議なこともこの講座で理解を深めると、興味のが広がります。 (市民しんぶん右京区版, 2008, 京都府) コーパス
〈様態〉広がる
徐々に、だんだん、一気に
もし「何を学ぶか」を「誰に学ぶか」に切り換えたなら、学ぶ世界はたちまち広がるはずだ。 (井形慶子著 『イギリス式お金をかけず楽しく生きる!』, 2002, 590) コーパス
非共起例
〈認識可能な範囲〉が広がる
今日、数学の授業で積分をはじめて勉強した。積分の知識が広がった
今日、数学の授業で積分をはじめて勉強した。積分がわかった
今日、数学の授業で積分をはじめて勉強した。数学の知識が広がった
「語義4」は、もともとあった認識の範囲が広くなることを表すのであって、認識されていなかった事柄が認識されるようになった場合には用いられない。したがって、はじめて積分を学んだ場合に「広がる」を用いると不自然である。ただし、積分を学ぶことで数学の知識が「広がる」と言うことはできる。
解説
「語義1」が「ものが空間に占める範囲が広くなる」ことを表すのに対し、この「語義4」は、「認識可能な範囲が広くなる」ことを表す。これら2つの語義の間には、「範囲が広くなる」ことを表すという共通点がある。
誤用解説
「語義4」は、すでに知っていることを、より深く詳細に知る場合には使えない。したがって、次の例では、「広がる」を用いることはできない。
わからなかった点について詳しく説明をしてもらって、理解が広がった
よくわからなかった点について詳しく説明をしてもらって、理解が深まった
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5 《視界が広くなる》
自動詞 中級 ★★ 表記広がる、拡がる
視界に入る情景の範囲が広くなる。
類義語見える
文型
〈視界に入る情景〉が広がる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
車で少し行けば、のどかな田園風景が広がります
草原に寝そべると、青い空が広がった
山頂の展望台に上ると、眼前に雄大なパノラマが広がった
目の前に広がる雪景色に思わず声をあげた。
作業の手をとめて、ふと窓の外を見ると、星空が広がっていた
お寺の門をくぐると、別世界のような静かな庭園が広がっていました
コロケーション
〈視界に入る情景〉が広がる 必須項
海、青空、水田、美しい景色、のどかな風景
するとホームからはこんなに素晴らしい光景が目の前に広がっておりました。 (Yahoo!ブログ, 2008, 乗り物) コーパス
頭上に太陽はなく、暗色のが広がっているだけだ。 (安田均原案;友野詳著 『奈落にときめく冒険者』, 1997, 913) コーパス
〈場所〉に広がる
眼前、眼下、目の前、窓の外、門の中
正面に出ると、ゆるやかなスロープになっていて,眼下にシドニーの中心街が広がっている。 (西田勝著 『私の反核日記』, 1998, 319) コーパス
〈様態〉広がる
突然
森が切れると急に畑が広がり、のどかな田園風景に変わった。 (沖島博美文・写真;一志敦子絵 『北ドイツ=海の街の物語』, 2001, 293) コーパス
入口は引き戸になっており、開け放てばバスルームからベッドルームまで一気に視界が広がる。 ( 『東京ベストスポット』, 2004, 291) コーパス
非共起例
〈視界に入る情景〉が広がる
窓の外を見ると、鳥が広がった
窓の外を見ると、鳥が見えた
「語義5」は、「視界に入る情景の範囲が広くなる」ことを表すのであって、情景の一部を構成する「鳥」のようなものが視界に入る場合について使うことはできない。
解説
「語義1」が「ものが空間に占める範囲が広くなる」ことを表すのに対し、この「語義5」は、「視界に入る情景の範囲が広くなる」ことを表す。これらの間には「範囲が広くなる」ことを表すという共通点がある。
誤用解説
「語義5」は、一般に、自分自身が移動をしたり、視線だけを移動させたりすることで、瞬間的に「視界に入る情景」の範囲が広くなることを表す。よって、次例に示すように、「徐々に」など過程を表す表現とともに用いられると不自然である。
空を見上げると、星空が徐々に広がった
空を見上げると、星空が広がった
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6 《選択肢が広くなる》
自動詞 中級 ★★ 表記広がる、拡がる
選択肢が広くなる。
類義語増える
反義語減る、狭まる
文型
〈選択肢〉が広がる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
この調味料を使うと、料理のレパートリーが広がります
勉強をすれば、将来の選択肢が広がる
語彙が増えれば、表現の幅が広がります
若手社員の情報交換会に出ることで、人脈が広がった
資格を取ることで、仕事のチャンスが広がることもあります。
社外の人と付き合うことで、先々転職の可能性が広がるかもしれませんよ。
選択肢がひろがるのって、人を困らせることもあるのね…。
コロケーション
〈選択肢〉が広がる 必須項
選択肢、機会、ビジネスチャンス、表現の幅、バリエーション
資金が増えたので、今後は選択肢が広がりました。 (MONEY japan, 2003, 家庭/生活) コーパス
〈様態〉広がる
無限に、どんどん、かなり、非常に
使う野菜と味つけ方法をかえれば無限にバリエーションが広がります。 (キムアヤン著 『調味料のコツ』, 2002, 596) コーパス
非共起例
〈選択肢〉が広がる
料理はまったくできなかったのだが、焼きそばの作り方を覚えてレパートリーが広がった
料理はまったくできなかったのだが、焼きそばの作り方を覚えてレパートリーがひとつできた
「語義6」は、もともとあった選択肢の範囲が広くなる場合に使われる。「料理がまったくできなかった」場合にはもともと選択肢がなかったので、「広がる」を使うことはできない。
解説
「語義1」が「ものが空間に占める範囲が広くなる」ことを表すのに対し、この「語義6」は、「選択肢(選択できる範囲)が広くなる」ことを表す。これらの間には、「範囲が広くなる」ことを表すという共通点がある。
誤用解説
「語義6」は、選択肢が増えることで全体として選択肢の量が多くなることに注目するときに使われる。したがって、選択肢の増えた部分にとくに注目する場合に用いると不自然である。次の例は、増えた部分に注目している場合である。
長い間、入試の選択問題は5択だったが、去年から広がって6択になった。
長い間、入試の選択問題は5択だったが、去年から増えて6択になった。
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7 《人間関係の範囲が広くなる》
自動詞 中級 ★★ 表記広がる
人間関係の範囲が広くなる。
類義語広くなる、増える
反義語狭まる
文型
〈人間関係〉が広がる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
ダンス教室に通いはじめて、世代や性別に関係なく交友関係が広がりました
新しい場所に出かけていって、付き合いが広がると楽しい。
もっと丁寧に人に接すれば、あなたの人間関係も広がっていくのではないかと思います。
人的なネットワークが広がると、多くの情報が自然に入ってくるようになります。
人脈は勝手に広がるものではない。どんどん広がる人もいれば、ぜんぜん広がらない人もいる。
人間関係が広がることで、ものの見方や考え方が変わりました。
コロケーション
〈人間関係〉が広がる 必須項
人間関係、交友関係、人脈、付き合い、ネットワーク
それによって、コミュニケーションのが広がると思うのです。 (Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ) コーパス
非共起例
〈人間関係〉が広がる
開店した店は、10年かけて客が広がった
開店した店は、10年かけて客が増えた
大学に入って友だちが広がった
大学に入って友だちが増えた
「人間関係が広がる」という場合の「人間関係」は、「関係」を表す「交友関係」「付き合い」などでなければならない。
解説
「語義1」が「ものが空間に占める範囲が広くなる」ことを表すのに対し、この「語義7」は、「人間関係の範囲が広くなる」ことを表す。これら2つの語義の間には、「範囲が広くなる」ことを表すという共通点がある。
誤用解説
「語義7」は、もともとあった「人間関係」の範囲がさらに広くなる場合に用いられる。したがって、新たに人間関係ができることを表すことはできない。
隣に引っ越してきた家族と人間関係が広がった
隣に引っ越してきた家族と人間関係ができた
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8 《隙間が広くなる》
自動詞 中級 ★★ 表記広がる
ものの内部にある空間が大きくなる。
類義語開く、大きくなる
反義語閉じる
文型
〈ものの内部の空間〉が広がる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
スマホをカバンの中に放り込んでおいたら、画面のひびが広がった
パソコンで文字を打つとき、ルビを振ると行間が広がってしまうことがあります。
この頃、年のせいか、歯の隙間が広がってきたような気がする。
車のフロントガラスの傷は、走行中に揺れるので、小さい傷でも徐々に広がってやがて大きな傷になってしまいます。
運動するなどして、血管が広がると、血圧が下がります。
肌の手入れを怠ると、毛穴が広がって汚くなります。
かなり歯茎が痩せて、歯と歯の間がひろがっていますよ。
コロケーション
〈ものの内部の空間〉が広がる 必須項
隙間:隙間、傷、裂け、ひび、亀裂
通路や穴:血管、穴、毛穴、瞳孔
太陽が昇りはじめると,雲間が広がり、光がさしてきた。 (中部博著 『光の国のグランプリ』, 1994, 546) コーパス
睡眠中は血管が広がり、血圧が下がります。 (広報あいづみさと, 2008, 福島県) コーパス
非共起例
〈ものの内部の空間〉が広がる
買ったばかりの新しいスマホを落としたら、ひびが広がった
買ったばかりの新しいスマホを落としたら、ひびが入った
「語義8」は、もともと存在していた「ものの内部の空間」が大きくなることを表すのであって、新しく空間ができることを表すことはできない。
解説
「語義1」が「ものが空間に占める範囲が広くなる」ことを表すのに対し、この「語義8」は、「ものの内部にある空間が広くなる」ことを表す。これらの語義の間には「空間が広くなる」ことを表すという共通点がある。
「語義8」に対応する他動詞は多くの場合、存在しないが「ものが空間に占める範囲が広がる」という状態の変化が自然にも、意図的な動作によっても生じる場合がある。その場合は、次例のように、自動詞「広がる」と他動詞「広げる」が対応する。
勝手に行間が広がってしまうので、困る。
パソコンで作成した文書が読みにくいだろうなと思うときには、行間を広げてみるといいですよ。
誤用解説
「語義8」は、「ものの内部にある空間部分が大きくなる」ことを表すのであって、次例のように、ものが壊れて「ものの内部にある空間」そのものがなくなる場合に使うことはできない。
ひびが入っているけれど、気に入って使っていた花瓶を落としてしまった。まっぶたつにひびが広がった
ひびが入っているけれど、気に入って使っていた花瓶を落としてしまった。まっぶたつに割れた
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9 《閉じているものが開く》
自動詞 中級 ★★ 表記広がる
ものの内部に存在する、本来は小さな空間が広くなり、全体として大きくなる。
類義語開く
反義語閉じる
文型
〈内部に隙間があるもの〉が広がる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
水をやったら、丸まっていた観葉植物の葉が自然に広がった
発芽の様子をよく観察しましょう。葉は種を持ちあげながら広がりはじめますよ。
少女がくるっと回ると、ふわっとスカートが広がった
髪の毛が乾燥して広がるので困る。
毛先が広がった歯ブラシは、新しいものに買い替えましょう。
着物をきれいに着付けてもらったのに、歩いていたら裾が広がって着崩れをしてしまった。
コロケーション
〈内部に隙間のあるもの〉が広がる 必須項
スカート、花びら、葉、髪
そのからだのまわりに、白い髪の毛がいきなりマントのようにひろがった。 (栗本薫著 『ヤーンの朝』, 2005, 913) コーパス
〈様態〉広がる
ふわっと、ゆっくり
多田川が帽子をとると、長い髪がはらりとひろがった。 (立松和平著;横松桃子イラスト 『酪農家族』, 2000, ) コーパス
足軽や武者たちが密集し、激しく槍で戦っていた戦場に,すっと隙間が広がった。 (週刊新潮, 2003, 一般) コーパス
非共起例
〈内部に隙間のあるもの〉が広がる
チューリップのつぼみがようやく広がった
チューリップのつぼみがようやく開いた
「語義9」は「内部に隙間のあるものの」が開くことを表す。「チューリップのつぼみは、「内部に隙間がある」と捉えられないので「広がる」を用いると不自然である。
解説
「語義8」が「ものの内部にある空間が広くなる」ことを表すのに対し、この「語義9」は、「ものの内部に存在する、本来小さな隙間が広くなり、全体として大きくなる」ことを表す。これらの語義の間には、「ものの内部の空間が広くなる」ことを表すという共通点がある。
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10 《差が広くなる》
自動詞 中級 ★★ 表記広がる
差が広くなる。
類義語つく、開く、大きくなる
反義語縮まる、狭まる、小さくなる
文型
〈差〉が広がる
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
体育祭で1500メートル走に出たが、スタートしてすぐに集団で走る人たちから取り残された。その後も差がどんどん広がり、最後は1人だけ遅れてゴールした。
友人と山登りに行った。友人はこのところ体力作りをしているので足が速い。歩いていくうちにどんどん距離が広がり、ついに後姿も見えなくなった。
後ろを走っている車が車間距離を詰めてくるので、逃げようと思ってスピードを上げた。でも距離は広がらず、怖い思いをした。
練習をさぼったので、ライバルとの差が広がった
年々、少しずつ正社員と臨時職員との所得格差が広がってきている。仕事内容はほぼ変わらないので臨時職員の間には不満がたまっているだろうと思う。
幼なじみとはとても仲良くしていたが、社会に出てから生活レベルの差が広がり、別世界の人のようで付き合いにくくなった。
コロケーション
〈差〉が広がる 必須項
差、距離、車間距離、格差
地域の人の高齢化が進み、子どもとの年齢差が広がっています。 (広報くさつ, 2008, 滋賀県) コーパス
〈様態〉広がる
どんどん、徐々に、急速に、少しずつ
二〇メートルほどに近づいたドゥカティとの距離は,あっという間に拡がった。 (羽山信樹著 『総統の午前零時』, 1987, 913) コーパス
〈人〉と広がる
ライバル、友人、仲間、他の人、他の車
非共起例
〈差〉が広がる
太郎と次郎の背の高さの差と、花子と和子の背の高さの差を、次のデータを使って比べてみよう。太郎と次郎の差のほうが広がっている
太郎と次郎の背の高さの差と、花子と和子の背の高さの差を次のデータを使って比べてみよう。太郎と次郎の差のほうが大きい
「語義10」は、差の程度が変化することを表す場合に用いられるのであって、差を比較してどちらのほうが大きいかを問題にすることはできない。
解説
「語義8」が「ものの内部の間隔(空間)」が「広くなる」ことを表すのに対し、この「語義10」は、「ものの状態の間隔(差)」が「広くなる」ことを表す。
この「語義10」を抽象的な意味での「差」について用いる場合、「語義2」と区別がつきにくい。たとえば次のように言う場合、
貧富の差が広がった
所得格差が広がった
「貧富の差」「所得格差」が各地で見られるようになったことを表す(「語義2」)か、「金持ちと貧乏な人と差」の程度が大きくなったことを表す(「語義10」)か、文脈を示さなければ判然としない。
誤用解説
「語義10」は、同じものの位置が変化するなどして、両者の間の「差が広くなる」過程が感じられる場合に用いられる。したがって、次例のように、「旧庁舎と駅からの距離」よりも「新庁舎と駅からの距離」との差のほうが「広くなる」場合に「広がる」を用いることはできない。
新庁舎に移転して、駅からの距離が広がった
新庁舎に移転して、駅からの距離が遠くなった
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11 《幅が広い》
自動詞 中級 ★★ 表記広がる
ものの先の幅が広い。
文型
〈ものの先〉が広い
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
このドレスは、裾がふわっと広がっている
裾が広がったワイドパンツを購入した。
裾が広がったコートを作ってもらった。
子供の足は大人とは異なります。かかとが小さく、つま先が広がっているのです。
この鳥の足は指が横に広がった形をしているので、泳ぐことができます。
タンポポの葉は、普通、地面の近くで広がっている
コロケーション
〈ものの先〉が広がる 必須項
ズボンの裾、ドレスの裾、マント、シルエット、裾野
濃紺のパンツはすそが広がっていてカジュアル感がプラスされるので、通学用としても使いやすい。 (JJ, 2004, 一般) コーパス
〈様態〉広がる
ふわっと
ふわふわのソバージュのロングヘアにサングラス,ふわっと袖のひろがったチュニック。 (中島梓著 『マンガ青春記』, 1989, 914) コーパス
非共起例
〈ものの先〉が広がる
このジャケットは肩が広がっている
このジャケットは肩が広い
「語義11」は、先や端の幅が広いことを表す。「ジャケットの肩」は一般に先や端とは捉えにくい。
解説
「語義1」は、「ものが空間に占める範囲が広くなる」ことを表す。この「語義11」は、「ものの先の幅が広い」という状態を表す。つまり、「ものの先の幅が広い」という状態を「ものが空間に占める範囲が広くなる」という過程を経て生じたか結果であるかのように捉えた表現である。
誤用解説
この「語義11」は、文末ではテイル形で、名詞修飾の場合にはテイル形か、タ形で用いられる。したがって、「語義11」の意味で、
このドレスの裾は広がった
このドレスの裾は広い
と「広がる」を用いて言うことはできない。このように「広がる」を用いて言うとすれば、「語義9」、すなわちドレスの裾が風などで広くなったことを表すことになる。
同様に、「語義11」の意味で、
裾の広がるドレスを着た。
裾の広いドレスを着た。
と「広がる」を用いて言うことはできない。このように言うとすれば「語義9」の意味になり、何らかの仕掛けで「裾が狭い状態」から「広い状態」に変化させることができるドレスだという意味になる。