分かる(わかる)

知的行為を表す動詞
活用表 1グループ 起伏型
コアイメージ
語義リスト ・慣用表現
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1《不明瞭な事柄の明確化》不明瞭な事柄が、何らかの状況によって明確な状態になる[なっている]。
2《同定》人やものが、ある人・あるものだと同定できる。
3《会得》能力や技術を会得する[している]。
4《本質理解》物事の本質が理解できる。
5《気持ち・意図の理解》人の気持ちや意図が理解・共感できる。
6《承諾(応答)》相手の依頼や要求を聞き入れたとの応答。
慣用表現 話が分かる、物が分かる
全体解説
複合語
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1 《不明瞭な事柄の明確化》
自動詞 初級 ★★★ 表記分かる
不明瞭な事柄が、何らかの状況によって明確な状態になる[なっている]。
文型
〈人〉が〈不明瞭な事柄〉が分かる
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 ○ 意思 △ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
「田中さんの住所、分かるかな」「すみません、ちょっとすぐには。家のアドレス帳を見れば分かるんですが」。
「この問題の答えがわかる人、手を挙げて下さい」
生徒に光合成の仕組みを分からせる良い方法はないだろうか。
彼女は体のラインがよく分かるようなタイトな服を着ていることが多い。
あの占い師はどんな人の未来も分かるそうだ。
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コロケーション
〈不明瞭な事柄〉が分かる 必須項
~が把握される:状況、量、情報、流れ、ポイント 、位置、詳細
~が判明する:結果、妊娠、答え、効果、理由、事実、正体、顔、形、ライン
~が論理的に理解される:問題、説明、授業、意図、内容、仕組み、構造、理屈
~が見定められる:自分、人、相手
~が予測される:先、未来、見通し、運命、将来
状況がよくわからないまま、時間だけがすぎていった。 (谷甲州著 『ニューギニア攻防戦』, 2003, 913) コーパス
これから先、どうなるから何を準備して、なんてことは、未来がわからなきゃ言えないでしょう? (青山圭秀著 『最後の奇跡』, 2000, 913) コーパス
なぜなら、都市化によって人と人との距離が離れていくと、相手が何者かがよくわからない。 (養老孟司著 『死の壁』, 2004, 114) コーパス
わたしはこの質問の意図がまったくわからなかった。 (アガサ・クリスティ作;花上かつみ訳;高松啓二絵 『ゴルフ場の殺人』, 2004, 933) コーパス
その理由がなんとはなしに康子にはわかった。 (篠田節子著 『女たちのジハード』, 1997, 913) コーパス
〈方法〉で分かる
一目、写真、検査、調べ、取材、肉眼
〈根拠〉から分かる
データ、図、表、例、結果
解説
「分かる」主体は(例1)のように「が」で表すこともあるが、(例2)のように主題の「は」で表わすことの方が多い。
(例1)「誰かこの機械の構造が分かる人はいますか」「その機械なら鈴木さんが分かりますよ
(例2)鈴木さんはこの機械の構造が分かる
「分かる」主体は「に」で表すこともある。その場合は「は」を伴って、「には」で表すことが多い。(例3)私には未来が分かる
(例4)子どもには分からない大人の事情というものがある。
この語義では、「〈不明瞭な事柄〉が〈状態〉だと分かる」という形で表すことも可能である。例えば次のaはbのように言い換えることができる。
(例5)
 a. 報道で人質の無事が分かった
 b. 報道で人質が無事だと分かった
(例6)
 a. 自分の未熟さが分かった
 b. 自分が未熟だと分かった
明瞭な状態になる事柄が文で表される内容である場合は、「こと」や「の」を使って「~ことが分かる」「~のが分かる」と表す。
(例7)このデータから景気が回復していることが分かる
(例8)検査で病気が進行しているのが分かった
また、以下の例のように「〈不明瞭な事柄〉を分かる」と表すこともあり、その場合、「分かる」ではなく、「分かっている、分かってくれる、分かってほしい、分かってもらう、分かろう」といったパターンを取ることが多い。
(例9)彼は現場の状況を分かっている
(例10)こちらの事情を分かってもらえるように説明する。
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2 《同定》
自動詞 初級 ★★★ 表記分かる
人やものが、ある人・あるものだと同定できる。
類義語気付く
文型
〈人〉が〈人・もの〉が〈人・もの〉(だ)と分かる
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 △ 意思 × 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
彼は一目でその男が犯人だと分かった
そのサインから、この絵はピカソのものだと分かった
「あれ、田中さん。髪型が変わってたから、あなただって分からなかった
火事の火元が台所だったと分かった
「あなたの誕生日が今日だと分かっていたらプレゼントを用意していたのに」
コロケーション
〈手がかり〉から分かる
筆跡、におい
解説
「分かる」主体は(例1)のように「が」で表すこともあるが、(例2)のように主題の「は」で表わすことの方が多い。
(例1)「どうしてサンタクロースが僕だって分かったんだろう。しっかり変装していたのに」「親子なんですもの。息子が分からないはずないわよ」
(例2)息子はサンタクロースが私だと一目で分かったそうだ。
「分かる」主体は「に」で表すこともある。その場合は「は」を伴って、「には」で表すことが多い。
(例3)私にはその男が犯人だとすぐに分かった
(例4)彼にはそれが偽物だとは分からなかったようだ。
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3 《会得》
自動詞 初級 ★★★ 表記分かる
能力や技術を会得する[している]。
文型
〈人〉が〈能力・技術〉が分かる
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 ○ 意思 △ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
私の祖母は英語がまったく分からない
何度もやっているうちに、だんだん釣り糸を引き上げるタイミングが分かってきた。
「あの国の言葉は難しすぎてさっぱり分からないよ」「確かにね。でも、分かろうと努力しない限り、ずっと分からないままだよ」
「インターネットへの接続方法はお分かりでしょうか」「ちょっと分からないんですが
父は私に正しいバッティング感覚を分からせようと何度も一緒に振ってみせた。
この本を読めば、写真の撮り方のコツが分かるらしい
コロケーション
〈能力・技術〉が分かる 必須項
語学:言葉、英語、日本語、~語
感覚:タイミング、こつ、勝手、感覚
方法:方法、使い方、書き方、読み方、考え方、見方、~方
英語がわからなければ,世界の動向がわからないといった状況が生じています. (河合忠仁,鄭正雄,中西美惠,林桂子,吉川靖弘著;崔陽植訳 『日本の学校英語教育はどこへ行くの?』, 2005, 375) コーパス
シャワーの使い方がわからず、熱湯や水をかぶってしまったりなど事故につながるような行動が見られないでしょうか? (神奈川県総合リハビリテーション事業団ほか編著 『写真とイラストでよくわかる実践!リハビリテーション看護』, 2002, 492) コーパス
生後2ヶ月の乳児の母ですが、母乳をあげるタイミングがわからなくて困っています。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 子育て、出産) コーパス
解説
「分かる」主体は(例1)のように「が」で表すこともあるが、(例2)のように主題の「は」で表わすことの方が多い。
(例1)「この中で誰が中国語が分かりますか」「中国語なら佐藤さんが分かりますよ
(例2)佐藤さんは中国語が分かる
「分かる」主体は「に」で表すこともある。その場合は「は」を伴って、「には」で表すことが多い。ただし、〈能力・技術〉がその人に備わっている恒常的な能力である場合には「に」が伴いにくい。
(例3)私にはあの国の言葉は難しすぎて分からない
(例4)?祖母には英語が分かる
以下の例のように「〈能力・技術〉を分かる」と表すこともある。その場合、「分かる」ではなく「分かっている、分かってくれる、分かってほしい、分かってもらう、分かろう」といったパターンを取ることが多い。
(例5)彼はパソコンの使い方を分かっている
(例6)言葉だけでバッティング感覚を分かってもらうことは難しい。
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4 《本質理解》
自動詞 中級 ★★ 表記分かる
物事の本質が理解できる。
類義語理解する(○○を理解する)
文型
〈人〉が〈本質〉が分かる
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 ○ 意思 △ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
私はコーヒーの違いがよく分からない
シェフ曰く、この料理は味の分かる人に食べてもらいたいそうだ。
「これ、古本なのに高くない?」「いや、この本の本当の価値が分かっている人なら納得する値段だね」
「同じ日本酒なのに、そんなに違うんですか」「ええ、ぜひ飲み比べてみてください。違いがお分かりになるかと思います」
あの人は物事の本質が分っていない
(母親同士)「うちの子、無駄遣いばかりしてるのよ。お金のありがたみを分からせるにはどうしたらいいかしら」「そうねぇ。アルバイトをさせてみたらどうかしら」
俺には本物の価値が分かるからね。
コロケーション
〈本質〉が分かる 必須項
違い、味、価値、ありがたみ、本質、神髄
強度の高いトレーニングと、オーバートレーニングの違いが判らないんです。 (山本甲士著 『バッドブラッド』, 1997, 913) コーパス
外見でしか人間を判断しないやつらになんて、僕の本当の価値がわかってたまるかってんだ。 (剛しいら著 『Bad boys!』, 2002, 913) コーパス
解説
「分かる」主体は(例1)のように「が」で表すこともあるが、(例2)のように主題の「は」で表わすことの方が多い。
(例1)「骨董品の価値が分かる人を誰か知りませんか」「骨董品なら佐藤さんが分かると思いますよ」
(例2)佐藤さんは骨董品の価値が分かる
「分かる」主体は「に」で表すこともある。その場合は「は」を伴って、「には」で表すことが多い。(例3)田中にはその絵の価値が分かるはずだ
(例4)私には、コーヒーの違いがよく分からない
以下の例のように「〈価値〉を分かる」と表すこともあり、その場合、「分かる」ではなく「分かっている、分かってくれる、分かってほしい、分かってもらう、分かろう」といったパターンを取ることが多い。
(例5)彼はこの研究の価値をよく分かっている
(例6)子どもにはお金のありがたみを分かってもらいたい
(例7)彼女は研究の価値を分かろうともしない
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5 《気持ち・意図の理解》
自動詞 中級 ★★ 表記分かる
人の気持ちや意図が理解・共感できる。
類義語理解する(○○を理解する)
文型
〈人〉が〈気持ち・内容〉が分かる
文法
受身 × 尊敬 △ 使役 ○ 意思 △ 継続 × 結果・完了 ○
例文
連続して聞く
なぜそんなことをするのか、意味が分からない
彼女は年を取って初めて親の気持ちが分かるようになったそうだ。
恩師のような、子どもの心が分かる教師になりたい。
素直なあの子がなんでこんなに反抗するのか訳が分からない
(上司と部下)「今日の飲み会の店、部長の好きな日本酒のおいしい所にしておきました」「お、さすが佐藤君。わかってるね
加害者に被害者の痛みを分からせるにはどうしたら良いのだろうか。
コロケーション
〈気持ち・意図〉が分かる 必須項
気持ち:気持ち、(人の)痛み、心
意図:意味(否定形が多い)、わけ(否定形が多い)
その他:何
彼は、人の気持がよくわかる賢い子供だ。 (小久江怜子著 『進め!進くん』, 2003, 049) コーパス
何が何だか…さっぱりわけがわかりません! (高木彬光著 『黒白の囮』, 1997, 913) コーパス
相手の痛みがわかってこそ、素直な人間同士の気持ちのやりとりが可能になります。 (能城律子編 『乳ガンが生きる力をくれた』, 1997, 289) コーパス
解説
「分かる」主体は(例1)のように「が」で表すこともあるが、(例2)のように主題の「は」で表わすことの方が多い。
(例1)「彼女へのプレゼント、なにがいいか全く分からないよ」「女性の気持ちなら田中君がよく分かるんじゃないかな。彼には彼女がいるからね。相談してみたら」
(例2)田中君は女性の気持ちが分かる
「分かる」主体は「に」で表すこともある。その場合は「は」を伴って、「には」で表すことが多い。(例1)「あんな女とは付き合うな」「お前に何が分かる。ほっといてくれ」
(例2)私には彼女の気持ちがよく分かる
以下の例のように「〈気持ち・内容〉を分かる」と表されることもあり、その場合、「分かる」ではなく「分かっている、分かってくれる、分かってほしい、分かってもらう、分かろう」といったパターンを取ることが多い。
(例3)彼は女性の気持ちを分かっていない
(例4)「もっと私の気持ちを分かってほしい
(例3)友人が私の気持ちを分かろう としてくれているのが伝わってきた。
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6 《承諾(応答)》
自動詞 初級 ★★★ 表記分かる
相手の依頼や要求を聞き入れたとの応答。
類義語承知する、了解する
文型
分かった[分かりました]
文法
受身 × 尊敬 × 使役 × 意思 × 継続 × 結果・完了 ×
例文
連続して聞く
(妻と夫)「今日はみんなでレストランに行くから、早めに帰ってきてね」「うん、分かった
(上司と部下)「悪いがこの仕事、明日までに仕上げておいてくれるかな」「はい、分かりました
(誘拐犯と被害者)「今日の3時までに1000万円用意しろ。分かったな」「はい、分かりました。必ず準備しますから、どうか娘の命だけは・・・」
いいか、これ(水あめ)は子どもが食べると毒だから、絶対に食べてはいけないぞ。分かったな。
解説
「分かった」「分かりました」のように、過去形で用いる。
承諾しない場合には否定形の「分からない」ではなく、「できない」「断る」「嫌だ」等を用いる。
(例1)「明日までに終わらせるんだぞ、分かったな
「いや、分かりません
「いや、そんなことできません
分かるの主体は表わさない。
私が分かった[分かりました]。
分かった[分かりました]。
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慣用表現
話が分かる慣用句
相手の意図や心情が分かる。
「ミスのことは部長には黙っててやるけど、今回だけだぞ」「サンキュ。話が分かる奴でよかった」
今日の看守様はなかなか話が判る(Yahoo!ブログ, 2008, 職種)コーパス
物が分かる慣用句
物事の道理が分かる。
彼は苦労しているだけに、物が分かっている
近江様の言われるには、おまえは蛮人で、ものがわかっていないから、殺しはしない。(ジェームズ・クラベル著;宮川一郎訳 『将軍』, 1980, 933)コーパス
執筆:高原 真理 校閲:砂川 有里子