平成24年6月30日(土曜日)
京都大学文学研究科2F 第7講義室
コリャーク語(Koryak:チュクチ・カムチャツカ語族)の自動詞と他動詞の対応関係を洗い出してみると,おおまかに, (a) 使役化, (b) 逆受動化, (c) 逆使役化, (d) 両極形, (e) 自他同形, (f) 軽動詞, (g) 補充法の7つのパターンがあげられる。本発表では,これらの自他対応関係を形態的・統語的観点から記述し,その特徴について主にHaspelmath (1993), Nichols et al. (2004) などを参考に予備的な類型論的位置づけを試みた。
サハ語には4種類の態の接辞(使役・再帰・相互・受身)がある。いずれも動詞語幹に付加し新たな動詞語幹を生む派生接辞である。本発表ではまず,態の接辞の付加が結合価の増減と直接には関係しないことを示した。その上で,項の増減に関わる現象として,使役文における二重対格と受身文における非人称受動について論じた。
ウズベク語の他動性に関連すると思われる基本的な例文を提示する。まず,典型的な自動詞節(無意志と有意志)と他動詞節のデータを提示した。その後,発表者の知る範囲で有標的な節についてもデータを提示した。以上のデータの提示により,他の発表者各位との議論を供した。
チュルク語では,単純自動詞と他動詞を基にした受動動詞が類似の意味をもつ場合がある。同様に,単純他動詞と自動詞ベースの使役動詞が類義のペアをなす場合もある。キルギス語における類義語動詞の使い分けの観察を通して,チュルク語の自動詞原型・他動詞原型に関わる要素が何かを考えてみた。
トルコ語やアゼルバイジャン語など主要なチュルク語南西グループの諸言語の関係節化形成では,節全体の他動性に連動するマーキングが連体形述語に付加される。チュルク語南西グループの地域内で孤立した系統的特徴を示すイランのチュルク系極小言語であるハラジ語は,チュルク語南西グループと同じような関係節化マーキングを持ち,これが地域的特徴であることを示した。
タジク語における接辞や複合による他動詞の形成を説明した。間接使役について 「△△が(○○をして)××に▼▼を説明せしめた」「死なせた」「髪を切った」「新しい家を建てた」の文の母語話者によるタジク語訳を挙げて参会者の質疑に供した。