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第3回共同研究発表会

「他動性プロジェクト」:言語類型論チーム 第一回研究会

開催日時

平成23年6月4日(土)  

開催場所

国立民族学博物館

発表テーマ・発表者氏名と概要

「他動性プロジェクトの全体像について」
プラシャント・パルデシ(国立国語研究所 教授)


「マラーティー語における他動性のスペクトル」
プラシャント・パルデシ(国立国語研究所 教授)

本発表では,数多くの先行研究の洞察をもとに,マラーティー語における他動性の連続体上での重要な出来事を表す諸表現に焦点をあて,特に,他動性と意図性の関係,他動性と動作主性の関係に関する諸問題を検討し,その解決に向けて新しい提案を提示した。

「トルコ語における自他動詞の概要と諸問題」
栗林 裕(岡山大学 准教授)

本発表では,本プロジェクトの目的である類型的特徴の普遍性と多様性を探求することを踏まえて,トルコ語の自動詞構文と他動詞構文の構造について概観し,動詞の形態的派生の方向性についての諸問題を検討した。本発表の前半部では,トルコ語の自他構造の個別的記述の提示に加えて,言語類型論的な観点から他言語の研究とも共有できる概念である有責任性や無生物主語構文などと関連させながら例文提示を行った。本発表の後半部においては,自動詞から他動詞を派生させるのか(使役型派生),それとも他動詞から自動詞を派生させるのか(逆使役型派生)という点に注視して,現時点で得られている調査結果を報告した。対象言語は現代トルコ語に加えて古代トルコ語との比較も行った。また,サンプル抽出基準としてはHaspelmath (1993), Nichols et al. (2004),Jacobsen (1990) 改編によるリストと合わせて,今年2月に完成した中型トルコ語辞典を使用した全数調査の結果を統計的分析と共に提示した。

「タイ語の他動性について」
高橋 清子(神田外語大学 准教授)

自他の形態的区別のないタイ語動詞の他動性をどう考えるべきかについて問題提起をし,以下のような新たな視点を提供した。

  1. 既存理論の命題レベルの分析のみならず,談話レベルでの用法基盤モデルの分析が必要である(項名詞を伴わない動詞や動詞連続体構成素の動詞など)。
  2. 既存理論の「主語指示物の意志性の有無」という見方は有効ではない(虚構移動表現や使役構文など)。
  3. 「目的語指示物がどの程度特定的・個別的か」という見方のほうが有効である(より統語現象に関わる)。

全体討論