This paper sheds light on the role of telicity regarding verb serialization with Japanese as a test case. First, it is empirically shown that V1 cannot be telic unless V2 is also telic. Any other patterns are possible. Second, (im)possible aspectual combinations are shown to be a consequence of Aspectual Composition based on Dowty (1986).
状態動詞は基本的に継続相マーカー(be V-ing/V-テイル)とは共起しないと言われているが,日本語の可能形(できる/V-(rar)e-ru )は一般的に状態述語に分類されているにもかかわらず,テイルと共起可能な場合がある。本発表では,可能形—テイルの連鎖が可能な場合の考察から,可能形には2種類のアスペクト解釈と統語構造があることを論ずる。
日本語の子音語幹動詞の屈折では,過去形やテ形において不規則な音変化(音便:kak(-u)/kai-ta)が見られるのに対し,それ以外の活用形では不規則性のない母音挿入(kak-a-nai, kak-i)が見られるという事実に着目し,これらが異なる心的メカニズムによって処理されている可能性を,二つの実験結果から実証的に検証する。音便形は,英語の不規則活用同様に,ネットワーク的記憶によって処理されるのに対し,否定形や連用形は,英語の-ed付加同様に,規則による演算処理が行われていることが示唆される。
日本語の内的状態を表す語彙には,感情形容詞を中心にいわゆる「人称制限」(Kuroda 1973,他)を有する語彙が多く存在し,これまでムードやスタイルの観点からの分析も含めて,多くの研究がなされてきた。本発表では,その「人称制限」とされる言語現象は,それ自体また類型論的にも「人称」制限ではないことを示し,むしろ,認知言語学における概念を用いて「概念化者-体験者一致制約」とすべきことを議論する。
文化的背景の異なる二つの言語間において,ある抽象的概念の語彙的意味が全く同じであるということはまれである。また,客観的に意味の異同を議論することにはしばしば困難を伴う。本発表では,「暖かい人」や「真面目な人」がトルコ語と日本語において全く同じ意味にならないことを客観的に示すために,トルコと日本の大学で実施したアンケート調査に因子分析を行った。他言語への応用も視野に入れた対照的分析の枠組みの提案を行う。
日本語の語彙には,「山々」,「広々」,「ドキドキ」のような重複語(畳語)があるが,これらとは著しく異なる意味機能をもつ重複表現がある。例えば,「女の子女の子した女」「大阪大阪した町並み」「野菜野菜しているスープ」などがそれである。この重複表現は既存のものと異なり,生産性が極めて高く,重複語基の中核的属性を表す意味機能をもつ。本発表では,このような重複語の形態的,意味的特性を明らかにする。
「ない」と名詞が組み合わさる複雑形容詞は,「が」格が随意的に現れるという特徴をもつ。本論では,これらの「が」格標示の現れる複雑形容詞が三つのクラス(独立タイプ,擬似名詞編入タイプ,名詞編入タイプ)に分けられるということを示す。特に,擬似編入が起こるタイプの複雑形容詞は,構成素が一体化しているものの,それぞれの要素が統語的に可視的になっていることを示す。
複合動詞は動詞連用形+動詞と名詞+動詞の2種類に大別されるが,前者が生産的であるのに対して後者はほとんど生産性がない。本発表では,両タイプの複合動詞に見られる生産性の相違が,複合動詞を述部とする文の“finiteness”と関係することを論じる。とりわけ,名詞+動詞タイプの複合動詞は 定形文では生産性がないが,動詞部分が時制を失ってfinitenessの度合いが低くなると,生産性や意味の透明性が増すことを指摘する。