国際シンポジウム報告 続
デモンストレーションに引き続いて行われたパネルディスカッションでは,
前頁のように5人の討論者から発題があり,会場の聴衆を交えて活発な質疑
応答が行われた。以下では,そのうちのいくつかを簡略に紹介する。なお,
このシンポジウムの記録は今後国立国語研究所から報告書として刊行される
予定である。
Q:
漢字処理について日本人の脳が(外国人と比べて)違っているという研究
があるが…
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Q: (日本語の国際普及にあたって)国際語が複数共存できるのか A: 自分の言う日本語の普及は生活語としての普及ではなく,日本的な良さを日本 語の教育によって知ってもらうための文化的「お返し」としての普及である。 現在事実上英語が lingua franca として通用しているのだから,日本人も下手 でもよいからどんどん英語を使えばよい。国際語はすべての人の共有財産であ る。(鈴木氏) Q: 日本語の文字体系が劣っていて非効率的であるなら,識字率が欧米と同等かそ れ以上に高く,経済的にも発展をとげたのはどういうわけか A1: 論理的に考えれば,漢字を使っているにもかかわらず高い識字率を維持してい るという見方もできよう。(カイザー氏) A2: 漢字について証明されたことは,それが社会の近代化を「決定的に」さまたげ るものではなかったということ。台湾の例を考えると,漢字は経済の進歩にと って決定的な障害ではないといえる。もし,ローマ字であったらどうだったか。 実験はできないが,反証もできない。(宮島氏) Q: 日本語が国連で受け入れられる可能性について A: そのためには,世論による合意が必要。世論において国連公用語の議論がほと んどなされていない現状では,可能性は低いといわざるをえない。(佐藤氏) [文責:山崎 誠] |