研究報告会閏催さる!
さる2月25日,国立国語研究所講堂において新プロ「日本語」の第1回研究報告会が行わ
れ,各班の94年度における研究進捗状況が報告されました。会では,計21の報告がなさ
れました。またポスター・セッションも用意され,成果をわかりやすく紹介していました。
以下に各研究班の94年度報告の概略を紹介します。
研究班1「日本語国際センサスの実施と行動計量学的研究」(班代表:江川清)
(1)日本語国際センサスの対象国を選定するための基礎資科の一環として,既存統計
資料から日本との関係の深さ・強さを示す各国統計指標を抜き出し,データベース化し
た。
(2)各国の言語政策に関する文献収集・事情聴取をおこなうとともに,それに関連し
て「言語政策研究会」を発足させた。
(3)日本語観国際調査についてワーキング・グループを設け,調査項目の選定を進め
,仮の調査票を作成,その一部には試行的調査を中国・北京市などで行った。
(4)国内外の言語状況の事例調登として,沖縄・韓国・タイ・アメリカなどで実態調
査を行った。
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研究班2「言語事象を中心とする我が国をとりまく文化摩擦の研究」(班代表:平野健一郎
)
(1)日本語を歴史的にひもとくことによって,日本語がそもそも古くから国際的な言
語であることを明らかにした。
(2)アメリカやウクライナにおいて,多言語化しつつある,マイノリティー集団の言
語・文化・社会状況をつぶさに検討した。
(3)埼王県川口市および茨城県つくば市において,外国人を中心とする言語的少数派
の日本語学習過程を,多数派である日本人側との相互変化・相互学習過程の観点からあ
きらかにする目的で参与観察をすすめた。
(4)言語行動接触における相互『誤解』のデータベースをもとに,調査項目を検討し
た。調査の一部として言語行動場面のビデオによる刺激に対する反応を得ることを計画
し,試行調査を国内外の数地点で行った。
(5)「文化摩擦」の観点から地域差をキーとして言語行動の多様性に迫る調査を計画
している。今年度は京都およぴ熊本で試行調査を実施した。
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研究班3「日本語表記・音声の実験言語学的研究」(班代表:賀集寛)
<文字言語研究チーム>
(1)日本語に関する心理言語学的研究の文献目録を作成・刊行した。これは,世界中
から収集し約1,000件の文献に原著者の要約とは独立にオリジナルな要約を付けた
もので,幅広い視野で重要な研究論文を包括的に取り上げている。
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(2)語の主観的表記頻度のデータベースを作成し,それに基づいて,語の出現頻度や
学習漢字との関係を分析した。また,失語症患者の単語音読速度に主観的表記頻度が大
きな影響を及ぽすことを明らかにした。
(3)ノイズに埋もれた文字をコンピュータで自動認識させるための画期的な手法を開
発した。また,ノイズに埋もれた漢字と仮名の認知について,人間と機械との比較を行
った。
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<音声言語研究チーム>
(1)フランス人学習者のための日本語韻律学習用プログラムを開発する第1段階とし
て,音声信号・韻律処理プログラムのマッキントッシュ版作成に着手した。
(2)東京語アクセント知覚テストを作成し,フランス人を含め7か国の日本語学習者
の東京語アクセントの聞き取り方の特徴を調ぺるため,聴取実験を行った。
(3)韻律研究に関する文献データベースのフォーマットについて検討した。
(4)フランス人学習者が発話,聞き取りの問題にどう対処するかについてコミュニケ
ーション・ストラテジーの研究を行った。
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<計算機実験チーム>
(1)仮名漢字変換プログラムに文字単位の変換機能を付け,指定した漢字使用範囲で
表記変換をおこなうための研究に着手した。
(2)シソーラスとして諸学会から高い評価を受けている国語研究所の『分類語彙表』
を増補した。資料集(2分冊)を印刷する予定。
(3)日本語表記変換用の機械辞書を作成するため,『分類語彙表』を機械辞書化した
上で,語種・品詞・位相・使用ランクなどの情報を付加する研究を進めた。
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研究班4「情報発信のための言語資源の整備に関する研究」(班代表:甲斐睦朗)
(1)英語から日本語への同時通訳を中心として,訳出過程の時系列分析・訳出された
日本語および英語の構文上の特徴・放送同時通訳に対する視聴者の評価について研究を
進めた。1月17日に第1回通訳・翻訳研究会を開催し,次の2つの発表を行った。「
日英英日の同時通訳技法の体系化に関する研究」「同時通訳における訳出状況分析」
(2)中国・韓国・日本の各漢字使用国のコンピュータ用符号を統一する方法として,
4バ
イトコードの提案を行った。
(3)雑誌「太陽」をコンピュータで活用するための言語資料として整備するために,
データ・フォーマットの検討などの基礎的な作業をおこなった。
(4)日本の国語教育のあるべき姿について,各界の識者の考えを聞き,研究者や教育
関係者などを招いて話合いを行った。その結果を十分ふまえて,全国の識者にアンケー
トを実施する予定である。
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(文責:山崎)
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