国立国語研究所IRシンポジウム 「社会に魅せる研究力を測る ―論文では見えてこない社会に貢献する研究を評価する指標―」

開催期日
2020年2月13日 (木) 14:00~17:20 (情報交換会 17:30~18:30)
開催場所
国立国語研究所 3階 セミナー室 (東京都立川市緑町10-2)
交通案内

趣旨

現在,大学や研究機関の研究力は,学術界への貢献をもとに測られていることが多い。例えば,2013年度からおこなわれている研究大学強化促進事業において,対象機関選定のための指標は10項目あるが,学術界への貢献が8項目 (科研費を含む外部資金関連が6項目,研究成果としての論文関連が2項目) であり,産業界への貢献が2項目 (民間企業との共同研究関連および特許実施収入等の産学連携関連) である。また,大学改革支援・学位授与機構のおこなう4年目終了時評価における研究関連の記載必須項目は,学術界への貢献,あるいは産学連携関連の指標であり,産業界と直接結びつかない研究成果は,選択項目で記載するのみである。研究機関である以上,学術界への貢献は当然であり,社会への貢献として,産学連携が重要なのは言うまでもないが,それ以外の,社会課題の解決に資する研究や地域コミュニティに溶け込んでおこなう研究,研究成果としての展示・展覧会,芸術作品などは指標がなく,研究力として殆ど評価されていないのが現状である。

このような,論文などでは測ることのできない研究成果は,人文社会科学系で多くみられるが,それのみならず,社会に対する貢献などは,理系であっても正しく評価される必要がある。しかしながら,このような研究成果に基づく研究力を客観的にどのように測り,評価するか,その指標は未だ確立していない。そのため,本シンポジウムでは,論文などでは見えてこない社会に貢献する研究成果に基づいて測られる研究力を「社会に魅せる研究力」と呼び,それを測る指標について考えたい。

基調講演として,地域に貢献する Land Grant University を建学理念とする琉球大学の学際的研究チーム「水循環プロジェクト」のコアメンバーである高橋そよ氏 (琉球大学 人文社会学部 琉球アジア文化学科・准教授) をお招きし,社会課題解決型研究のプロセス・研究成果・展望の事例を講演いただく。本プロジェクトは,2014年度に,琉球大学の第2期中期計画において推進された学部連携を発端とし,自然科学系研究者を中心に琉球石灰岩地域の水循環機構を理解する学際的研究チームとして結成された。その後,第3期に入ると,本プロジェクトは水資源に関する地域課題の解決に向けて,琉球大学の中期計画達成戦略研究プロジェクトとして位置付けられ,リサーチ・アドミニストレーター (URA) が参画し,多様なステークホルダーとの調整や競争的資金獲得などの研究支援を行ってきた。現在,本プロジェクトは,複数の競争的資金を獲得しながら,島嶼地域の水循環の特性に応じた持続可能な水資源利用と環境ガバナンス構築を目指し,行政や地域コミュニティ,教育機関,NPO 等とのトランスディシプリナリー研究へと展開を広げている。これらの研究と社会が協働する多様な取り組みは,2018年度内閣官房主催水循環シンポジウム特別賞の受賞や,国立研究開発法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業 (社会技術研究開発) 新規プロジェクト「SDGs の達成に向けた共創的研究開発プログラム (SOLVE for SDGs) 」に採択されるなど,県内外で注目をあびている。

SDGs への貢献をはじめ,研究と社会の共創が問われる現在,研究者は,どのように地域の方々との対話・協働を「研究」としてデザインすることができるのだろうか。そして,それはどのように誰によって何のために評価されるべきなのだろうか。その時,「私たち」はどのように客観的な指標を構築することができるのだろうか。本シンポジウム後半のパネルディスカッションでは,パネリストとして大学共同利用機関法人人間文化研究機構の国立歴史民俗博物館から後藤真氏,国文学研究資料館から加藤聖文氏をお迎えし,国立国語研究所の木部暢子が加わり,「研究機関の社会に魅せる研究力を測るための客観的な指標の策定は可能か,可能であれば,どうあるべきで,どのようなものか」をテーマに,フロアとともに議論したい。

プログラム

14:00~14:05開会挨拶

14:05~14:30趣旨説明
井上 雄介

14:30~15:30基調講演 「地域から未来を拓く ―琉球大学水循環プロジェクトチームによるトランスディシプリナリー研究の可能性」 高橋 そよ

URA的視点と研究者視点の両面から,水循環プロジェクトのこれまでの概要とアウトプット・アウトカム,それに対するURA的役割とその効果,今後の展開・課題などについて報告する。

15:45~17:15 パネルディスカッション 「研究機関の社会に魅せる研究力を測るための客観的な指標の策定は可能か,可能であれば,どうあるべきで,どのようなものか」

パネリスト (敬称略)
高橋 そよ (琉球大学)
後藤 真 (国立歴史民俗博物館)
加藤 聖文 (国文学研究資料館)
木部 暢子 (国立国語研究所)

17:15~17:20閉会挨拶

(17:30~18:30 情報交換会,参加費 : 1,000円,会場 : 国立国語研究所内)

参加申し込み

  • 参加申し込み : 受付は締め切りました。お申し込みありがとうございました。
  • 参加費 : シンポジウムは無料,情報交換会は1,000円
  • 定員 : 30名

問い合わせ先

国立国語研究所IR推進室
ir-office[at]ninjal.ac.jp[at]を@に置き換えてください。