「通時コーパスの設計」研究発表会 概要
- プロジェクト名
- 通時コーパスの設計 (略称 : 通時コーパス)
- リーダー名
- 田中 牧郎 (国立国語研究所 言語資源研究系 客員教授,明治大学 教授)
- 開催期日
- 平成26年11月9日 (日) 13:30~17:30
- 開催場所
- 国立国語研究所 2階 多目的室 (東京都立川市緑町10-2)
発表概要
「『日本語歴史コーパス』の設計と構築の現状」田中 牧郎 (国立国語研究所 / 明治大学)
2009年度に設計に着手した日本語の通時コーパスは,平安時代和文資料のコーパス試作から開始し,その最初のバージョンを『日本語歴史コーパス 平安時代編』として,既に公開している。現在は,鎌倉時代編,明治・大正時代編の構築を進め,近い将来の公開を計画しているほか,室町時代資料の狂言や,江戸時代資料の洒落本のコーパス作成にも力を入れている。この『日本語歴史コーパス』の設計と構築の現状と今後の見通しについて,報告した。
「「通時コーパス」を用いた名詞の計量分析 ―日本語テキストに内在する特徴の抽出と可視化について―」河瀬 彰宏 (国立国語研究所)
本発表では「NINJAL通時コーパス」プロジェクトの一環として電子化・構造化・形態素解析が施されたテキストコーパスに対して計量分析を実施し,テキストに内在する特徴を抽出・可視化する。具体的には,『虎明本狂言集』における話者ごとの会話文の特徴から話者を規定する語彙を明らかにし,雑誌『太陽』における文体の移行と時代背景の関係性を特徴語の意味分類から論じた。
「中古・中世のノミとバカリ」鴻野 知暁 (国立国語研究所)
〈限定〉という共通する用法を持つ副助詞のノミとバカリについて,中古・中世のコーパスを元に探る。上接語・共起語の差や,いかなる活用形に接続するかなどを定量的に分析する。また,時代や位相によってノミとバカリの分布がどのように違ってくるのかを示し,その意味するところを考えた。
「洒落本における格助詞「に」と「へ」について ―洒落本コーパスを資料として―」岡部 嘉幸 (千葉大学)
場所・方向を表す格助詞「に」と「へ」は,相互に置き換えが可能なことが多い。本発表では,日本語歴史コーパスの一環として現在構築中の洒落本コーパスを使用して,近世洒落本に現れる格助詞「に」と「へ」について以下の点を調査し,報告した。
1. 近世洒落本において,「に」と「ヘ」のどちらが使用される傾向があるか。
2. 江戸洒落本と上方洒落本において,「に」と「ヘ」の使用傾向に差はあるか。
3. 「に」と「ヘ」の両者が使用される動詞において,「に」と「へ」とはどのように使い分けられているのか。