「学習者コーパスから見た日本語習得の難易度に基づく語彙・文法シラバスの構築」研究発表会 概要
- プロジェクト名
- 学習者コーパスから見た日本語習得の難易度に基づく語彙・文法シラバスの構築 (略称 : 語彙文法シラバス)
- リーダー名
- 山内 博之 (実践女子大学 教授)
- 開催期日
- 平成26年6月28日 (土) 13:00~19:00
- 開催場所
- 国立国語研究所 2階 多目的室 (東京都立川市緑町10-2)
発表概要
「日本語母語話者の主観判定による初級文法項目の必要度 ―教師経験の有無による相違―」渡部 倫子 (広島大学 准教授)
本研究では,日本語母語話者の主観判定 (直観) によって,初級教科書から抽出した文法項目の必要度を明らかにすることを目的とし,主観判定に影響を与える要因のうち,教師経験の有無に焦点を当て,初級文法項目の必要度と生産性の関係について検討した。
「語彙密度から見た語彙シラバス構築に向けて」佐野 大樹 (NICTユニバーサルコミュニケーション研究所 研究員)
選択体系機能言語理論 (システミック理論) では,テクストの書き言葉らしさ・話し言葉らしさを示す指標のひとつとしてLexical Density (語彙密度) という概念を用いる。語彙密度は,テクスト中の内容語 (lexical item) の数を節 (clause) の数で除算した値で,一つの節にどの程度の情報が詰め込まれているか (information packing) その程度をあらわすものである。一般的に,語彙密度が高いものほど書き言葉らしく (情報の詰め込みが多く) ,低いものほど話し言葉らしい (文法的には複雑な) テクストとなる傾向がある。本発表では,まず『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)中のテクストの語彙密度を求め,次に,ある語彙が使用されるテクストの語彙密度の平均値と分散を計測することで,そこから語彙のどのような特徴が見出せるかを紹介した。
「既存教科書から見た語彙シラバス」田中 祐輔 (東洋大学 専任講師)
本研究では,既存教科書の視座から語彙シラバスの過去と現在を明らかにし,今後の在り方についての議論に必要不可欠なこれまでの歩みに関する基礎的資料を提示することを目的に据え,そのために,戦後日本語教育の準全数調査を用いて,主要初級日本語教科書が,いかなる「語彙」を,どのような形で取り扱ってきたのかについて明らかにした。
「話題別語彙シラバス作成のための基礎研究 ―「話題」の定義について―」橋本 直幸 (福岡女子大学 専任講師)
『実践日本語教育スタンダード』 (山内 (編) 2014) では,言語活動と言語素材を結びつけるために,100種類の話題を設定し,コーパスから抽出した特徴語を中心とした話題別の語彙・構文リストを作成した。本発表では,話題に基づく語彙シラバスの研究をすすめるための軸となる「話題」という概念について,これまでの先行研究で扱われた「話題」の概念や具体例を概観するとともに,客観的な「話題」の定義づけを試みた。