「学習者コーパスから見た日本語習得の難易度に基づく語彙・文法シラバスの構築」研究発表会 概要

プロジェクト名
学習者コーパスから見た日本語習得の難易度に基づく語彙・文法シラバスの構築 (略称 : 語彙文法シラバス)
リーダー名
山内 博之 (実践女子大学 教授)
開催期日
平成26年4月19日 (土) 13:00~18:00
開催場所
国立国語研究所 2階 多目的室 (東京都立川市緑町10-2)

発表者氏名・発表テーマ

「類義表現から見た文法シラバス」建石 始 (神戸女学院大学 准教授)

本発表ではまず,類義表現を扱ったテキスト,参考書,文法解説書をもとに,初級文型に関する類義表現の一覧を示した。次に,コーパスなどを使って,それらの類義表現の違いや特徴を見つけ出し,どのような場面・状況で,どの表現を使えばよいのかを分析した。以上の作業を通して,類義表現から見た初級の文法シラバスを提案した。

「効率的な語彙学習順序とは? ―コーパスに基づくアプローチ―」松下 達彦 (東京大学 特任准教授)

本研究では「現代日本語書き言葉均衡コーパス」 2009年モニター版 (書籍等,約3300万語) に基づいて学術共通語彙,限定学術領域語彙,文芸語彙の3種類の領域特徴語を抽出した。これらの語群の学習によって期待される学習効率を検証するため,「テキストカバー効率Text Covering Efficiency」 (TCE=ある語群中の1単語を学習した場合に,単位テキスト長あたりに期待されるテキストカバー率) という指標を提案した。目標テキスト領域におけるTCEの数値は,その領域においてどのような語群が最も効率的にテキストをカバーするかを示し,その数値の高い順に語彙学習順序を決めれば最も効率的にテキストカバー率を上げられる。この指標により,テキストジャンルによって効率的な語彙学習順序がどう異なるかを明らかにした。

「学習者の言語活動に基づいたコーパスの構築
―『日本語教育のためのタスク別書き言葉コーパス』の紹介」
橋本 直幸 (福岡女子大学 専任講師)

大学生の日常における「書く」という言語活動に注目し,日本人大学生 (30名) と留学生 (韓国語母語話者30名,中国語母語話者30名) による書き言葉の資料,計1080編を集めた『日本語教育のためのタスク別書き言葉コーパス』 (略称:「YNU書き言葉コーパス」) を紹介した。このコーパスは,従来のいわゆる「作文」の集積ではなく,各被験者にタイプの異なる12の書き言葉タスクを課し,客観的な評価基準に基づき各タスクの達成の可否を判定した評価付きのデータである。さらに,12のタスクの達成度により,学習者を上位群・中位群・下位群の3グループに分けている点も大きな特徴である。