「日本語疑問文の通時的・対照言語学的研究」研究発表会概要

プロジェクト名: 日本語疑問文の通時的・対照言語学的研究
リーダー名: 金水敏 (国立国語研究所時空間変異研究系客員教授)
開催期日: 平成26年3月20日 (木) 10:00～17:00
開催場所: 国立国語研究所 3階セミナー室

発表概要

10:00-11:00「コリマ・ユカギール語における疑問文：疑問語疑問文を中心に」長崎郁

コリマ・ユカギール語 (北東シベリア) における疑問語疑問文は， (A) 主節， (B) 直接疑問文， (C) 間接疑問文， (D) 指示詞との相関用法のような用法をもつ。本発表では，これらの用法を概観しながら，肯否疑問文との違い，節を名詞化できるか否か， (B) (C) (D) をとる主節述語の意味的特徴といった点について検討した。

11:10-12:10「中国語の付加疑問文について」井上優

中国語の付加疑問文は，形式的には平叙文に情報の真偽を問う疑問表現 (「是吗？ (そうか) 」「是不是？ (そうか／そうでないか) 」など) を付加するが，意味的には「～よね？」「～でしょう？」に近い確認表現となる。このことは次のように説明ができる：通常の疑問文は，話し手の側で情報の妥当性がわからないとして聞き手に情報提供を求める文である。付加疑問文は，話し手が真であると考えている情報を提示して，聞き手の側で情報を確認するよう依頼あるいは指示する文である。

12:10-13:30休憩

13:30-14:30 「疑問から例示形式へ」岩田美穂

日本語史において，疑問の助詞は直接疑問以外にもさまざまな用法を発達させている。その一つに例示用法がある。本発表では，ヤラとトカを取り上げ，疑問から例示用法が発達する過程について述べた。

14:40-15:40 「疑問詞とカとモ」外池滋生

「か」と「も」は (1) いわゆる疑問詞 (未定詞) と現れて，存在数量詞 (誰か) ，全称数量子 (誰も) として機能する場合， (2) 選言記号 (AかBか) と連言記号 (AもBも) として機能する場合，そして (3) 疑問詞を含む節の節末に現れて疑問 (何処へいきますか，京都へいきますか) ，譲歩 (何処へ行っても，京都へ行っても) を表す場合， (4) 比較節に現れる場合 (思ったよりか/も面白い) がある。 (1) (2) については数量詞の機能から導かれることを， (3) (4) については加えて疑問/譲歩の素性が関与するWH移動であることを提案した。

15:40-16:00休憩

16:00-17:00「鹿児島方言の疑問文タイプとイントネーション」窪園晴夫

鹿児島方言の4つのタイプの疑問文 (Wh疑問文，Yes/No疑問文，間接疑問文，レトリック疑問文) が示す音声パターンを音声学，音韻論の両面から分析し，それらの異同を考察した。とりわけ，フォーカスの位置によって生じるプロソディー構造の変化および標準語イントネーションとの異同を報告した。