「コミュニケーションのための言語と教育の研究」研究発表会 概要
- プロジェクト名
- コミュニケーションのための言語と教育の研究 (略称 : コミュニケーション)
- リーダー名
- 野田 尚史 (国立国語研究所 日本語教育研究・情報センター 教授)
- 開催期日
- 平成26年2月15日 (土) 13:30~17:00
- 開催場所
- しいのき迎賓館 セミナールームA (石川県金沢市広坂2丁目1番1号)
発表概要
日本語学習者の読解困難点・読解技術の調査方法野田 尚史 (国立国語研究所)
日本語学習者が日本語を読むときにどのように意味を取り違えるのか,また,どのような読解技術を使っているのかということは,まだほとんど解明されていない。この発表では,後に続く3つの発表の導入として,日本語学習者に日本語を読みながら意味を理解する過程を母語で話してもらう調査の方法について説明した。あわせて,そのような調査から日本語学習者の読解過程についてどのようなことがわかり,それが日本語教育にどのように役立つかについて概観した。
初級日本語学習者の読解困難点・読解技術桑原 陽子 (福井大学)
中国語を母語とする初級学習者に,「旅行先で泊まるホテルを選ぶ」という状況を設定し,実際に日本語のホテル検索サイトを使ってホテルを選んでもらった。その結果,ホテル特有のカタカナ表現の理解が難しいこと (例 : ツイン),漢字を重視してカナで書かれた活用語尾などを見落としがちであること (例 : 「たばこ臭くなく」について,「臭」だけから「たばこ臭い」と誤読する) などが確認された。本発表では,それらの読解困難点に加えて,調査に参加した学習者が自分の読みをどう評価したかもあわせて報告した。
中級日本語学習者の読解困難点・読解技術吉本 由美 (広島国際学院大学)
経済学を学ぶ中国語を母語とする中級学習者に,「通商白書」の読みたい部分を選んで読んでもらった。その結果,「高止まり」を「とても高い」と理解する,「~別に見ると」を「別の~から見ると」と理解するなど,漢字の意味だけを拾って推測する読み誤りが観察された。そのほか,習得過程にある学習者ならではの文の構造に関する読み誤り,助詞や助詞相当詞に関する読み誤りなどが見られた。本発表ではこれらの読解困難点に加えて,グラフをどのように参照しているかもあわせて報告した。
上級日本語学習者の読解困難点・読解技術花田 敦子 (久留米大学)
韓国語と中国語を母語とする大学院生および学部4年生の上級学習者 (N1合格) に,研究上必要な論文 (経営学,応用化学,文学など) を読んでもらった。その結果,他の論文の引用で「~と結んでいる」を「~とつながる」の意味だと理解し,引用部分を筆者の研究結果だと理解する,背景知識からの思い込みで情報を一部見落とし,小説の場面を読み誤るなど,様々な要素が困難点となっている状況が見られた。本発表ではこれらの困難点と併せ,辞書の使用の有無など読みのプロセスについても報告した。