「多角的アプローチによる現代日本語の動態の解明」研究発表会 概要

プロジェクト名
多角的アプローチによる現代日本語の動態の解明 (略称 : 現代日本語の動態)
リーダー名
相澤 正夫 (国立国語研究所 時空間変異研究系 教授)
開催期日
平成26年1月25日 (土) 14:00~16:30
開催場所
国立国語研究所 2階 多目的室

発表概要

「埋もれた声」から日本語の変遷を構築する朝日 祥之 (国立国語研究所 准教授)

本発表では,1950年代以降に歴史家により海外の日系社会の1世を対象に行われたオーラルヒストリー調査の録音資料を再活用しながら,現地の日本語の変遷を考察する研究の可能性を論じた。最初に「埋もれた声」の定義付けを行い,その資料の保管状況,その資料の再利用をするために必要な手順について説明した。その後,言語研究としてこの資料を活用する意義を述べ,これまで発表者が収集してきた音声資料,映像資料を紹介した。そこでは,アメリカ西海岸,ハワイの日系社会と沖縄系社会の1世,2世による日本語音声を再生し,そこに見られる特徴についての見解を述べた。それを踏まえ,この資料を共同利用のための資源として活用するために必要な手順と作業過程を提示し,今後の予定を説明した。質疑応答では,「埋もれている」音声資料の発掘作業の方法や,言語分析を行うために有効な音声資料の範囲の規定の仕方などについても質問がなされ,意見交換を行った。

NHKアナウンサーのアクセントの現在 ―現行のアクセント辞典との「ずれ」を中心に―塩田 雄大 (NHK放送文化研究所 専任研究員)

『NHK日本語発音アクセント辞典』の改訂作業の基礎資料とするために実施した音声聴取調査(3021語,アナウンサー471人回答)の結果をめぐって,前回に引き続き検討した。今回は,アクセント辞典が提示する「規範」と,アナウンサーの回答結果が示す「実態」との間に,どのような「ずれ」があるのかを中心に,全体的な考察をおこなった。具体的には,(1)「実態」としてアナウンサーの支持率が低いのに,「規範」としてアクセント辞典に掲載されているもの,(2)支持率が高いのに,アクセント辞典に掲載されていないもの,(3)支持率が高いのに,アクセント辞典で「第一推奨アクセント」にはなっていないもの,といった区分をしながら,議論を進めた。具体的には,例えば,次のとおりである。丸数字はアクセント核の位置,◎は平板型を表す。

  • 現行のアクセント辞典に載っている「掲載型」は,アナウンサーからの支持率が高く表れることが,アクセント辞典の記述としては理想的である。しかし,実際には支持率が低いものも,非常に多い。
    • 支持率が10%未満である「掲載型」の例:
      アーメン◎,あうん①,仰ぎ見る◎,青白い◎,青大将◎,あがき①,悪意②,アジト◎,梓②,梓◎,汗みどろ①,あっぷあっぷ①, …
  • 現行のアクセント辞典に載っていない「非掲載型」で支持率が高いものも,決して少なくない。
    • 支持率が100%である「非掲載型」の例:
      いきえ(生き餌)◎,井戸掘り②,いぶかしげ◎,引導◎,落ち武者◎,ギャラ◎,検査役◎,現実味◎,さきもり(防人)◎,新法①, …