「消滅危機方言の調査・保存のための総合的研究」研究発表会 概要

プロジェクト名,リーダー名
消滅危機方言の調査・保存のための総合的研究 (略称 : 危機方言)
木部 暢子 (国立国語研究所 時空間変異研究系 教授)
共催
科研費基盤(A) 「消滅危機言語としての琉球諸語・八丈語の文法記述に関する基礎的研究」
狩俣 繁久 (琉球大学 法文学部 教授)
開催期日
平成25年12月22日 (日) 14:00~18:00
平成25年12月23日 (月) 10:00~13:00
開催場所
ハロー貸会議室品川 2階多目的室 (東京都港区高輪3-25-18 関ビル3F 3A号室)

テーマ「危機方言を記述する ―記述の枠組みとグロス付け―」 発表概要

平成25年12月22日 (日) 14:00~18:00

14:00-15:00「記述文法の可能性と不可能性 ―火山噴火避難の硫黄鳥島の方言から考える」かりまた しげひさ

硫黄鳥島は沖縄県唯一の火山島で,1903年の爆発で住民が集団移住し,その後無人島になった。今や鳥島方言母語話者を探すのは困難である。幸い内間直仁 (1980) ,野原三義 (1980) 等の論考がある。それらを使って文法記述を試み,危機方言継承を可能にする文法記述のためにはどの程度の質と量の資料を残せばよいかを考えた。

15:00-16:00「言語記述における用語とグロスについて,その2:分析とグロス」柴谷 方良

危機言語であろうとなかろうと,言語記述,とくに文法記述における用語の使用やグロス付けには種々の実践的・理論的問題が生じる。文法用語の使用ならびにグロス付けは,記述対象言語にみられる文法単位の識別と,それらと他の言語との類似を表す目的でなされるが,言語間の類似は部分的であるがため,どのような用語・グロスを使用してもある種の誤解は免れない。したがって,どのような用語・グロスを選ぶかは,系統的に関係の深い言語の文法単位との対応が把握しよいもの,かつ他の研究者になじみ深いものであることといった実際的な考慮と,文法単位そのものの理論的分析・解釈によることになる。これらの点について,最近の琉球諸語の英文記述にみられる用語・グロスを参照しながら検討した。

16:10-17:10「宮古語形態論 ―池間方言の動詞形態論を中心に」田窪 行則

琉球宮古語の動詞形態論記述の問題点を池間方言を中心に議論した。宮古語池間方言の動詞形態論は他の琉球諸語に比して比較的単純であるが,いくつか簡単に規則性を取り出せないものが存在する。本発表では不規則な活用をする動詞とされるumuu (思う) などのいくつかの動詞に関して,形態音韻規則の整理をすることでその規則性を探った。

17:10-18:00全体討論

平成25年12月23日 (月) 10:00-13:00

10:00-11:00「沖縄語津堅方言の記述文法-動詞・形容詞を中心に-」又吉 里美

北琉球諸語の中の沖縄語津堅方言の動詞,形容詞を中心に文法記述とグロス付けの方法について報告した。文法記述として,動詞,形容詞ともに,活用のパラダイムの他,文法的機能について概観した。

11:00-12:00「与那国語の動詞形態論を中心とした記述文法」山田 真寛

与那国語の記述文法の作成のために,動詞形態論を中心とした記述文法とグロス付けの方法について報告した。山田 (2013) で報告した動詞活用パラダイムをもとに,現在用いている形態素分析と各形態素のグロスを提示し,意見交換を行った。

12:00-13:00「琉球八重山語白保方言の文法概要」中川 奈津子,タイラー・ラウ,田窪 行則

琉球八重山語白保方言の文法の概要について報告した。音韻論,形態論,統語論に関して,今まで明らかになっていることを広く浅く概観した。また残された様々な問題点についても検討した。